エンジンの動力をタイヤへ クルマの心臓部トランスミッション 故障の症状や修理代は?【整備士が解説】

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2025年02月16日 07:10  まいどなニュース

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トランスミッションが故障したら!(yang yu/stock.adobe.com)

トランスミッションはエンジンの動力をタイヤに伝えるために、必要不可欠なものです。エンジンと並んで精密かつ、万が一のときには高額な修理費用となりがちな部品です。

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本来、滅多に壊れるものではありませんが「もし故障したときにはどんな症状が発生するのか」「修理代はどれくらい掛かるものなのか」「そのまま修理せずに乗り続けても良いのか」そんな疑問に現役の整備士がお答えします。

トランスミッションとは

トランスミッションは、エンジンからの動力を走行状況に応じて適切に減速または増速、前進/後退に切り替える作動をおこなっています。日本語にすると「変速機」です。

トランスミッションにはさまざまな種類があり、国産車において一般的には以下の3つの種類が主流です。

・マニュアルトランスミッション(MT)
・オートマチックトランスミッション(AT)
・コンティニュアスリー バリアブル トランスミッション(CVT)

それぞれ内部の仕組みが異なります。

AT限定免許で運転可能なATとCVTは、まとめてATと一括りにされることも多いです。

トランスミッション故障の症状

トランスミッションが故障すると走行に支障をきたす不具合症状の出ることが多いです。さまざまな症状が考えられ、中には複数の症状を伴うこともあります。具体的なトランスミッションの故障の症状としては以下が挙げられます。

・加速が悪い
・エンジンが空吹かしのような状態になる
・変速ショックが大きい
・異音や振動が大きい
・特定のギヤしか使えない
・シフトが切り替わらない(走行できない)
・オイル漏れ
・異臭がする
・燃費が悪化する

▽加速が悪い

アクセルペダルの踏み込みに対して、いつものように加速をしないことがあります。

エンジン回転がなかなか上がらずに加速しないこともあれば、エンジン回転だけが高くなって加速感が追い付いてこないこともあります。

▽エンジンが空吹かしのような状態になる

Dレンジ、またはギヤが入っているのにも関わらずアクセルを踏んでも進まない、もしくは加速感が鈍いことがあります。

加速が悪い症状と一部、重複するところがあります。いわゆるクラッチが滑っているという状況です。

▽変速ショックが大きい

AT等で変速時にショックが大きくなることがあります。

たとえば、PレンジからDレンジにシフトしたときや、走行中にギヤがシフトアップまたはシフトダウンしたときに症状が発生します。

ドンッ!…と突き上げる、押し出されるような感覚です。

▽異音や振動が大きい

ガラガラ、カラカラ…といったような異音が発生することがあります。
走行/停車中問わず音が出ることもあれば、走行中に速度に応じて音が変化することもあります。

また、それに伴って振動も発生しているケースがあります。目立った異音を伴わない振動が出ることもあります。

▽特定のギヤしか使えない

ATの場合、特定のギヤしか使えないことがあります。

たとえば以下のような症状になります。

・3速固定での走行しかできない
・1速が使えず2速発進になる
・2→4→6速しか使えない

これらは直接的に不具合が原因のこともあれば、不具合によるフェイルセーフでコンピューターがあえてこうした制御をおこなっているパターンもあります。

▽シフトが切り替わらない(走行できない)

シフト操作をしても実際のギヤがPまたはNから、DまたはRに切り替わらずに走行できないことがあります。

▽オイル漏れ

トランスミッションは種類を問わず、内部にはオイルが入っています。

シールの劣化やホースの破れ、そのほかの不具合によりオイル漏れが発生することがあります。

オイル漏れによって異音や振動が出たり、作動に不具合が出ることがあります。

▽異臭がする

漏れたオイルの臭いや、クラッチの焼けた臭いは普段嗅ぎ慣れない臭いで、異臭と感じます。車に詳しくない人でも、その違和感にはすぐ気付くでしょう。

▽燃費が悪化する

トランスミッションに不具合があると、燃費が悪化することがあります。
特にトランスミッションの制御に影響のある不具合の場合には、燃費が悪化します。

トランスミッション故障の原因

トランスミッションの内部は複雑な構造となっているので、考えられる細かい故障原因はさまざまです。AT、CVTの場合はコントロールバルブの不良やフルードの漏れ、MTの場合はクラッチディスクの摩耗などが故障原因として考えられます。

▽ATやCVTの故障原因

トランスミッションのうち、ATとCVTで考えられる主な故障原因は以下です。

・トルクコンバーターの不良
・クラッチ(AT)やベルト(CVT)の滑り
・コントロールバルブの不良
・ATF・CVTF漏れ
・オイルストレーナーの詰まり
・無理なシフト操作に起因する部品の損傷

