
【写真】辻村深月著『この夏の星を見る』原作書影
長編小説『この夏の星を見る』は、2020年、新型コロナウィルスが蔓延したコロナ禍を背景に、登校や部活動が次々と制限され、更には緊急事態宣言に直面し、大人以上に複雑な思いを抱える中高生たちの青春を描いた作品。未曽有の事態の中、哀しさやもどかしさ、そして優しさや温かさといった人々の思いを描き出し、幅広い世代から支持されている。
北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞、河北新報、山梨日日新聞の各紙に 2021年6月から2022 年11月まで順次掲載され、2023年6月にKADOKAWAから刊行。2025年6月には角川文庫と角川つばさ文庫にてそれぞれ上下巻での文庫化を予定している。
原作者の辻村深月は、2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、 2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞、 2018年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。同作は2022年に劇場アニメとして公開され、興行収入10億円を超えるヒットを記録、第46回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞している。そのほか主な著書に『凍りのくじら』、『ぼくのメジャースプーン』、『ハケンアニメ』、『朝が来る』、『傲慢と善良』など。映画化された作品も多く、日本を代表する作家として数多くの読者を魅了し続けている。
昨夏の映画化発表以降、続報が待ち望まれていた本作。茨城県立砂浦第三高校の天文部に所属する二年生・溪本亜紗(あさ)を演じるのは、桜田ひより。映画やドラマ、CMなど近年の活躍が目覚ましい桜田が、これまで誰も経験したことのないコロナ禍において、不安な気持ちや悩みを抱えながらも懸命に生きる高校生を、多彩な表現力で見事に演じきる。
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脚本は、1996年9月24日生まれの埼玉県出身、法政大学文学部日本文学科を卒業した森野マッシュ。森野は広告代理店勤務を経て、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域を修了。坂元裕二教授の元で脚本を学び、『FIN』にて第47回城戸賞最終選考に選出。2022年に『ケの日のケケケ』が第47回創作テレビドラマ大賞にて大賞を受賞。近年では『沼オトコと沼落ちオンナの midnight call〜寝不足の原因は自分にある。〜』(テレビ東京)、や『君となら恋をしてみても』(MBS)、『VR おじさんの初恋』(NHK総合)の脚本を担当。デリケートな心を真面目に描くだけではなく、物語として昇華させる力量が高く評価されている。
音楽を担当するのは、業界最注目の音楽家・haruka nakamura。nakamuraは、昨年6月に公開したアニメ映画『ルックバック』で音楽と主題歌を担当。同作は動員100万人を突破、興行収入20億円を超える大ヒットとなり、現在では世界配信もされている。そのほか、『ひきこもり先生』(NHK総合)、Huluオリジナル『息をひそめて』、『あの子の子ども』(カンテレ・フジテレビ系)、『アポロの歌』(MBS・TBS系)などドラマ、映画、CMの音楽を多く手掛けている。
主演の桜田は、出演が決まった当時を振り返り「まさか自分が辻村さんの世界観に入れるなんて…という嬉しさが込み上がりました。学生時代のなんでもないことで笑い合えたり、一緒に熱くなれる瞬間を同世代の俳優の方々と大切に演じていこうと思いました」とコメント。そして「山元監督は歳がものすごく離れているわけではなかったので、感性や笑いのポイントなどが近いなと感じられる部分も多く、共感し合いながら撮影を進めることができました。共演者のみなさんも本当に素敵な演技をされる方ばかりだったので、たくさん刺激をいただきました」と充実感をにじませた。
原作者の辻村は「物語の舞台は2020年、コロナ禍の一年目です。天文部を描いたきっかけは、誰にとっても非日常だったあの日々の中で野外の部活動ならばできるのではないかという単純な思いからでした。けれど、宇宙に目を向けたから見えたこと、著者の私が主人公たちを通じて見せてもらった景色がたくさんあります。志を同じくし、彼らに共感してくださったスタッフ・キャストの皆さんが映画の中で広げてくださった世界もまさにそのひとつです」とコメント。
