1995年から2007年までの12年間、フランス大統領を務めたジャック・シラク。その妻で政治家のベルナデット・シラクを、フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーヴが演じる『ベルナデット 最強のファーストレディ』が11月8日から公開になります。
親日家として有名だったシラク大統領なので、その名前に聞きおぼえのある人は多いでしょう。でも、妻ベルナデットについては、あまり知られていないのが実情かもしれません。
本作はあくまでもコメディとはいえ、画面上の登場人物たちは、実在するだけあって、かなりリアル。「シラク元大統領夫人」というより、「ベルナデット・シラク」というひとりの女性の魅力を紐解いてみましょう。
■ドキュメンタリー的なコメディ
『ベルナデット 最強のファーストレディ』は、ベルナデット・シラクを主人公に、夫のジャックが大統領として在籍した12年を描くコメディ。
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本作で長編デビューを飾ったレア・ドムナック監督は、ドキュメンタリー出身。リアルさとユニークさがほどよい塩梅で混ざり合っているのは、ドムナック監督だからこそなせるわざといえます。結果、本作は2024年のセザール賞、リュミエール賞で新人作品賞にノミネートされました。
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■「夫に従う良き妻」の反撃
(© 2023 Karé Productions – France 3 Cinéma – Marvelous Productions – Umedia)カトリーヌ・ドヌーヴ扮するベルナデット・シラクは、名家ショドロン・ド・クルセル家出身。保守的な考えで育ったベルナデットは、自身も政治家として活動しながら、夫ジャック(ミシェル・ヴュイエルモーズ)を大統領にするため、「夫に従う良き妻」として支えてきました。
夫がようやく大統領となり、大統領府であるエリゼ宮に入ったものの、夫や、夫の広報アシスタントを務める娘からも「時代遅れ」とばかりに、大統領夫人としてメディア出演を控えさせられるなど、除け者扱いに。
夫に反旗を翻すなど、考えたこともなかったベルナデットでしたが、参謀のベルナール・ニケ(ドゥニ・ポダリデス)に「反抗を覚えましょう」と促され、「メディアの最重要人物になる」という「復讐」を果たそうとするのですが…?
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■女性は本来、太陽そのもの
(© 2023 Karé Productions – France 3 Cinéma – Marvelous Productions – Umedia)当時、夫が妻にきつく当たったりしても、妻は黙ってそれに従うのが美徳とされた時代でした。いわゆる「亭主関白」が正当な夫婦の形だったといえるでしょう。
もしこれが現代なら、ジャックの言動は「パワハラ」「セクハラ」になりかねませんが、これらをすべてかわしつつ、静かに反撃するベルナデットの手腕は見事。80歳を超えてなお、かいわいらしさが健在のカトリーヌ・ドヌーヴの魅力も相まって、ベルナデットの武器が、彼女の素顔と、ユーモアなのがなんともにくいところです。
思い出すのは、平塚らいてうの「元始、女性は実に太陽であった」。その言葉通り、女性は本来太陽のように自ら輝いていたもの。ベルナデットの姿は、自分の輝きを取り戻すヒントを教えてくれるでしょう。
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(取材・文/Sirabee 編集部・尾藤 もあ)