井手上漠、性差を乗り越え突き進んだ美容道「“希少な美”を持つ存在になれば見方が変わると信じていた」

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2025年03月19日 11:30  ORICON NEWS

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初の美容本を手にインタビューに応じる井手上漠。撮影/草刈雅之 (C)oricon ME inc. 
 性差を越えた“美”を武器にモデルやタレントとして活躍、人気を集めている井手上漠が、今年2月、初の美容本を出版した。「性別のない“井手上漠”」として小学生の頃から培ってきた美容への「情熱」と「知識」と「知恵」と「知見」を詰め込んだという本著を通して伝えたい思いとは。そして、22歳の今、自身が考える「美の基準」、目指す「美」について聞いた。

【画像】「美少年も美少女もいけちゃうなんて…」井手上漠が公開したメンズメイク

■「奇妙」と言われ続けたからこそ追い求めた「希少な美」を持つ存在

 2018年、高校1年生のときに『第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』に出場し、DDセルフプロデュース賞を受賞したことをきっかけに、“可愛すぎるジュノンボーイ”として注目を集めた井手上漠。

 自身と周囲の違いに気が付いたのは小学5年生の頃。奇異な目や心ない言葉に傷つき、葛藤を抱えながらも、「誰かが認める普通になるより、自分の好きな美しいものになろう」と奮起し、10代前半からスキンケアにメイクアップ、ボディメイクと美容の道を探究した。

 デビュー後、仕事が多忙を極めても美への探求心は変わらなかった。モデル・タレントとして活躍する傍ら、全日制の美容専門学校に通い続け、2023年にハリウッド国際メイクアップアーティスト検定1級を取得した。この資格は、2級を取ればプロのメイクアップアーティストになれる基準で、1級はパリコレでもメイクができるレベルという。

 美容道に文字通り半生をささげた井手上が「今のすべて」を詰め込んだのが、『自信がつく美容、美容でつく自信』(扶桑社)だ。本著では、自身が実践するスキンケアやメイクアップに加え、美のマインドの作り方、メンズメイクまで幅広く紹介する。

――初の美容本の出版おめでとうございます。できあがりを見ていかがですか。

【井手上漠】 本当に嬉しいです。美容に関するお仕事をしたいという夢を抱いたのは中学生の頃ですが、その後、芸能界でお仕事をするようになってから、いつか美容本を出すというのが目標でした。

――22歳の今、出版することになったきっかけは?

【井手上漠】 私は生物学的に男性ですから、男性ホルモンの影響による肌質や骨格の変化も経験してきました。そのうえで、男性っぽさと女性っぽさの両方の魅力をバランスよく併せ持った顔になることを理想に、これまでどちらの情報もたくさん得て、実践してきました。一昨年には国際メイクアップアーティストの資格も取得しましたし、今だったら、説得力のある形で22歳の私がたどり着いた美容を書籍にしてお伝えできるのではないかと考えたことがきっかけです。

――美容本のタイトルといえば、“キレイになるコツ”や“モテ顔の作り方”といった容姿のアップデートを揚げるものが主流ですが、本書では『自信がつく美容 美容でつく自信』とテーマを内側に向けているのが印象的でした。

【井手上漠】 私は「性別がない」枠として、「奇妙」と言われ続け、悩む時期もありました。でも、「奇妙」が「希少な美」になれば、きっと誰もが見方を変えてくれるだろうと信じて、大好きな美容を追求してきました。実際、自分を磨けば磨くほど、性格が明るくなって、心が豊かになって、まわりを囲む人たちにも恵まれるようになって、私を変えてくれた美容の力ってとんでもないものかもしれないと気づきました。そんなふうに美容で自信をいただいたからこそ、本著では内面にもフォーカスしたいと思いました。外側を美しくするテクニックを知ると、内面も変わる。美容は外見にとどまらず、心や精神の健康にも深く結びついているということもお伝えしたいと考えました。

■コンプレックスは個性、「活かすメイクを知れば唯一無二の自分だけの強みになる」

――最近は、コンプレックスを解消し、内面も明るく生きるために、プチ整形をする人も増えていますが、本著ではスキンケアやメイクアップで自分に自信をつけることに焦点を当てられています。

