三山凌輝&久保史緒里、アーティストであり俳優という共通点 グループに寄せる想いに共鳴

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2025年02月09日 11:10  クランクイン!

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(左から)三山凌輝、久保史緒里  クランクイン! 写真:高野広美
 新堂冬樹の同名小説を映画化した『誰よりもつよく抱きしめて』(2月7日公開)で、ダブル主演を果たした三山凌輝と久保史緒里。想いを寄せ合いながらも“触れることすらできない”という恋人たちのもどかしさや痛みを見事に体現し、深い愛の物語へと観る者を誘う。心の奥底までを表出させることが必要となる作品、役柄だけに、内田英治監督を交えてたくさんのコミュニケーションを重ねながら難役を演じきったという彼ら。アーティストでもあり、俳優でもある2人が、お互いへの共鳴、今感じている俳優業の醍醐味を熱っぽく語り合った。

【写真】三山凌輝&久保史緒里、カッコよくて美しい!インタビュー撮りおろしショット

◆三山凌輝、久保史緒里の言葉に「泣きそう」

 本作は海沿いの街で同棲する、絵本作家の水島良城(三山)と書店員の桐本月菜(久保)を主人公とした珠玉の恋愛物語。良城は強迫性障害による潔癖症で、常にビニール手袋着用で生活し、一緒に暮らす月菜の手すら触れることができない。月菜は彼の病気を理解しつつも、自分の揺れ動く心に思い悩んでいる。相手を愛するがゆえ、2人がそれぞれに苦しみを抱える日々。そんなある日、韓国人の青年イ・ジェホン(ファン・チャンソン)が現れ、月菜にまっすぐな想いを向けていく――。監督を、『ミッドナイトスワン』や『サイレントラブ』などの内田英治が務めた。

――とても辛い状況に置かれる2人を、切実さと共に演じています。オファーを受けて、ぜひやってみたいと思った理由から教えてください。

三山:脚本をいただいて、キラキラとしたラブストーリーとはまた違った、人間の心を描いたヒューマンストーリーだなと感じました。観る人によって見え方も変わってくる作品だなとも思い、観客の方々に委ねられる作品である点にも惹かれました。辛い状況に置かれる役柄ではありますが、キャラクターの痛みや苦しみにきちんと向き合い、寄り添っていくというのは、俳優として大事な仕事。そこに躊躇することなく、チャレンジしていきたいなと思いました。

久保:どこか「言わないことが美徳」という雰囲気もある現代において、これだけ登場人物の全員が、お互いや自分の本質と向き合って、言葉にしていくという作品はなかなかないのではないかと感じました。挑戦的な役柄だとも思いましたが、内田監督のもとで撮影ができるというのは、自分にとってはものすごく大きなことです。私をこの世界に引き入れてくださった方なので、内田監督とまたご一緒できるというだけでも「絶対にやりたい」という気持ちになりました。

――アーティストとして活動されている時のオーラを封印し、生きづらさを抱える良城を演じた三山さん。良城への想いと、悲しみの間でもがく月菜の葛藤を体現された久保さん。劇中では、こうしてお話を伺っているお二人ともまったく違う表情を目にすることができました。お互いからご覧になって、イメージや素顔とのギャップに驚いたことはありますか。

三山:芯の部分では、久保ちゃんと月ちゃん(月菜)には似ている部分があるのではないかと感じています。人間って誰でも繊細なものだと思いますが、月ちゃんの繊細さや選択の仕方、感情の表し方など、月ちゃんを演じるのは、やっぱり久保ちゃんだったんだと思うような瞬間ばかりで。それと同時に、楽屋では明るくフレッシュにお話をしてくれて、「あまり心を開かないタイプだけれど、今回はなぜか開いてしまう」と言ってくれたのがすごくうれしかったです。僕は最初から、壁がまったくないタイプなんですが(笑)、僕が話したことに対して受け入れてくれる心の持ち主である久保ちゃんに感謝しています。

久保:三山さんはアーティストとして活動している時のオーラがものすごいので、表面的な見方としては、よしくん(良城)とはまったく違いますよね。これほど振り幅のある役柄を演じるというのは、とても大変なことだったのではないかと思います。また三山さんは、人に対して壁がない方であるのと同時に、人を傷つけずに生きている方だなと感じています。誰も傷つけず、誰も置いていかないということを意識せずともできる方で、そういったところは月ちゃんがよしくんに惹かれた理由にも重なる部分があるなと。こちらこそ、よしくんは、三山さんだからこそ演じられた役だなと思っています。

三山:泣きそうなんだけど!

