サバ缶、カップヌードル、柿の種…実は“日本人らしい”食品もたくさん! 多種多様な「宇宙食」の世界

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2025年03月15日 20:40  All About

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宇宙食と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。フリーズドライ食品やゼリーを思い浮かべる人もいるかもしれません。今回は、宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長で『宇宙ビジネス』の著者中村友弥さんに、宇宙食の最新事情について解説してもらいます。
人間の生活様式は主に衣食住の3つの要素に分けられ、これは地上だろうと宇宙だろうと変わりないでしょう。ただ、体がぷかぷか浮いたり、水が貴重な宇宙では、地上の生活様式とは違った事情がありそうです。

今回は、宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長の中村友弥さんに“宇宙食の最新事情”について解説してもらいます。

※本稿は『宇宙ビジネス』(中村友弥著/クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋・編集したものです。

サバ缶、カップヌードル、柿の種……数多くある日本人らしい宇宙食

宇宙食というとどのようなイメージがありますか? フリーズドライで極限まで乾燥させた宇宙食やゼリーのような流動食をイメージされる方も多いかもしれません。

現在、宇宙食は大きく分けると水やお湯を加えて戻す「加水食品」、そのままでも食べられて温めてもおいしい「温度安定化食品」、そのまま食べる「自然形態食品・半乾燥食品」、味変に欠かせない「調味料」、消費期限前に食べきらないともったいない「生鮮食品」などに分けられます。具体的な宇宙食をいくつかご紹介します。

「宇宙日本食」という、JAXAが定める宇宙日本食認証基準と照らし、基準を満たしているかを判断し、認証するという仕組みがあります。現在、宇宙日本食として認証されたのは、31社・団体、56品目あるようです(2025年3月11日時点)。

これは日本人らしいなと思う宇宙日本食をいくつか紹介すると、うなぎのかば焼き、サバ醤油味付け缶詰、ひじき煮、きんぴらごぼう、赤飯などがあります。おそらく、一つひとつの宇宙食に認証されるまでのドラマがあると思われますが、ここではサバ醤油味付け缶詰についてご紹介します。『さばの缶づめ、宇宙へいく』というタイトルで書籍化され、話題を呼びました。

実は、この宇宙日本食の製造元は、福井県立若狭高等学校。つまり、高校生のプロジェクトが宇宙日本食として認証されています。JAXAのホームページの紹介には「先輩から後輩へ研究を引き継ぎ、12年かけて完成した」とあります。大学生、もしかしたら社会人のプロジェクトでさえ、12年かけてプロジェクトを引き継いでいくのは、並大抵のことではできません。

現在、より多くの方に食べてもらいたいと「若狭宇宙鯖缶」として、量産型の缶詰も購入できるようになっていますので、ぜひ気になる方は食べてみてください。非常においしかったです。

また、ほかにも、日清スペースカップヌードル、亀田の柿の種、スペースからあげクン、ホテイやきとり(たれ味)、キッコーマン宇宙生しょうゆといった馴染みのある日本企業が開発した宇宙食や、十勝川西長いもとろろ、種子島産バナナとインギー地鶏のカレー、名古屋コーチン味噌煮といった地元の名産品が宇宙食として認証されたものなど、多くの宇宙日本食があります。

宇宙食が地上の生活を変える可能性

宇宙食は、現時点で宇宙空間で消費されるだけであれば市場規模は非常に小さいかもしれませんが、2040年には数千億円規模になるまで成長すると予測されています。

ただ、それでもまだまだ小さく感じるかもしれません。そのような懸念を払しょくする考え方として、宇宙食は宇宙用衣服と同様に、地上でのビジネスチャンスがあると考えられます。例えば、保存期間が非常に長いという特徴から防災食としても機能する一面を持ちます。

私は防災食を非常時に備えて買ってはいますが、期限が近づくと「食べなければならない」と焦るくらい、すごくおいしいと思って食べた記憶はありません。ただ、ここに並ぶ宇宙食を見ると、普段馴染みがある食べ物から、地元のおいしそうな郷土料理まで、非常においしそうな物ばかりです。

宇宙食を買っていたら結果的に被災時にもおいしく食べられる非常食として機能したと思える時がくるほど、宇宙食が当たり前になる時代になると良いなと思います。

このような宇宙食と防災食の関わりの考え方を教えてくださったのは、宇宙関連事業の立上げ支援や宇宙を起点とした地域経済活性化プロデュースを行う企業であるSpaceFood Lab.の取締役を務める浅野高光さんです。

また、宇宙食そのものではなく、科学的なアプローチによって、味覚を変えるという技術開発の可能性があります。これは電気刺激によって味覚に変化を加えることで、宇宙食の味が薄く感じてしまうところに塩味や甘味を感じるようにするといった研究です。このアイデアは2024年度の内閣府宇宙ビジネスコンテストの最終審査まで残り、スポンサー賞を2社から受賞しました。

また、このアイデアは地上でも活躍する可能性が非常にあります。というのも、塩分や糖分の過剰摂取は脳梗塞、心筋梗塞、慢性腎臓病に直結し、健康寿命の短縮、QOLの低下、医療費の増大につながります。その点、減塩での食生活が必要な方にとって、食事が楽しくなる非常に重要な技術となるかもしれません。

このように、宇宙における食生活の改善も、地上の生活を変える可能性を秘めています。今後、どのようなアイデアで宇宙食が進化し、そして、それが地上に応用事例として変換されるのか非常に楽しみです。

【この記事の筆者:中村 友弥】
宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長。宇宙ビジネスを分かりやすく伝える記事の企画・編集、100件を超える宇宙関連企業や宇宙ビジネスに関わる個人へのインタビューを実施しながら、衛星データを利用した海釣りやロケ地探しなど、自らも宇宙技術を活用しながらそのノウハウを公開。2019年には宙畑の立ち上げメンバーと株式会社sorano meを共同創業し、宇宙技術の利活用促進に従事。書籍に『宇宙ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)。
(文:中村 友弥)

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