黒沢あすか「50過ぎた女が肉体バーンと披露できないけれど」長塚京三との浴室シーンへの思い

0

2025年02月15日 17:54  日刊スポーツ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊スポーツ

「敵」大ヒット御礼舞台あいさつで笑みを浮かべる黒沢あすか(撮影・村上幸将)

黒沢あすか(53)が15日、東京・テアトル新宿で行われた映画「敵」(吉田大八監督)大ヒット御礼舞台あいさつで、夫を演じた主演の長塚京三(79)と挑んだ浴室のシーンにかけた思いを熱く語った。


吉田大八監督(61)に「50も過ぎた女が、今までのように肉体をバーンと披露することはできない。アンバランスなことを言っているけれども、浴室のシーンはやりたい。どうしたら良いんでしょう?」と直訴したと明かした。


「敵」は作家・筒井康隆氏(90)の小説を映画化し、脚本も手がけた吉田監督がモノクロで描ききった。長塚は劇中で、妻に先立たれた77歳の元大学教授・渡辺儀助を演じた。映画への主演は、13年公開の「ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜」以来12年ぶり。黒沢は、儀助の心中に幻想的に現れ、支配する妻・信子を演じた。


黒沢は、共演した長塚の印象を聞かれ「いかに普段の生活を誠実に生きるかが、長く俳優を続ける上で大事なことじゃないかと気付かせていただいた」と感謝。「せりふを1つ1つかわしていくことで自分が浄化されていく感覚。空気清浄器のようだった。初めての経験。長塚さんに吸われて、雑味がなくなって、混じり気がなくなっていく」と評した。その上で、長塚から学んだことを受けて、今の自分をどう見つめ、俳優を続けていくために必要だと考えていることを、ひたすら語った。


黒沢 (人生を)1周、2周、回って…何周もして今、自分はどう生きるかが全て。顔のしわ…女性は体がたるみ、おなかがポッコリ出てしまうのも、そうかも知れない。53歳…実際に子供を3人も産んで、頑張っているけども、おなかが出て、お尻も出てきているけれど…。俳優として続けていくなら、変に手をかけて何かするより、このままで俳優業を突き進む。では、どこを補強するか? 精神、頭の方に、もっと知識を入れて、自分で自分を育てていけないと、お側にいて教えていただいた。


黒沢は、長塚に感謝した上で、演じた信子役に「採用されるか、分からなかった」と口にした。「儀助との浴室のシーンがある。そこの部分をOKしてもらえるかどうか、ご本人に直接、聞かなければ、黒沢さんにお願いするというふうにはいかないと。お会いする時間を持たせていただいた」と、長塚と対面する機会を得たと続けた。そして「言葉が少ない分、肉体を使った表現を生かすことができ、深い海にたゆたう波のように表現し、一発で感じとっていただけるのは浴室のシーンしかない。やりたいので、採用していただきたいと言って、その場を後にした流れなんです」と自ら、浴室のシーンを演じたいと熱望したと続けた。


長塚からは「若いパワーを感じた。浴室のシーンもしかり、玄関で押しとどめるシーンで、それを感じた。底力のある役者さんだと、タジタジになり、そのまま芝居でもタジタジになりました」とたたえられた。黒沢は「子育てが終わった瞬間で、信子役を託されて方向性が変わってきました。どんなに頑張っても無理だけど、フッと力が抜けた時に切り開かれていく」と信子役を演じられたことに感謝を重ねた。


「敵」は、コンペティション部門に出品された24年11月の東京国際映画祭で、長塚京三の最優秀男優賞、吉田監督の監督賞、東京グランプリ/東京都知事賞と併せて3冠を獲得。邦画の3冠制覇は、2005年(平17)の、根岸吉太郎監督、佐藤浩市主演の「雪に願うこと」以来19年ぶり。邦画の最高賞受賞、日本人俳優の最優秀男優賞受賞も、19年ぶりの快挙。1974年(昭49)のフランス映画「パリの中国人」でデビューして、俳優人生50年を迎えた長塚が、自身初めて国際映画祭で主演男優賞を獲得した。


3月16日に香港で授賞式が行われる、アジア映画業界の振興を目的として07年に創設された、アジア全域版アカデミー賞「アジア・フィルム・アワード(AFA)」でも作品賞に加え、吉田大八監督が監督賞、長塚が主演男優賞、長塚演じる儀助の大学の教え子・鷹司靖子を演じた瀧内公美(35)が助演女優賞、四宮秀俊氏が撮影賞、宮本茉莉氏が衣装賞と日本映画としては最多6部門にノミネートされた。

    ニュース設定