
阪神電気鉄道は3月3日、急行用車両8000系の塗装変更を発表しました。新たな塗装はかつての急行用車両「赤胴車」の塗装(クリームとバーミリオン)です。
近年、大手私鉄では懐かしの塗装に戻す「復刻」がよく見られます。一方、今回の阪神の動きは「復刻」ではなく「変更」です。なぜ、阪神は8000系を赤胴車の塗装に「変更」するのでしょうか。
5年ぶりに復活する赤胴車のデザインとは
8000系は1984年にデビューし、直通特急・特急・急行で活躍しています。山陽電鉄線に乗り入れる一方、阪神なんば線・近鉄奈良線には乗り入れません。現在の塗装はオレンジ色(プレストオレンジ)と白色(シルキーベージュ)です。
デビューから2002年までの塗装は、長年にわたり急行用車両で使われたクリームとバーミリオンの組み合わせでした。2002年以降のリニューアルにより、現行塗装になりました。
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阪神では車両性能の違いから急行用車両と普通用車両に大別され、塗装デザイン、すなわちクリームとバーミリオンの塗装から急行用車両は「赤胴車」、クリームとウルトラ・マリンブルーの塗装から普通用車両は「青胴車」と呼ばれていました。「赤胴車」「青胴車」の名称は阪神が公式に名付けたものではなく、自然発生的に生まれたものです。最初の「赤胴車」は1958年にデビュー。由来は当時の大人気漫画「赤胴鈴之助」だと言われています。
「赤胴車」は昭和から平成にかけて「阪神電車の顔」でした。しかし、2001年にデビューした9300系は「赤胴車」塗装を引き継がず、現行塗装でデビュー。それ以降、急行用車両の新塗装化が進み、2020年6月に最後の「赤胴車」が姿を消しました。
2025年が一区切りのタイミングに
今回の塗装変更で注目すべき点は、8000系の全編成が「赤胴車の塗装になる」点です。計画では第一編成が5月下旬頃に運行を開始する予定。残りの編成も3〜4年かけて順次「赤胴車」塗装になります。
なぜ、8000系全編成が「赤胴車」塗装になるのか、阪神に尋ねました。
担当者によると、そもそも、プレストオレンジとシルキーベージュの現行塗装は21世紀の幕開けと阪神・淡路大震災からの復興を意識した塗装とのこと。
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続けて、21世紀から四半世紀を迎えた2025年は阪神・淡路から30年、阪神の創業120周年の年であり、このあたりで一区切りつける判断に至った、というわけだそうです。そのため、8000系「赤胴車」塗装が現行塗装に戻る予定はありません。
「赤胴車」のエッセンスを継ぐ3000系
「赤胴車」のイメージは今後の新型車両にも引き継がれます。2027年春にデビュー予定の新型急行用車両3000系の塗装は、「赤胴車」のバーミリオンを引き継ぎつつ、「明るい未来をかける車両」にふさわしい塗装「Re Vermilion(リ・バーミリオン)」を採用します。
昭和から平成にかけて見られた8000系「赤胴車」塗装と未来の阪神を担う3000系の競演を一刻も早く見たいものです。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)
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