日本車のパーツは世界的に人気が高まっているが、アフリカでもやはり需要が拡大しているという。なぜ今、彼の地で日本車のパーツを欲しがる人が増えているのか。アフリカ19カ国に85カ所の現地エージェント(2024年10月30日現在)を持ち、現地での知名度はトヨタ自動車以上(?)だという日本企業のビィ・フォアード(事業内容は中古車輸出など)に現状を聞いた。
アフリカの車両整備はDIYが基本
アフリカで日本車のパーツが人気なのは、そもそも日本車の人気が高いからだ。「よく走る、故障が少ない、燃費が良くて経済的といった要素が世界的に日本車が支持される理由ですが、アフリカでも格別の人気です」とビィ・フォアード担当者は語る。
アフリカではどんな日本車が売れているのか。ビィ・フォアードによると都市部では「ヴィッツ」や「イスト」といった1,300ccクラスの小型車が人気だそうだ。例えばモザンビークでは、1〜2トンのトラックや「ハイエース」といった積載量の高いクルマが求められるなど、地域によって車種の需要はさまざま。ちなみに、軽自動車はパワー不足で敬遠されるという。全体として強いのはトヨタ車だ。
いくら信頼性の高い日本車であっても、広いアフリカ大陸を走りまわっていれば故障してしまうことはある。移動中にクルマが故障した場合は、クルマを現場に放置して近くの街に駆け込むか交換パーツを待つかの二択となる。ビィ・フォアードでは自動車輸出と並行して、故障車レスキューのためのパーツ供給も早くから行っていた。
同社によると、アフリカで日本車パーツの需要が増えだしたのは2017年くらいからだ。なぜアフリカで日本車パーツが人気なのか。ビィ・フォアード担当者の分析は以下の通り。
「日本であればちゃんとした整備工場がありますが、アフリカの場合は『青空整備工場』といいますか、路上でDIYメンテナンスをするのが基本です。やはりクルマは高い買い物なので、日本車に限りませんが、調子が悪くなればパーツを買い、自分で直せる範囲は直しているんです。日本車は他国のクルマに比べて、市場に流通しているパーツの供給量が圧倒的で、需要と供給がしっかりとマッチしていることが日本車パーツの人気が高い理由です」(以下、カッコ内は担当者)
ただ、DIYでの自動車修理は基本的に見よう見まね。そのため、直せなかったクルマが道端にズラリと並んでいるという光景も珍しくないそうだ。クルマ好きからすれば、なんとももったいない話である。
アフリカで人気の日本車パーツは?
では、どんな日本車パーツが人気になっているのか。まずはエンジンだ。
「自動車における基幹部品のエンジンですが、特に外国車のエンジンは現地ではなかなか見つけられません。そのため、弊社では日本から船で現地に送っています。付け加えると、エンジンを制御するECU(エンジンコントロールユニット)も人気のあるパーツです」
次いで人気が高いのがヘッドライト、ドアミラー、ホイールキャップといった外装品だ。
「これらは盗まれやすいパーツですね。我々も、輸出したクルマを港で陸揚げすると、その場で盗まれてしまうことがけっこうあります。それで現地のバザーを覗くと、どう見ても盗まれたのと同じパーツが置いてあったり……。日本でも盗難されたパーツがネットオークションに出品されるケースはありますが、アフリカの場合は日本の比ではないですね」
最後は、サスペンションなどの足回り。
「新品の中国製も売られていますが、やはり耐久性は日本製に分があります。中国製は長持ちしないので、中古であっても日本製のニーズはものすごく高いです」
ビィ・フォアードではアフリカ向け日本車パーツ需要が前年比20%増ほどのペースで伸長しているという。今後も人気は続くとの分析だが、タイヤについては事情が異なるそうだ。
「タイヤはサスペンションと違って、性能にこだわる方がそこまで多くないように感じます。アフリカには中古タイヤの輸入を禁止している国もあるのですが、日本から新品を持っていっても、現地ではコスト面を考えて、中国製や韓国製の安いタイヤを選ぶ方が多いようです」
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)