
3月1日に亡くなった、みのもんたさんは今年1月に焼き肉店で牛タンをのどに詰まらせて救急搬送され、そのまま意識不明の状態になっていたことが報じられていた。2019年に発症したパーキンソン病、その症状のひとつ“嚥下機能の低下”が要因ともいわれている。だが、原因となった食品が高齢者に窒息事故を起こさせるイメージのある「餅」でなく「牛タン」だったことを意外に感じた人も多いのではないだろうか。
「餅」は意外にも第6位
東京消防庁の発表によると窒息・誤飲の原因上位10製品の第1位は、みのさんの命を奪った「肉」。そして前述のように危険視され「白い悪魔」とも称される「餅」は第6位だった。高齢者がメインの介護施設では……。
「お餅は特に危険なので提供はもちろん、差し入れも不可の施設が多いです。認知機能の衰えで食へのこだわりが強くなってしまう人もいるのですが、ねだられても差し入れなどはしないように。お団子や大福、おまんじゅうなどを禁止する施設も。私の過去の経験では、柿をのどに詰まらせて心肺停止になり、救急搬送されたケースもありました」(『あんしん快護』運営・浦山陽平さん)
肉に餅、柿さえも危険とは。まるで高齢者の好物を狙い撃ちにしたかのようなラインナップだ。ほかにも……。
「危険な食品はそれだけではありません。柿に似たものだと缶詰の桃など、つるっと入りやすいもの。パンなど、水分が少なく、つぶしてかたくなるもの。焼きのりやキュウリの薄切りなど、上あごに貼りつきやすいもの。ごまやピーナツなど小さいもの。梅干しや酢の物など、むせやすいものもダメで、もっというと、水やお茶などのサラッとした液体も気道に入ってしまうので注意が必要です」
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そう教えてくれたのは、介護施設を立ち上げ、運営する医療法人聖生会理事長で内科医の松永安優美さんだ。
食事中の姿勢が大事
「パーキンソン病を患っていた私の父も、やはり肉を誤嚥して危険な目に遭いました。若いころと同じ大きさのものを食べても唾液の量が減っており、飲み込む力も弱っているからです。家族が食事をのどに詰まらせてしまった場合は、焦らずに救急車を呼びつつ掃除機を用意して。隙間用のパーツを使い、上にいって気道をふさいでしまう舌を押さえて詰まったものを吸引してください。指でかき出す場合や口を開ける際には、指を噛まれないよう気をつけましょう」(松永さん)
ほかに背中を叩く方法などもあるが、掃除機が使えるとの情報はありがたい。誤嚥を防ぐため、日頃からできることはあるだろうか。姿勢のスペシャリストで嚥下障害にも詳しい作業療法士の野村寿子さんにヒントをもらった。
「嚥下機能に不安のある方は特に姿勢が大事です。ゴックンしやすい姿勢での食事を心がけてください。下向きや猫背、また慌てて食べたり、おしゃべりしながらの食事は危険です。また、息が浅くならないようにしましょう。
口元の筋肉がだらしなく、ほうれい線が深くなってきたら“運動しましょう”のサイン。意識して口角を上げたり、声を出すことが大事。口元やのどの筋肉のトレーニングと考えて、カラオケで大声を出すのもオススメですよ!」
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取材・文/山部和歌子