久保:嘘だー!(笑)

三山:お互いによしくん、月ちゃんに出会わせてもらって、自分の本質とリンクさせながら昇華することができたと思えるような作品になったのかなと思います。役としてもそうだし、自分自身の心の底に持っているものを理解し合いながら、進めていけた現場でした。

◆アーティストであり俳優…グループに寄せる想いに共鳴


――久保さんは今回、心を開くことができたというお話もありました。

久保:本作は、2人の間に“触れられない”という大きな壁があるというお話です。それでもなぜ2人が一緒にいるのかというと、やっぱり彼らの間に深い信頼や愛情があったからだと思うんです。だからこそ、信頼を持てないまま現場に入るのは怖いなという気持ちもあり、できるだけ三山さんとコミュニケーションを取りたいなと思っていました。私は人見知りで、どの現場でも壁を作ってしまうタイプなんですが、自分が壁を作るから、相手も壁を作ってしまうということには気づいていて…(苦笑)。今回は壁をなくして現場に入ろうと決めていたところ、三山さんがもともと壁なく話してくださる方だったので、とても救われました。

三山:こちらこそ、救われていました。僕自身、いろいろなことを深く考えるような時期にこの作品と出会って。コミュニケーションをたくさん取れる現場で、僕からすると「久保ちゃんが話をたくさん聞いてくれた」という感じです。どんな話もこのやさしいオーラで受け止めてくれるので、僕はビリケンさんに触れているような感じでした(笑)。

――アーティストでもあり、俳優でもあるという共通点を持つお二人。お話をしていても、そういった点で共鳴することはありましたか。

久保:お互いに自分の所属するグループが大好きで、熱を持って活動をしています。グループとして目指す場所がある中で、後輩に対して「こういった自分でいなければ」と考えたり悩むこともありますが、俳優として撮影現場で三山さんとお会いすると、お互いにグループを客観視しながら、どこか肩の荷が下りた状態でグループ活動のお話ができたように思います。すごく新鮮でしたし、とてもありがたかったです。

三山:本当にその通りで、客観視してみるとたくさんのことが見えてくるものだなと思っています。僕たちって、いくつもの職業を受け持っているという感覚で捉えることもできますよね。人間はいろいろな環境や状況を経験すればするほど、視点や感性が広がっていき、あらゆる物事に気づくことができるようになるもの。そういった経験、視点、感性をどうやってグループに投影していくのかと、考えたりもします。

◆俳優業に挑む原動力は「好きという気持ち」


――お二人とも話題作への出演を重ねています。俳優業の醍醐味について、どのように感じていますか。

久保:何回、なぜ私は俳優業をやっているのかなと考えてみても、やっぱり「好きだから」というところにいつも戻ってきます。すごく難しくて、いつも悩むし、毎回落ち込みますが、やっぱり好きなんですね。内田監督とご一緒させていただくのは今回で3度目となりますが、そういったご縁の糸がつながっていくこともうれしいです。それは自分が続けてきたからこそ、叶えられたこと。向いているかはわからないけれど、続けることに意味があると信じてこれからも頑張っていきたいです。また今回、とてもうれしかったことがあって。初めて本読みをした日、自分が持っていったものと内田監督が思っていたものが違ったようで、結構打ちのめされてしまったんです(苦笑)。「現場に入るのが怖い」という気持ちでいたんですが、現場では内田監督とたくさんお話をすることができて、いろいろな言葉をいただきながら「この仕事を続けていきたい」と強く思うことができました。

三山:僕もまず「好きだ」という気持ちや好奇心がないと続けていけないなと思っています。今はいろいろな活動をさせていただいていますが、撮影現場に身を置いていて「ステキだな」「面白いな」と感じるのは、その一瞬にしかない温度感や空気感がカメラに収められることです。そこには俳優同士の探り合いやお芝居の交換があって、みんなが自分と勝負をしている瞬間でもあり、それがぶつかり合っている場所だとも言えます。誰もが「緊張しています」「頑張っています」など言葉にすることはありませんが、そういった想いすべてを芝居に変えていこうとしています。人と人がなにかを紡いでいこうとする時間がとても好きですし、また作品や役柄について考える時間も好き。シンプルに僕は、“考える”という行為自体が好きなのかもしれません。

――自分の正直な気持ちをなかなか表現することができない良城と月菜。出口が見つからずもがいている状態にある二人ですが、三山さんと久保さんにとって一歩踏み出せずにもがいた経験や、その時に突破口となったものがあれば教えてください。

三山:僕は人生において、常にもがいています(苦笑)。物事を変えていこうと思うと、必ずそこには大きなチャレンジがあります。表現者として自分を曝け出していくのは危険さも伴うことだとも感じますが、そういった苦しみ、もがきを突破したとしたら必ず新しいフェーズに行けるはず。そして突破していくためには、やっぱり思考を深めていくしかないのかなと。自身の経験や思考、感性を融合させた時に起きる化学反応がパフォーマンスとして表出されていくと思うので、グループ活動であれ、個人としての活動であれ、どこまで考えて、何を大事にして生きていくのかということがアーティシズムにつながっていくことになる。年齢を重ねるごとに、人間力を磨いていくことが何よりも大切なんだと実感しています。

久保:私は言葉にすることがとても苦手で、「どう思う?」と聞かれると、それをうまく言葉にできず、自分が何を思っているのかさえわからなくなってしまうことがあって。もっと俳優としても成長しなければと思いつつ、それが自分自身の課題のひとつだと感じています。そんな中、本作のラストシーンの撮影でとても印象深い出来事がありました。実はラストシーンは、台本とは全然違うものになったんです。内田監督が、私と三山さんに「どう思う?」と聞いてくださって、お互いに意見を出し合いながらそのシーンに挑むことができました。監督が大事なシーンを私たちに委ねてくださったこともうれしかったですし、言葉にして、話し合いながら作品をつくっていけた感覚があり、とても成長させてもらった瞬間でもありました。

(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 映画『誰よりもつよく抱きしめて』は公開中。
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