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ドイツのMax Planck Institute for Astrophysicsなどに所属する国際チームが発表した論文「Euclid: A complete Einstein ring in NGC 6505」は、欧州宇宙機関(ESA)のユークリッド宇宙望遠鏡が、地球から最も近い場所でアインシュタインリングを発見し研究報告である。
ユークリッド宇宙望遠鏡とは、ESAが主導する宇宙望遠鏡で、重力レンズ効果と銀河分布の観測から、宇宙の暗黒物質と暗黒エネルギーの性質を解明することを主目的としている。
アインシュタインリングは、重力レンズ効果によって、遠方の銀河や星の光が手前の重い天体によって曲げられ、リング状に観測される現象である。重力レンズとは、光が質量の大きな天体の近くを通過する際に、その天体の重力によって光の進む向きが曲げられる現象。このリングは一般相対性理論で予言された重力レンズ効果の最も美しい証拠の一つとして知られている。
今回研究チームは、地球から約6億光年離れた楕円銀河「NGC 6505」が、その背後にある約45億光年先の銀河からの光を完全なリング状に曲げている現象をユークリッド宇宙望遠鏡の初期観測データから発見した。
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今回発見したアインシュタインリングは、極めて特異な例である。その理由は3つある。まず、レンズとなる銀河が地球に比較的近いこと。次に、背後の銀河が非常に明るく観測されること。3つ目は、リングが完全な形状を保っていることである。このような条件がそろったアインシュタインリングの発見は極めてまれである。
Source and Image Credits: C. M. O’Riordan, L. J. Oldham, A. Nersesian, T. Li, T. E. Collett, D. Sluse, B. Altieri, B. Clement, K. G. C. Vasan, S. Rhoades et al.(188 more)Euclid: A complete Einstein ring in NGC 6505. Published online: 10 February 2025 DOI: 10.1051/0004-6361/202453014
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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