ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『流行語』について語った。
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★今週のひと言「『新語・流行語大賞』で思ったことと、俺の中の流行語」
今年も「新語・流行語大賞」トップテンと年間大賞が発表された。
このコラム執筆時点ではまだ結果はわからないが、これを書くにあたって今年ノミネートされた30の言葉を見直してみた。俺が実際に口にしたのはドラマ『地面師たち』(Netflix)の中でピエール瀧さんが放った「もうええでしょう」ぐらいだった。
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これは実際かなり使い勝手が良くて、終わりの見えない酒の席や、ノリのしつこい相手に対して角を立たせることなく制するのにとても役立った。
しかし、ほかは目や耳にこそするものの、自分で使うような言葉はなかったが、それでも一応言葉のプロの末席に身を置く者として無視はできないのだ。
今年は一発ギャグとか、いかにもな若者言葉は入ってなくて、ドジャース・大谷翔平さんにまつわる「50−50」やパリ五輪関連の「名言が残せなかった」「ブレイキン」「やばい、かっこよすぎる俺」「初老ジャパン」などポジティブなものもあったが、なんというか、この暗く不安定な世相を反映したしみったれた語群も散見できた。
中でも気になったのは、「ソフト老害」。
ドンピシャ俺のことを指している言葉がノミネートされていて、このコラムを書いている時点ではどうか大賞に選ばれることのないように、そして一刻も早く忘却のかなたへ、と祈るばかりだ。まぁ、どうせ「50−50」だろうけどね。
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個人的にはもともとの性格もあるが、いい年こいて覚えたての言葉を平気な顔して使うことに抵抗があるので、流行語として認識されているうちはなかなか発語すること自体ためらわれる。
何年かたち、ほとぼりも冷め、日常使いできるようになるか、逆に「そんなのあったねなんだっけ」ぐらいまで薄まらないと、その言葉は俺のボキャブラリーには入らない。
それはラップにおいてもそうで、ヒップホップのゲームとしての側面、そのときはやってる語句をいち早く取り入れ、最新とされる音で競うように同じ感じのラップをする流れにも俺は乗れない。
なんか最近みんなこの知らない単語を使ってんな?と横目で見ている。意味をわざわざ調べないとわからないうちは調べない。
ここ数年だと「VVS」。どうやらダイヤモンドの透明度を表しているらしいが、みんなこぞって歌詞の中で使い始めた。
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俺はまだ使えない。恥ずかしくって。
そういった意味でも流行語とは無縁というか、相性の悪い俺だけど、俺個人としての流行語はある。
それは「なんだこの駅気持ちわりぃ」だろう。
この連載でも取り上げたがLIVEで訪れた鳥取県の真っピンクの無人駅、恋山形駅を見た俺の感想をXでつぶやいたものだが、まぁ一部のキモータやポリコレさんたちを巻き込みよく燃え、大きく取り上げられた。
気持ち悪いとはいったい何事か!と。
しかしその後、この「なんだこの◯◯気持ちわりぃ」は一部で構文化し、いまだにさまざまな対象に向けてX内で使用されている。
俺は気持ち悪いものを素直に気持ち悪いと言って怒られたのだが、みんなにもおのおの気持ち悪いものがあるだろう。
そんなときは、この構文を使用して、呂布カルマのせいにしてしまえばいい。
しかし、それも来年には忘れられる。
まさに流行語らしい使われ方ではないか。
撮影/田中智久