AT、CVTはフルード(オイル)が、作動において非常に重要な役割を担っています。

コントロールバルブの不良やフルード漏れ、オイルストレーナーの詰まりで適正な油圧が掛からないと、トランスミッションの不具合につながります。
トルクコンバーターは、MTでいうクラッチ機構に似たような役割を担っており、不具合が発生すると変速ショックや振動が大きくなったり、最悪の場合は走行不能に陥ります。

また、当然ながら無理な運転操作によって内部の部品に負荷が掛かってしまいトランスミッションが壊れるリスクがあります。(例:走行中や完全停止前にPレンジに無理矢理シフトする)

▽MTの故障原因

MTの場合の故障原因は以下のようなケースが考えられます。

・クラッチディスクの摩耗
・レリーズベアリングの不良
・パイロットベアリングの不良
・デュアルマスフライホイールの不良
・ギヤやシンクロ等の内部不良

基本的にはAT車のように故障後、いきなり走行不能に陥るようなことは基本的にありません。

部品の交換が必要な状態になるに従って、異音の発生やクラッチミート位置の変化などで、ドライバーが異変に気付くケースが多いためです。

デュアルマスフライホイールはノーマルのフライホイールと比較して、性能面での付加価値がある分、複雑な構造となっています。

しかし、そのことで不具合の原因となるデメリットもあり、クラッチの切れ不良やクラッチ関連部品の損傷による別の不具合の誘発につながるリスクがあります。

また、MT車においては以下の部品は、一般的には消耗品と考えられています。

・クラッチディスク
・クラッチカバー
・レリーズベアリング
・パイロットベアリング(備わっている場合)

▽参考:DCT特有の故障原因

DCTとはデュアルクラッチトランスミッションのことで、マニュアルトランスミッションのクラッチ・シフト操作を自動化することでATと同じように2ペダルで乗ることができるトランスミッションのことです。

欧州車を中心に展開されており、各メーカーごとに名称が異なります。また、同じシステムでシングルクラッチを採用しているものもあります。

このタイプのトランスミッションにおいて、自動化のために取り付けられている部品が故障すると、さまざまなトランスミッションの不具合トラブルが発生します。

【補足】トランスミッションが故障のまま乗り続けても大丈夫?

トランスミッションが故障したまま乗り続けることは非常に危険です。道の真ん中でいきなり走行不能に陥るようなこともあり得るためです。

不具合が発生して一時的に解消したとしても一度発生した不具合ですから、いつ再発するか分かりません。よって、走行することは控えてください。

違和感を感じたり、トランスミッションの不具合を確認できたときには、整備工場に連絡のうえレッカー業者に依頼して車を搬入してもらうようにしましょう。

トランスミッション故障の修理費用の目安

トランスミッションの故障は、高額な修理になりがちです。

トランスミッションの脱着を伴う修理の場合、軽自動車だと10万円以内で収まるケースもありますが、普通車であれば10万円〜、輸入車や高級車の場合には100万円を超える修理費用が必要なケースもあります。

中にはセンサー単品の交換で修理が完了するケースもあるので、その場合は数万円程度〜が修理費用の目安です。

▽トランスミッション内部の不具合は本体アッセンブリー交換が主流

日本車のほとんどを占めるAT・CVT車の場合、分解修理は難しいので本体アッセンブリー交換することがほとんどです。

実際、分解修理を実施したとしても掛かる時間が大幅に増えて工賃が高額となる上に、年数経過・走行距離の多い車であれば、ほかの箇所の今後の不具合発生リスクも高いので、本体アッセンブリーで交換するほうが合理的です。

▽リビルトを利用すれば修理費用を抑えられる

トランスミッション本体やトルクコンバーターは、メーカーの新品部品を使用するよりも、リビルト品を使うことで部品代の費用を抑えることができます。

リビルト品はディーラーでも扱いがあり、リビルト品メーカーによっては保証もついています。

高額になりがちな修理費用を抑えたい場合には、前向きに検討することをおすすめします。

ただし、車種によってはリビルト品を見つけることが困難なケースもあるので注意しましょう。

整備士のまとめ

トランスミッションの故障は、警告灯やワーニングメッセージの表示や、異音や走行異常の発生によってドライバーが即座に気付きやすいです。

そのまま乗り続けることは危険なので、走行を控えるようにしましょう。

修理費用は高額になるケースが多いのでリビルト品を活用したり、整備工場の担当者としっかりと話し合いをして納得したうえで修理することをおすすめします。

また、場合によっては車の乗り換えを検討するのもよいかもしれません。

(まいどなニュース/norico)

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このニュースに関するつぶやき

  • 殆どはリビルト品か中古だねマニュアルなら分解修理はしやすいけどATはオイルが悪くなると冷えてる時ショックあるしたまにライン詰まったりして変速しない事も
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