【週末映画コラム】ラブコメ風タイムトラベル映画『ファーストキス 1ST KISS』/ワンシチュエーションの会話劇『ドライブ・イン・マンハッタン』

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2025年02月14日 08:10  エンタメOVO

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【週末映画コラム】ラブコメ風タイムトラベル映画『ファーストキス 1ST KISS』/ワンシチュエーションの会話劇『ドライブ・イン・マンハッタン』

『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開)




 硯カンナ(松たか子)は、結婚して15年になる夫の駈(松村北斗)を事故で亡くした。2人の結婚生活は倦怠(けんたい)期が続いており、事故当日は離婚届を出す日でもあった。

 その後、ある出来事から15年前に戻ったカンナは、自分と出会う直前の駈と再会する。そして何度もタイムトラベルを繰り返すうちに、やはり駈のことが好きだったと気付き、15年後に起こる事故から彼を救うことを決意するが…。

 映画『花束みたいな恋をした』(21)や『怪物』(23)の脚本家・坂元裕二と『ラストマイル』(24)『映画 グランメゾン・パリ』(24)の監督・塚原あゆ子が初タッグを組み、オリジナルストーリーで描いた恋愛映画。

 研究員時代の駈を気にかける大学教授役でリリー・フランキー、駈に恋心を抱く教授の娘役で吉岡里帆、カンナと共に働く美術スタッフ役で森七菜が共演。

 タイムトラベルものには目がないのだが、その点に関してはこの映画は緩々で、見ながら「えっ?」となるところも多く、突っ込みどころが満載。もっともタイムトラベルものに難癖をつけ始めたらきりがないし、心底楽しめなくなる。もともとあり得ない話なのだから、細かいことは気にしないようにして見た。

 全体の乗りとしてはラブコメで、「トンネルを抜けるとそこは雪国であった」ならぬ「トンネルを抜けるとそこは15年前であった」。

 ただし、夫婦や結婚についてのあるあるとして見ると身につまされることが多くて困ったし、松と松村がメークの助けも借りながら若年と中年を演じ分けていたのも面白かった。

 ちなみに、特殊能力を使っての時間旅行は「タイムリープ」と呼ばれる。それを扱った映画は、『時をかける少女』(83)『未来の想い出』(92)『バタフライ・エフェクト』(04)『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(13)などがある。

 そして、同じ時間を何度も繰り返す=時間の反復は「タイムループ」と呼ばれる。これは描き方によってはまさに“ネバーエンディング・ストーリー”にもなるわけだが、『恋はデジャ・ブ』(93)『タイムアクセル12:01』(93)『ターン』(01)『ミッション:8ミニッツ』(11)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)『コンティニュー』(20)『パーム・スプリングス』(20)『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(22)『リバー、流れないでよ』(23)『ペナルティループ』(24)など、どちらかといえば、ここに佳作が集中している気がする。

 また、結婚をめぐるパラレルワールドものとしては『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(19)と近々公開のリメーク版『知らないカノジョ』(25)がある。

 この映画にはそれらの要素が入り組んでいるので参考にしたものも多いと思うが、最も近いのは『アバウト・タイム〜』だろうか。それらと見比べてみるのも一興だ。

『ドライブ・イン・マンハッタン』(2月14日公開)




 深夜、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に降り立った若い女性(ダコタ・ジョンソン)が、マンハッタンの自宅に戻るため、タクシーに乗り込む。中年の運転手(ショーン・ペン)はシニカルなジョークを交えた世間話で女性を和ませ、2人は会話を弾ませる。

 運転手は2度の結婚を経験し、酸いも甘いもかみ分けながら生きてきた。一方、プログラマーとしてキャリアを築いてきた女性は、不倫をしていることを運転手に見抜かれる。

 2度と会うことのない関係だからこそ、2人は赤裸々に本音を語り合う。そして会話はいつしか予想もしなかった方向へと発展し、女性は誰にも打ち明けられなかった秘密を告白し始める。

 真夜中のタクシー内を舞台に2人だけの芝居で見せるワンシチュエーションの会話劇。『ふたりで終わらせる IT ENDS WITH US』(24)のクリスティ・ホールが執筆した脚本を基に、自ら長編映画を初監督。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13)などのフェドン・パパマイケルが撮影を担当した。

 この映画の原題は「Daddio」。そのためか、女性が年上の愛人を「ダディ」と呼ぶようなファザーコンプレックスの持ち主であることが明かされたり、運転手が女性に対して娘のように接する場面があるのも印象に残る。

 また、宣伝文句に「人生観が変わる100分間のドライブ」とあるが、ジョン・F・ケネディ空港からマンハッタンまではタクシーで1時間弱かかるという。この映画では、途中、事故による渋滞に巻き込まれるので、実際とほぼ同時間で進行していることになる。これは劇中の時間と上映時間を同じにしたリアルタイム形式と呼ばれるものだが、回想が一切入らないところにこの映画の会話劇としての真骨頂がある。

 運転手が「女の浮気は愛されたいから。男は新しいおもちゃが欲しいだけ。愛はいらない」と語るなど、秀逸なせりふが多いし、会話の中から徐々に女性の心情が明らかになるミステリー的な要素があるのも面白い。

 舞台劇を思わせるワンシチュエーションものだが、舞台劇との違いは、会話中の2人のカットの切り返し、時折映る夜のニューヨークの風景やそこを走るタクシーの動きなどがある。

(田中雄二)

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