吉高由里子「まひろが『源氏物語』を書き上げたときは、涙が溢れました」最終回直前、長期の撮影を振り返る【「光る君へ」インタビュー】

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2024年12月14日 07:10  エンタメOVO

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(C)NHK

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」は明日12月15日(日)、ついに最終回を迎える。千年にわたって読み継がれてきた大ベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部の生涯を描いた物語は、華やかな平安文化の再現や時の権力者・藤原道長(柄本佑)とのかかわりも含めてドラマチックに展開。今までの大河ドラマとは一味違った新風を吹き込み、多くの視聴者を魅了してきた。最終回の放送を前に、主人公まひろ/紫式部を演じた吉高由里子が、1年半に及ぶ撮影を振り返ってくれた。




−まひろは無事に「源氏物語」を書き上げ、いよいよ最終回を迎えます。1年間の放送では筆で執筆するシーンも多く、ご苦労もあったと思いますが、改めて振り返ってみていかがですか。

 まひろが「源氏物語」を書き上げた場面(第四十五回「はばたき」)を撮影したときは、ようやく“書”が終わったという安堵(あんど)感で、涙が溢れてきました。もしかしたら、クランクアップのとき以上だったかもしれません。書の練習は、とても孤独だったんです。感情のやりとりがあるお芝居ではないので、誰かと話し合えるものではなく、うまくできたときの喜びも、自分にしかわかりませんし…。ただ、書があってこそのまひろ役だと思っていたので、今の自分が持てる力を最大限に発揮しようと、とにかく文字を美しく書くことに集中し、撮影に臨んでいました。その分、自分の上達を実感できた時は、いいお芝居をしたとき以上の喜びがありました。

−「源氏物語」を書き上げたまひろ/紫式部についての印象をお聞かせください。

 まひろにとっては、物語を書いているときだけが、自分と向き合い、自分を大切にできた時間だったのかなと。同時に、参考にするような先達の作品もない時代に、膨大な物語を1人で書き上げたことを考えると、想像力が豊かなだけでなく、人間をよく観察していたんでしょうね。その上、集中力も相当なものだったはずです。ふと思いついたアイデアなどは、すぐに書き留めないと忘れてしまいますが、当時はそれをすべて筆でやっていたわけですから。また、道長の依頼で物語を書き始めたことを考えると、他人のために尽くせる人だったような気がします。

−では、クランクアップのときはどんなお気持ちで?

 クランクアップは道長と2人のシーンで迎えましたが、その直後、大勢の人が集まってくれて、第1回から最終回までをモンタージュした映像が流れました。三郎とまひろの頃から、道長と藤式部の時代まで一気に振り返ってみたら、1年半の撮影があっという間だったな…と。そのときは、寂しさやうれしさ、安堵感はありながらも涙は出なかったんですけど、花束を持ったチーフ演出の中島由貴監督が号泣しているのを見たら、もらい泣きしてしまって。凛としたまま終わりたかったのに、できませんでした(笑)。




−1年半、現場を共にされてきた藤原道長役の柄本佑さんの印象をお聞かせください。

 佑くんが道長で本当によかったです。内に秘めた“三郎”としての弱さと、周囲が恐れる権力者としての強さを装った“道長”を巧みに演じ分け、人間の生々しさを表現するお芝居を1年半も間近で目にすることができたのは、すごくぜいたくな体験でした。佑くんとは、話し合いながらお芝居を作っていきましたが、特に印象に残っているのが、初めて2人が廃邸で密会するシーン(第五回「告白」)です。まひろの母を殺した犯人が、道長の兄・道兼(玉置玲央)だと打ち明けるのですが、長回しの上、細かな感情の揺れ動きもあったので、せりふごとに動きを話し合いながらお芝居を作っていったことをよく覚えています。

−終盤、道長が出家した際、柄本さんが実際に剃髪されたことも大きな話題となりました。そのシーンをご覧になった感想は?

 佑くんが剃髪するシーンの撮影は、自分の撮影が終わった後、セットに残って見届けました。2年間伸ばしてきた髪をそり落とすということで、気持ちも入っていたはずなので、その瞬間を見届けなければと思って。終わった後、佑くんは「言葉にならない感情が込み上げてきた」と言っていましたが、自分も共に戦ってきたような感覚になりました。

−ところで、まひろと道長を語る上で欠かせないのが、道長の嫡妻・倫子(黒木華)の存在です。

 倫子は、まひろにとって初めての女友だちで、身分差を気にせず自分を屋敷に招いてくれた恩人でもあります。倫子がいなければ、まひろは内裏で働くことはできなかったでしょうし。そう考えると、すべては倫子の存在があればこそなんですよね。そういう人と同じ男性を好きになってしまったことに対して、まひろの中には苦しさや後ろめたさもあったと思います。同時に、倫子から嫌われることを恐れてもいたのかなと。




−その倫子から、第四十七回のラストでついに「あなたと殿はいつからなの?」と、道長との関係について尋ねられました。

 まひろも「気付かないわけがない」と思いながらも、打ち明ける機会もないままここまで来てしまった、というところだったのではないでしょうか。とはいえ、直球で質問されたときは、さすがに「ギクッ!え、今ですか!?」と驚いたでしょうね(笑)。その上で、まひろがどう答えたのか…。それはぜひ、最終回を楽しみにしていてください。

−紫式部の生涯については不明な部分が多い中、史実と創作を巧みに織り交ぜ、「源氏物語」完結後のまひろが大宰府を訪れ、「刀伊の入寇」に遭遇し、越前で出会った周明(松下洸平)と再会するなど、最後までドラマチックに展開しました。その点も含め、大石静さんの脚本の印象をお聞かせください。

 まるで、紫式部本人の実体験を書いたのでは…と思うくらいで、「源氏物語」に出てくる場所に自ら旅したという描写が、皆さんの想像を膨らませることにつながるのでは、と思いました。「源氏物語」の最後の「宇治十帖」と呼ばれるパートも、本当に紫式部が書いたのか明らかでない中、この作品ではまひろが書いたことにするあたりにも、大石さんの思い切りのよさを感じて。そういう意味では、大石さんの脚本には毎回圧倒されましたし、物語を旅するように、ワクワクしながら読んでいました。同時に、史実と創作のバランスを取りながら、一つずつ階段を上っていくような大石さんの生みの苦しみも感じ、そのイメージに自分がどれだけ近づけられるのか、毎回、考えながら読んでいました。

−それでは最後に、最終回の放送を控えた今のお気持ちをお聞かせください。

 撮影が終わり、書の練習やセリフを覚えなければいけないという“宿題”から解放され、ほっとした気持ちはありながらも、向き合うものがない寂しさも感じています。翌週の撮影に向けて週末に準備する日々が1年半も続いていましたから。ただ、まだ放送が続いているので気を抜かず、無事に最終回の放送まで走り抜けられることを願っています。

(取材・文/井上健一)




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