学校の津波対策実施は67% 大川小の教訓、備え進む 教委アンケ

6

2025年03月17日 18:59  毎日新聞

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

毎日新聞

東日本大震災の大津波で多数の児童と教諭が犠牲となった大川小(中央右)。左は裏山。奥に新北上大橋と北上川をのぞむ=宮城県石巻市で2011年4月17日、本社ヘリから小林努撮影

 東日本大震災の津波で児童74人と教職員10人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校を巡り、学校や教育委員会の不備を指摘した判決が確定して5年余り。毎日新聞は津波被害の恐れがある全国の176市町村の教育委員会を対象にアンケートを行った。67%が判決が求める、ハザードマップの検討や危機管理マニュアルの定期点検といった具体的な防災対策を実施していると回答し、備えが進んでいることが分かった。


 大川小は石巻市の津波ハザードマップで浸水想定区域外だったが、遺族が起こした訴訟で、仙台高裁は2018年、校長らがハザードマップを独自に検討すべきだったと指摘。校長らが適切な避難場所などを危機管理マニュアルに定める義務を怠り、市教委もマニュアルの不備を是正しなかったとして、市教委や学校の組織的過失を認定した。判決は19年10月に確定。文部科学省は同年12月、判決に沿って学校防災を見直すよう都道府県教委に通知した。


 毎日新聞は24年12月〜25年3月、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域の14都県139市町村と、東日本大震災で津波被害を受けた岩手、宮城、福島3県の37市町村の計176教委を対象にアンケートを実施。161教委が応じ、回答率は91%だった。


 校長らが独自の視点でハザードマップの信頼性や避難場所の妥当性を検討しているかを尋ねたところ、78%(125教委)が校長らによる検討を「確認している」と回答。教委が各校のマニュアルを定期的に点検し、不備の是正を指示しているかとの質問にも、78%(125教委)が「点検・指示している」とした。両方とも実施していたのは67%(108教委)だった。


 どちらの問いにも実施していると答えた神奈川県横須賀市は「判決確定後、改めて本市の防災の状況を確認し、マニュアルの内容の充実と職員への周知を促してきた」とした。30年前に阪神大震災を経験した兵庫県南あわじ市は「教委を含む自治体と学校が連携し、防災対策を推進することが喫緊の課題。シミュレーションを基にした訓練や話し合いが各校で積極的に実施されている」と答えた。


 一方、どちらも実施していなかったのは6%(9教委)。東海地方の自治体は「大災害を体験していない中で、教員の危機意識の維持が難しい」と回答した。


 毎日新聞は18年にも今回と同じ176教委を対象に同様のアンケートを行った。高裁判決が求めるような踏み込んだ対策を「検討する」「実施済み」と答えたのは約4割だった。【百武信幸、木原真希】



このニュースに関するつぶやき

  • 311の震災の前は起こるかも判らない災害に金をかけるのは無駄みたいな意見も多かったからな。時間が経つと危機感も薄れてしまうかもしれない。今のうちに対策はしておいたほうがいい。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(5件)

ニュース設定