2025年F1プレシーズンテスト ルイス・ハミルトン(フェラーリ) フェラーリの元F1ドライバーで、スクーデリアで6シーズンを過ごした4度の世界チャンピオンであるセバスチャン・ベッテルは、イタリアのチームでルイス・ハミルトンが直面している大きな変化について率直な見解を示した。
ハミルトンのフェラーリへの移籍は、最近の記憶ではスポーツ界における最大の出来事のひとつだ。7度の世界チャンピオンにとって、シルバーアローから跳ね馬に乗り換えることは単なる状況の変化ではなく、職業的にも文化的にも未知の領域へ飛び込むことだ。
ベッテルはフェラーリとの深いつながりを踏まえ、かつての最大のライバルが経験している“最大の変化”について概説し、新しいチームに適応する難しさや、赤いチームでレースをすることの独特の雰囲気について明らかにした。
■新しいチーム、新しい世界
2015年から2020年までフェラーリからレースに出場し、ドライバーズ選手権で2度2位につけたベッテルは、スクーデリアでの生活の複雑さを直接知っている。彼にとってチームでの在籍期間は個人的な旅であり、当初はフェラーリの最も象徴的なチャンピオンであるミハエル・シューマッハーに対する尊敬の念に突き動かされていた。
ベッテルは、ハミルトンが12年間在籍したメルセデスを離れることは、彼にとって素晴らしい飛躍だと考えている。
「大きなことだよ。誰にとってもチームを変えるのは大きな動きだ。一緒に仕事をする新しい人たちが、おそらく一番大きな違いだ」と、ベッテルは『Nine.com.au』に語った。
ハミルトンにとって、これは不慣れなチームの力学に適応するだけでなく、根本的に異なる運営理念を乗り越えることを意味する。メルセデスの系統立ったイギリス的組織に10年以上身を置いた後に、フェラーリのイタリア風のスタイルへ移行するにあたっては、彼の適応力が試されることになるだろう。
「それは違う文化だ。ほとんどのチームはイギリスで、イタリアのチームが2チームだけなのは明らかだ。おそらくこれが最大の変化だろう」
この文化的な隔たりがハミルトンにとって決定的な障害となる可能性があると、ベッテルは示唆している。ほとんどのF1チームが共通の言語とアプローチとともにイギリスを拠点に活動しているのに対し、フェラーリはレッドブルの姉妹チームであるレーシングブルズと並んで、イタリアの情熱、伝統、そして独特の方法を取り、一線を画している。
イギリス/ドイツのメルセデスの精密さに慣れているドライバーにとって、この変化はまるで別の世界に足を踏み入れたように感じられるかもしれない。
■赤いマシンの魅力
ベッテルは、事業の面だけでなく、モータースポーツ界でほぼ神話的地位を持つチームであるフェラーリに加入することの、感情的な重みについても強調した。
彼とフェラーリのつながりは非常に個人的なもので、シューマッハーが赤いマシンで圧倒的な強さを見せていた、子供時代の思い出によって形作られた。
「僕はマイケルを見て育った。彼は僕のヒーローだったし、ほとんどの間、彼は赤を身にまとっていたので、僕にとっては違った感じがした」
ベッテルにとって、フェラーリのコクピットに乗り込むことは、歴史と畏敬の念に満ちた少年時代の夢の実現だった。一方でハミルトンの動機は異なるかもしれない。ベッテルもそのことを認めている。
「ルイスが同じ夢を持っていたかどうかはわからないが、赤いマシンに乗るチャンスを得た人にとっては特別なことだと思う」
ハミルトンがベッテルと同じくらい熱烈にシューマッハーを崇拝していたかどうかはともかく、このドイツ人ドライバーは、フェラーリの名声は個人的な崇拝を超越するものだと信じている。情熱的なティフォシと、名高い伝説を伴う赤いマシンの魅力は、普遍的なものであり、ハミルトンが直接体験している栄誉かつ挑戦でもある。
[オートスポーツweb 2025年03月13日]