ルイス・ハミルトン(メルセデス)がアイルトン・セナを今も英雄と称えていることは、あまりにも有名だ。事故死から30年目に開催される今年の第21戦サンパウロGPで、セナのチャンピオンマシン『MP4/5B』を運転することに、ハミルトンは興奮を隠しきれなかった。
Q:土曜日の夜には、1990年型マクラーレンを運転する予定ですね。インテルラゴスで彼を偲ぶことは、どれほど特別なことでしょう?
ハミルトン:昔、マクラーレンにいた頃、シルバーストンでMP4/4を運転する機会があったが、本当に素晴らしい経験だった。それが今度は、まさかここで運転できるなんてね。マネージャーから話を聞き、チャンスに飛びついたよ。セナがここで優勝してフラッグを掲げたレースは、今も鮮明に覚えている。今週末、真っ白なスーツで、セナのヘルメットをかぶって運転したら、まるで彼がそこにいるように見えるだろうね。
Q:当然、マニュアルギヤボックスです。ヒール&トゥは、まだ覚えてる?
ハミルトン:いつもヒール&トゥだよ(笑)。いや本当に、そうすべきだと思う。F1にあれがあったらいいのに。2ペダルは面白くないし、H-Box(Hパターンのマニュアルギアシフト)を復活させるべきだ。あれは最高だった。
F1デビュー2戦目で8位入賞、その後も素晴らしい走りを披露しているフランコ・コラピント(ウイリアムズ)については、来季の去就が大きな話題となっている。
Q:ウイリアムズで素晴らしい仕事をしているにもかかわらず、来季は残留できませんね。もし別チームがチャンスをくれたら、ウイリアムズはそんな状況を好むと思いますか?
コラピント:僕に聞くべき質問とは思わないけど、おそらくイエスだと思う。ウイリアムズが僕にレースシートを与えられないのなら、どこか別の場所で最高の機会を見つけてくれるのが普通だと思うから。でも今の僕は、ウイリアムズとベストを尽くすことだけ考えているよ。
その「別のチーム」の筆頭と噂されているのが、レッドブルだ。不振のセルジオ・ペレスに代えて、新人コラピントを抜擢するという観測が出ている。一方で角田裕毅(RB)の今季残り3戦での昇格の可能性も、取り沙汰されている。
Q:クリスチャン・ホーナー代表はメキシコのレース後、(ペレスについて)難しい決断をしなくてはならない時が来ると言っていました。あなた自身は、マックスと同じマシンで走る準備はできていますか?
角田:間違いなくできいます。マックスはいつだって、いつか必ず一緒に走ってみたいドライバーですからね。彼は間違いなく最高のドライバーで、多くのスキルを持っています。彼から多くのことを学びたいと思っています。もちろん、学びの場として終えるだけのつもりもないです。でも今は、自分がやらなければならないことに集中しています。本当にやりたいことを、まだ達成できていないですから。
ハミルトンには、こんな質問も出た。
Q:あなたがF1に参戦した17年間で、 レースは変化したと思いますか? この10年間で、レースはよりアグレッシブになったのでは?
ハミルトン:いや、そうは思わない。たとえば僕のF1最初の年は、フェルナンド(・アロンソ)と激しいバトルをした。彼はとても強く、コース上で打ち負かすのは本当に難しかった。当時と今の唯一の違いは、ランオフエリアの有無だね。あの頃はコース外の多くはグラベルだったから、コースオフしたら戻ってこれなかった。それがマックス(・フェルスタッペン)の時代かその少し前から、大きなランオフエリアができた。若いドライバーたちは、そのエリアを悪用して走るようになった。なので昔ながらの方法が戻ってくると素晴らしいと思う。安全性の問題を見極める必要があるけど、まずは様子を見てみよう。
ハミルトンは具体的な名指しこそしなかったが、「そのエリアを悪用して走る」若いドライバーの筆頭がフェルスタッペンだと言いたかったのは明らかだろう。
そしてここからは、この数戦で論議されているオーバーテイク中の運転の妥当性について質問が集中した。
Q:メキシコでランド・ノリス(マクラーレン)は、フェルスタッペンの運転を危険だと表現しました。ルイス、2021年に彼と何度もバトルしたあなたの意見は? 当時から、危険だと思っていましたか? そして今も変わっていないと思いますか?
ハミルトン:僕にそれを訊くよりは、当時の無線で僕がどう言っていたかを確認してほしいね。今のマックスについては、当事者たちに訊くべきだ。とはいえ2021年から今までに、(フェルスタッペンの運転に)大きな違いはないと思う。ほとんど同じだよ。
ではフェルスタッペン本人は、どう思っているのか。
Q:メキシコ以来、多くのことが語られ、書かれています。今週末、レースのやり方を変えるつもりですか?
フェルスタッペン:以前も同じ質問をされたことを覚えてるよ。F1参戦10年目だし、自分が何をしているかわかっているつもりだ。
Q:FIA はドライバーたちの支援を得て、運転ガイドラインを変更しようとしています。そんな状況に、少し孤独を感じませんか?
フェルスタッペン:まったく孤独なんて感じないね。いい友達や家族がいるので大丈夫だよ。
Q:コース上では?
フェルスタッペン:同じだよ。いい人たちもたくさんいるから。
Q:3度の世界チャンピオンに輝いた義父(注:ネルソン・ピケ)は、あなたに耳を傾けてくれる人ですか?
フェルスタッペン:僕たちはF1についてあまり話さない。彼も話したくないと思うし、僕も話したくない。人生の他のことについて話し合う。お互いにとって、(F1より)ずっと重要なことだからね。
Q:アグレッシブな走りは、タイトルを守るためにやらなければならないことなのでしょうか? そもそもアグレッシブさは、このスポーツの一部なのでしょうか?
フェルスタッペン:結局は勝ったり負けたりがあるだけだ。レースとは、そういうものだ。そして僕は勝つのが好きで、負けるのは好きじゃない。そして常に、結果を最大化しようとしている。でも勝つこともあれば、負けることもある。
Q:デイモン・ヒルは、あなたが公平にレースできるドライバーか疑問を呈していました。他にもあなたのレースの仕方に、かなりの批判があります。不当に狙われていると感じますか?
フェルスタッペン:そういう人たちの言うことには、耳を傾けない。自分のやるべきことをやるだけだ。僕は3度の世界チャンピオンで、何をしているかはわかっているつもりだよ。
他にも類似した多くの質問が投げかけられ、さすがに少しイラついた表情を見せていたフェルスタッペン。それでも我慢強く、最後まで丁寧に対応していた。