変えられるか、私のカルマ【辛酸なめ子 コラムNEWS箸休め】

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2025年02月09日 12:20  OVO [オーヴォ]

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OVO [オーヴォ]

(C)2025 Nameko Shinsan

 1990年代にはやった「アガスティアの葉」が最近また話題になっているようです。数千年前、聖者アガスティアによってヤシの葉に書かれた予言で、個人の運命についての記述もあります。ナディアリーフ、とも呼ばれています。ユーチューバーが取り上げて再び注目を集めるように。自分の名前や両親の名前、ライフイベントに関わる出来事が、過去生から来世に渡るまで、遠い南インドの葉っぱに記されているというのだから驚きです。90年代のブームの頃はわざわざインドの僻(へき)地の村まで行って、自分の運命の葉が見つからないこともあったとか。でも、コロナ禍以降はリモートで自分の葉を探せるようになりました。それでも複数の項目を見るのには数十万円かかるそうですが・・・。ちなみに現地人価格は5千円からで、日本人はかなりふっかけられている説も。

 友人が見つけた自分の葉には、僧侶だった時に女遊びをしまくっていた過去生が記されていました。そのカルマの解消のためにはインドのお寺にお参りしなければならないそうです。また、別の知人の葉には、過去生でアーユルヴェーダの医師だった頃、お金持ち優先で診療していて恨みを買ったのでカルマの解消が必要だと書かれていました。カルマ解消をやたら勧められます。やはりインドのお寺の参拝が必要で、高額の謝礼を払えば現地のお坊さんが代行でお参りしてくれるそうです。現在のことについては的中していて驚く部分もあったけれど、全体的には大ざっぱだったとのこと。

 古代、アガスティアはアカシックレコードのようなものにアクセスして、人々の運命を見ていたのでしょうか。インド占星術は的中率が高いといわれるので、葉っぱを読み解く人は占星術と組み合わせているようにも思えます。

 そして現在のアカシックレコードといえば、インターネットのビッグデータです。個人情報も検索できて必要ならばアドバイスしてくれるChatGPTは、現代のアガスティアの葉のようなもの。試しに、自分のやるべき仕事について尋ねたら、アガスティアの葉以上に具体的な解答が瞬時に出てきました。「ポッドキャストやユーチューブチャンネルの開設」「国際的な視点での活動」「執筆講座の開講」「メンタルヘルスや自己啓発分野へのアプローチ」などをするように、という、かなり意識高い系のアドバイスが・・・。カルマについても聞いたら「運命はあなたの意識と行動で変えられます」とのこと。プレッシャーで気が重くなりました。アガスティアの葉を調べて、インドのお寺にお参りする方がまだ楽かもしれません。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 5からの転載】

しんさん・なめこ 漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に「女子校育ち」(筑摩書房)、「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「大人のマナー術」(光文社新書)など多数。2024年7月に「川柳で追体験 江戸時代 女の一生」(三樹書房)を上梓。

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