【インタビュー】『白雪姫』吉柳咲良、いくつもの楽曲を通して感じたプリンセスの成長

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2025年03月20日 12:01  cinemacafe.net

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吉柳咲良/photo:You Ishii
世界初の長編アニメーション映画として1937年に生まれ、世代を超えて愛され続けてきた「白雪姫」。普及の名作を90年近くを経てミュージカル版として実写映画化した『白雪姫』がついに公開。

レイチェル・ゼグラーが演じている白雪姫のプレミアム吹替版声優を務めるのは、二十歳の注目俳優・吉柳咲良(きりゅうさくら)。ホリプロタレントスカウトキャラバンPURE GIRL 2016でグランプリを獲得し、2017年にはミュージカル「ピーター・パン」の10代目ピーター・パン役でデビュー。

その後もアニメ映画『天気の子』の声優(ヒロイン・天野陽菜の弟・凪役)、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」、NHK大河ドラマ「光る君へ」(最終回に登場し、のちに「更級日記」を記すちぐさを演じた)など話題作に出演し、1月より放送のTBS系ドラマ「御上先生」にも生徒役のひとりで出演し、存在感を放っている。

すでに劇中歌「夢に見る 〜Waiting On A Wish〜」のトレーラーも公開され、その力強く透明感のある歌声に称賛の声が集まっているが、そんな彼女にディズニープリンセスの“原点”とも言える『白雪姫』の魅力について語ってもらった。

「プリンセスへの憧れをどこかで否定し続けた自分」

――オーディションを経て、プレミアム吹替版で白雪姫の声を演じることが決まった時の心境をお聞かせください。

ずっとプリンセスというものに対して憧れていて、いつかディズニーの作品に携わりたいという気持ちはあったので、本当に嬉しかったです。自分自身がどこかで遠い存在だと思っていたディズニープリンセス――“プリンセス”というものに対しての憧れをどこかで否定し続けてきた自分をやっと肯定できたようなところがあり、どこか救われたような気持ちになりました。

でもオーディション中も本当に気が気じゃなくて、受けてから結果が来るまでずっとドキドキだったので、ちょっとひと安心という感じでした。

――発表されてからの周りの反響は?

いままでで一番反響が大きかったですね。母は普段、あまり映画館に行かないのですが、「絶対観に行くよ!」と言ってくれました。それと、うちの父の誕生日がこの映画の公開日の3月20日なんですよ。最高の誕生日プレゼントだなって思っています(笑)。

本当にたくさんの方々、特にミュージカルをきっかけに私を知ってくださった人たちが「おめでとう!」と言ってくださいました。ちょうどドラマの撮影期間中だったのですが、ドラマの関係者の人たちもすごく喜んでくれて、本当にいっぱい「おめでとう」とか「夢が叶ったね」というメッセージをいただけて、とても嬉しかったです。

――ご自身では「プリンセスへの憧れをどこかで否定し続けてきた」ともおっしゃっていましたが、憧れつつもあきらめの気持ちを抱いていたのはなぜなんでしょうか?

この仕事をやっていると、いろんな意見をいただくことがあって、もちろん否定的な声をいただくこともあります。それを自分では「気にしない」と言い聞かせつつも、どこかでそういう声が自分の中に蓄積されていたっていうのも少しあったと思います。

あとは、この仕事をしていて、本当にすごい人たちをたくさん目の当たりにして、どうしても自信が削られていくこともありました。私にはないものを持っている人たちがたくさんいて「勝てない」、「まだまだ実力が足りてない」という気持ちに何度もなりますし、どれだけ頑張っても、まだ壁があって、まだ壁があって…という繰り返しで、やればやるほど自信がなくなっていく感覚があったと思います。



「白雪姫の成長が楽曲のひとつひとつから見えてくる」

――子どもの頃にアニメーション版の『白雪姫』を見たことはありましたか?

実は、小さい頃にちゃんと観た記憶がなくて、ディズニー作品に限らず、あんまり子どもの頃に映画館に足を運ぶ機会がなかったんですね。というのも、私は栃木の田舎の町の生まれで、映画館が子どもだけで行けるような距離にはなくて、親に連れて行ってもらわないと映画館に行けなかったんです。

ただ、そんな私ですら、断片的にですけどディズニー・アニメーションの『白雪姫』はどこかで見て知っていましたし、今回オーディションを受けるにあたって、改めて見直して、これがディズニー初の長編カラーアニメーション映画だと知って、すごくびっくりしました。

――収録されてみて、いかがでしたか? 白雪姫の声をあてるにあたって意識したことや大切にした部分を教えてください。

基本的には、アニメーション版に出てくる、誰もが知る白雪姫の人物像と大きく変わっているところはなくて、心優しくて思慮深く、本当に誰に対しても平等で、愛がある“善良”という言葉がすごく似合うプリンセスという部分は、実写版になっても全く同じだと思います。

その意味で、アニメーション版のイメージを大事にしつつ、実写でレイチェル・ゼグラーさんが表現した白雪姫のニュアンス――凛々しさや強さみたいなものを少しずつプラスしながら演じました。みなさんがイメージする白雪姫像と、レイチェル・ゼグラーさんが演じる白雪姫の素敵なところをどう組み合わせていくかみたいな部分は、調節が難しかったですね。

――すでにオリジナル楽曲の「夢に見る 〜Waiting On A Wish〜」のトレーラーも公開されていますが、歌唱に関してはどんなことを大切にされたんでしょうか?