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脚本の森野は「原作小説の中で繊細かつリアルに語られる、マスクをつけた学生たちの心の内を映像的に表現するという挑戦はとても難しいものでした。それでも、コロナ禍であっても自分にできることを見つけて眩しく輝いている登場人物たちへの憧れが原動力となり、初の映画脚本を書き切ることができました。若手である私たちの代表作になるようにと、常に脚本に寄り添い、やわらかく見守ってくださった辻村先生に、心から感謝をお伝えしたいです」と語っている。
映画『この夏の星を見る』は、7月4日より全国公開。
※キャスト&スタッフのコメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■辻村深月(原作)
物語の舞台は2020年、コロナ禍の一年目です。天文部を描いたきっかけは、誰にとっても非日常だったあの日々の中で野外の部活動ならばできるのではないかという単純な思いからでした。けれど、宇宙に目を向けたから見えたこと、著者の私が主人公たちを通じて見せてもらった景色がたくさんあります。志を同じくし、彼らに共感してくださったスタッフ・キャストの皆さんが映画の中で広げてくださった世界もまさにそのひとつです。皆さんにも、彼らが「この夏」に見た星の輝きを一緒に見届けていただけたら、とても光栄に思います。
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原作者の辻村さんの作品は以前から読ませていただいていたので、出演が決まった時に、まさか自分が辻村さんの世界観に入れるなんて…という嬉しさが込み上がりました。学生時代のなんでもないことで笑い合えたり、一緒に熱くなれる瞬間を同世代の俳優の方々と大切に演じていこうと思いました。
撮影は実際に原作に登場する高校を使わせていただいたので、感謝の気持ちでいっぱいです。山元監督は歳がものすごく離れているわけではなかったので、感性や笑いのポイントなどが近いなと感じられる部分も多く、共感し合いながら撮影を進めることができました。共演者のみなさんも本当に素敵な演技をされる方ばかりだったので、たくさん刺激をいただきました。映画がどのような仕上がりになっているか私自身とても楽しみです。
■山元環(監督)
――コロナ禍を演出する上で挑戦したことを教えてください。
表現においても色々な挑戦をしましたが、特に“マスクで表情が隠れてしまう制限を恐れないで描く”ことが挑戦でした。マスクは表情の60%以上を隠し、どうしても人の情報量を減らしてしまいます。マスクを外さないということを徹底した結果、マスクは透明になり、更にマスクを外すことでシーンの鮮度はまた変わります。この映画は、感情がマスクを飛び越えて、普通では味わえない楽しみがある映画に仕上がっています。
――本作が初の劇場長編映画となります。
登場人物の数/コロナ禍/マスク/星/望遠鏡など、脚本段階から制作まで一筋縄ではいかない題材の映画でしたが、とにかく想像して、模索して、原作同様に真っ直ぐ熱く届くように作りました。商業映画初監督ですが、映画の力を信じて作れたことに喜びを感じています。『この夏の星を見る』の映画の温度が、少しでも観た人の心の栄養になれば嬉しいです。
――原作の辻村深月さんとのエピソードをお聞かせください。
この物語は若者に向けられた辻村先生からのエールです。この物語を監督するにあたり、若手である僕の起用を「若い人達にこそ作ってほしい」と言ってくださり、自分を信じて映画を作ろうと思えました。この映画を作った僕自身が、エールをもらい、勇気をもらえたような気がします。
――キャストの印象は?
主演の桜田ひよりさんは、マスクなんて悠々と飛び越え、逆に表情が印象的で際立っていて、声もとても良かった。ひよりさんの声で表現される言葉に体重を感じて、モニター前で嬉しくなったのを覚えています。他にも鮮度のある実力派の若手から個性のある俳優の方々まで、観ていただけたら分かる魅力のあるキャラクター達に仕上がっています。コロナ禍で切望した繋がりのある世界を存分に躍動していただきました。
■森野マッシュ(脚本)
原作小説の中で繊細かつリアルに語られる、マスクをつけた学生たちの心の内を映像的に表現するという挑戦はとても難しいものでした。それでも、コロナ禍であっても自分にできることを見つけて眩しく輝いている登場人物たちへの憧れが原動力となり、初の映画脚本を書き切ることができました。若手である私たちの代表作になるようにと、常に脚本に寄り添い、やわらかく見守ってくださった辻村先生に、心から感謝をお伝えしたいです。楽しんでいただけますように!