「台本を読ませていただいたとき、『なかなか難しいけれど、わかるな』という感想を抱きました。この舞台は娘が摂食障害を患ったことで、家族のすれ違いが浮き彫りになるというストーリーですが、“家族のカタチ”、特に母と娘というのはときには残酷でなかなか難しい関係だと思います。順風満帆な関係の母娘は、少なくとも私の周囲にはいないですね。もちろん私と母(※女優の富司純子)もそうでした」
そう語るのは、女優・寺島しのぶ(52)。
’19年に現代に潜む家族問題を扱って、オフ・ブロードウェイの話題をさらった舞台『リンス・リピート―そして、再び繰り返す―』が4月17日(木)から、紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて日本で初上演される。
摂食障害を抱えている娘・レイチェルを吉柳咲良(20)、その母・ジョーンを寺島、父・ピーターを松尾貴史(64)が演じる。今回、本誌は寺島に舞台への意気込みと、自身の家族関係についてインタビューした。
「舞台は私の原点です。観客席からビビッと反応が伝わってきますし、お客様の前で、芝居ができることは本当にありがたいです。
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今回私が演じるジョーンは、非常に真面目な女性で、家族のために一生懸命尽くしているのですが、娘が摂食障害になってしまったことについて、どこまで責任を感じているのか……。彼女はキャリアを重視するタイプのようです。でも私だったら、やっぱり娘が病気になったのであれば、治すことを最優先にしたいと思うでしょうね。
そんな母・ジョーンの愛情を、娘・レイチェルは次第に重く感じるようになるのですが、“母の愛”というのは確かに重いものです。私自身が50代になっても、母の存在を重く感じることがあります。
いまは息子の眞秀(※尾上眞秀・12)が歌舞伎の舞台に立っていますが、歌舞伎界の決まり事は多く、私にはわからないこともありますから、私や眞秀が恥をかかないようにと、いろいろ教えてくれているのだと思います」
眞秀くんが歌舞伎役者として舞台に立つようになってから、寺島は多忙な日々を送っていた。昨年は眞秀くんの稽古や舞台にはすべて付き添いながら、自身もドラマ『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)や舞台『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』などにも出演した。
■ラムゼイハント症候群で“初めての入院”を
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「息子も大切な時期ですし、私の性格もあると思うのですが、体が動く限り頑張ってしまうのです。食事をすればエネルギーになるのはわかっているのにきちんと食べない。睡眠をとれば頭がクリアになるのに、しっかり寝ない。そしていつも心配ばかりしていて……。体にいいことはいっさいしていませんでした。
昨年12月ごろは自分でも『エネルギーが足りていないな、これはマズイな』と感じていました。そして明けて1月になったら、急にものがのみ込めなくなったのです。水どころか唾ものみ込めず……。帯状疱疹のウイルスが耳から体内に入り込んで、喉が炎症をおこしていたのです」
近所のかかりつけ医に診察してもらったところ、すぐに治療設備の整った大病院への入院をすすめられたという。
「ラムゼイハント症候群と言われました。40代後半でも、コロナウイルスに感染して1カ月も体調を崩したことがありましたが、病気で入院したのは初めてのことでした。
1週間ほど、帯状疱疹を治すための抗ウイルス薬を点滴し、喉の殺菌を続けたのです。 眞秀は公演中だったため、感染を避けるためにお見舞いは控えてもらいました。夫(※フランス人のクリエイティブディレクターであるローラン・グナシア氏)が、いろいろお料理を作ってきてくれたのですが、うまく飲み込めない状況でした。
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入院についてはインスタグラムで発表するわけにもいかず、なかなか連絡がとれずに心配をおかけした方もいると思いますので、この場を借りてご報告いたします。
職業病なのか、入院中はひたすら人間観察をしていました。毎日違うお医者さんや看護師さん、清掃のおじさん、皆さんさまざまでした。感謝しています」
ようやく退院できた寺島だったが、3日後に異変が……。
■闘病で見直した“息子との距離感”
「ウイルスがまだ潜伏していたようです。顔面に麻痺の症状が現れ、右耳も聞こえづらくなってしまったのです。
これまでも“50歳を過ぎたら帯状疱疹に気をつけましょう”というスローガンは耳にしていました。でも自分とは無縁のことだと思っていたのです。『女性自身』の読者にも私と同年代の方がいらっしゃると思いますが、ぜひ気をつけていただきたいです。私は薬のおかげで、いまはかなり改善してきたのですが、1月31日の『リンス・リピート』のポスター撮影の際には、かなり緊張しました。これで大丈夫なのかと……。
また今回の件では、家族のありがたさをあらためて感じました。心配性の私に対して、夫も眞秀も楽観的なのです。
顔に麻痺の症状があったとき、眞秀は「あっ、ちょっと(表情が)曲がってきたかな。でもすぐに治るっしょ」と。夫も同じで、「そのうち治るでしょ」と。2人が過度に心配しないことで救われました」
入院は、自分の生き方や息子との距離感を見直す機会にもなったという。
「今年から頑張りすぎをやめて、もっと自分を大事にしようと悔い改めました。免疫力を高めたり、腸活を始めたりしています。
眞秀も今回の入院以降、手伝ってくれるようになり、私を怒らせるようなことが減っています(笑)。彼も12歳、4月からは中学生です。稽古や舞台にも一人で行くとか、役者としての自覚を持ってもらうつもりです。
“育児卒業”とまでは言いませんが、いままでの“口出しする母”から“見守る母”になろうと考えています。彼を信じて挑戦を見守っていきたいです。
病気になったのは大変でしたが、いろいろ気づかされたことも多いです。そういう意味では、神様からの忠告だったのかもしれません」
生き方を見直したという寺島。3月中旬から稽古が始まるという『リンス・リピート』でも、新しい彼女を見せてくれるに違いない。
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