全体的にすごく音域の幅が広くて、結構な低音のパートもあれば、すごく高音の部分もあって、しかも種類がそれぞれに違って、パンっとわりと強めに張り上げるところもあれば、ものすごく繊細に裏声を使ってキレイに歌い上げなくてはならないシーンもあって、いろんな喉の使い方をしなくてはいけませんでした。

楽曲の難易度の高さにはびっくりしましたが、白雪姫の感情を大切にしました。「歌詞を届ける」ということの素晴らしさをレイチェル・ゼグラーさんの歌声から感じたので、その雰囲気を絶対に壊すわけにはいかないという思いが強くあって、何度も何度も原曲を聴いて、レイチェル・ゼグラーさんの声を意識して練習しました。

――歌詞の持つメッセージ性にエンパワメントされる部分、歌に背中を押されるようなところはありましたか?

「夢に見る 〜Waiting On A Wish〜」を歌うのは、映画の中でわりと序盤でその時はまだ「夢に見て」いるんですよ。そこから物語が進んでいく 。その成長過程が、どんどんいろんな曲を通して現れていくところがあって、このストーリーの中での白雪姫の成長が楽曲のひとつひとつから見えてくるのが、すごく面白いなと思います。

しかも「夢に見る 〜Waiting On A Wish〜」は、同じ楽曲の違うバージョンが流れたりもして、曲自体は同じなのに場面が変わることで心情の変化も見れて、音楽的にも工夫されています。

――河野純喜(JO1)さんが声をあてているジョナサンとのデュエットはいかがでしたか?

あの曲が一番難しかったです。柔らかく繊細に歌う部分が多い楽曲だったし、(デュエットが)ハマらないといけないので、拍をすごく大切にして歌いました。息をするタイミングまでぴったり合わないといけないので、原曲の息遣いのタイミングを丁寧に探りながら歌いました。

おそらく一番ピュアなラブソングになっていると思います。みんなに「甘いなぁ…」と感じていただけると思います(笑)。先日、私も完成した曲を聴かせていただいたんですけど、ジョナサンが歌い始めた瞬間に、そこにいたみんなが「甘い…」って、もう感情がダダ漏れしてましたから(笑)。

それくらいピュアで甘い歌声に包まれるように、ジョナサンがこの白雪姫の歌声を支えるように歌ってくれているすごく素敵な楽曲になっていて、絶対に皆さんが好きな楽曲になると思います。



現代に描かれる“白雪姫”や“プリンセス”とは

――実写版ならではの魅力を感じたシーン、これから見る人たちに「ここを楽しみにしてほしい」というおすすめのポイントを教えてください。

例えば「ハイ・ホー」もそうですけど、アニメーション版で見たことのあるシーンがそのまま出てくるんですけど「こんなふうになってるのか!」と。(アニメーション版と重なる描写を)探すのもすごく楽しかったです。

立体的になっていて、アニメーションでは見えなかった部分を感じられると思います。(毒リンゴなど)球体の表面だけじゃなくて、ちゃんとその裏側まで見られるような感じがあったし、生身の人間が演じることによって生まれる温度感みたいなものをすごく感じることができて、動物たちも本当にかわいいし、あの時、アニメーションで見ていた世界がこんなふうに目の前に広がるのか! という感覚があって、ゾクゾクしました。

これは観ていただければわかるんですけど、この映画は“絵本”として始まり、終わる、つまり物語をちゃんと閉じることができるんです。すごく考え抜かれて、ちゃんとそれに意味があってこうなっていて、生身の人間が演じる生々しさとファンタジーを感じさせる美しさのどちらもあり、夢を見させてくれる作品だなと思います。

――これまでもディズニー・アニメーションの実写版がいくつも製作されていますが、価値観が現代にアップデートされた描写であったり、メッセージ性を強く打ち出した新たな楽曲が加えられたりするということがありましたが、その意味で、いまの時代に実写版『白雪姫』が公開される意義を感じるようなシーンや描写はありましたか?

ディズニーのプリンセスの物語を観ていると、実写に限らず常にその時の時代背景というものが反映されたプリンセス像が描かれているなと感じられて、年代が変わる中でちょっとずつ女性像も変わっていきますよね。

それこそ、作品ごとにしゃべり方や佇まい、ドレスの雰囲気も年代によって違うし、ディズニーはすごく細かい部分を大切にしているんだなと思うし、例えば『ラプンツェル』ではしゃべり方もそうだし、着ているドレスも母親が着ているのと全然違ったりするんですよね。今回の『白雪姫』で言うと、良い意味でその中間をしっかりと描いているんじゃないかなと思っています。

先ほども言いましたが、白雪姫が生来持っている優しさや思慮深さ、誰に対しても愛をもって接する純粋な心を描きつつ、現代だからこそ描くことができる凛々しさであったり、アニメーションでは内面には持っていたけど、見えなかったかもしれない女性の強さ――いや「強い」という言い方は、もしかしたら違うのかもしれなくて、自分を律する凛とした女性の姿ですよね。それも彼女が映画の中でストーリーを通して成長していくからこそ見えてくるように描かれているなと思いました。(アニメーション公開当時の女性像と現代の女性像の)どちらもきちんと描かれていて、「なるほど」と思いました。

――最後に吉柳さんにとって“プリンセス”とはどんな存在なのかを教えてください。

やっぱり憧れであり、理想であり、目指したい先にある女性像ですよね。他者に対しての優しさ、思いやりといったものがないプリンセスを見たことがないですし、誰かを想う気持ちであふれていて、常に優しく視野を広く持てる人だなと思います。と同時に自分をきちんと律していますよね。

誰にでも優しくできるからこそ、くじけたとしても、周りの誰かが助けてくれて、それはプリンセス自身が培ってきた誰かに対しての優しさというものが、連鎖しているのだなと思います。

その中で自分というものをしっかり持っていて、女性というか人としての理想像、私が目指したい先に常にいてくれるお手本のような人物がプリンセスだと思います。




(text:黒豆直樹/photo:You Ishii)

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