【井手上漠】 眉毛が太いとか、鼻が大きいなど、美容的なコンプレックスは人それぞれいろいろあると思います。とかくコンプレックスを隠そうとみなさん考えがちですが、私は、持って生まれたものを活かした方が心も顔も輝けると思っています。コンプレックスは個性です。それを活かしたメイク術を知れば、コンプレックスだった部分は唯一無二の自分だけの強みになる。整形も否定はしませんが、私はメイクアップでそれを学ばせていただいたので、本著ではその方法を提案させていただきました。

――内面にフォーカスするという意味では、メイクアップ同様、食事や腸活、瞑想などインナーケアについてもご自身の美容法として紹介されています。

【井手上漠】 どんなに明るいメイクをしても、心が病んでいては美しく見えません。メンタルの健やかさも美容の根底には必ず必要だと考えています。例えば、腸は“セカンドブレイン=第2の脳”と言われるくらい人間にとって大切なもので、腸内環境が整っていないとマインドが低下して、ネガティブ思考になってしまいます。瞑想も私は毎朝10分やっているのですが、落ち込みやすい自分が毎日ハッピーに過ごせるようになりました。生きていれば人間関係は避けては通れないものですが、自分の内面を整えておければ、心地よい自分を見せられるし、他者とも打ち解けられる。人間関係にも良い作用をもたらすと思います。

――本著で初めて披露されたメンズメイクの漠さんも印象的でした。

【井手上漠】 男性にも、外側を美しくするテクニックがわかると、内側の心も変わるということをお伝えしたくて、メンズメイクは必ず入れたいと考えました。私は男性に必要な印象は清潔感と色気だと思っているので、本著では、ナチュラルでありながらそれを可能にするメイクを提案させていただきました。ナチュラルにしようと思えば思うほどメイクしている感を排除しなければなりませんし、メンズメイクって簡単そうに見えて、実は繊細でとても難しいんですけど、初心者向けに提案しているので、男性にもぜひ、メイクを楽しんでいただけたらと思います。

■「美容が内面にもたらす力を感じ取ってほしい」

――掲載されたメンズメイクの写真の一部をアップしたご自身のインスタグラムには、「変幻自在」「美少年も美少女もいけちゃうなんてすごい!」と感嘆の声が多数寄せられました。メンズメイクとその他のメイクとでは、カメラの前に立つ意識は違いましたか?

【井手上漠】 ポーズも表情も自然と出てきた気がします。普段のお仕事では、私ではない誰かを演じることもありますし、トークなどでは自分のことを話す場合でも言葉を選ばなければいけないことがありますが、この本の中に詰まっているのは、すべて自然体の私です!

――女性的な時も男性的な時も、ありのままの漠さんなんですね。著著の中では、男女両方の魅力を併せ持つ着こなしや考え方、スタイルを「アンドロジナス」という言葉で表現されていますが、まさに、アンドロジナスとして生きる漠さんのすべてが詰まった1冊と。本著を通して、読者に伝えたい思いをお聞かせください。

【井手上漠】 タイトルに「自信」とつけていますけど、単に「自信があればいい」とはとらえていただきたくないなと思っています。「人は自信がありすぎると他人が介在する隙間がなくなって、成長することに意識が向かなくなってしまう」ということを私はある本から教わりました。たしかに、人は自信がないからこそ、他者に憧れを抱いたり、他者を愛おしく思えたり、尊敬できたりして、他の人を見て学ぶことができる。もちろん、この人に勝ちたいとか、ここで活躍したいとか、生きていれば、自信が必要になる場面があります。そんなときのための方法のひとつが美容だと思っていますので、この本を通じて、美容が内面にもたらす力を感じ取っていただけたら嬉しいです。その意味では、ちょっと変わった美容本といえるかもしれませんが、私の美容がみなさまの救いになれたら幸せです。

――最後に今後の展望についてお聞かせください。

【井手上漠】 コスメのプロデュースもしたいですし、メイクアップアーティストとしての活動もしたいですし、最終的な目標としては、誰もが納得してくれる美容家という肩書が似合う人になりたいです。そのために、2023年に取得した国際メイクアップアーティストの資格のほかにも、まだいくつか取りたい資格があって、勉強を続けています。自分の好きなことを突き詰めながら成長している自分を見ると自信がつくし、心が満たされるので、もっともっと頑張って、自分の道を広げていきたいと思います。

衣装協力/JICHOI(MATT.Tokyo)

(取材・文/河上いつ子)

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