
「まさに“テレ朝ショック”ですよ。あんな決定をされると、テレビ番組の制作スタッフはただただ委縮するだけでしょうね。そのあたりを、テレビ局も分からないと」
テレビ番組制作会社の契約スタッフとしてテレビ番組の制作に関わるスタッフは、表情を曇らせながらそう語る。
『ナスD大冒険TV』を担当している人物
3月19日、テレビ朝日は『当社社員が、会社経費を不適切に使用していたほか、スタッフにパワーハラスメントをしていたことが判明し、懲戒処分を行いましたので、お知らせいたします』とアナウンスした。
「当該社員は50歳のコンテンツ編成局に所属するスターディレクターです。2020年にスタートした『ナスD大冒険TV』を担当している人物で、テレビ朝日としては番組名に個人名を入れる、いわゆる冠番組を持たせている貴重な存在です」
とスポーツ紙記者が解説。詳細を次のように伝える。
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「問題になったのは、経費の不正使用とスタッフに対するパワハラ。2019年から今年1月の間に約517万円を、個人的な会食で使っていたそうです。番組を取り仕切ると、1000万円単位の制作費を動かせますから、ちょろまかせるのは簡単ですよ」
懲戒社員が手掛けたヒット番組『ナスD大冒険TV』が始まったのが2020年。つまりそれ以前から、“せこいネコババ体質”を持っていたことになる。
「確かに昔は、自分で領収書を手書きして提出しても許されていた。キャバラク代も落としていました。相手の名前も適当に“偽造“していましたが、今はそうはできない。会食相手にまで調査を入れて、本当に会食しているのか確認しますからね」(元テレビ局員)
経費の件は、まったくきれいにしていないとアウトというのが令和の今。同時にスターディレクターは、パワハラでも足元をすくわれたという。
「テレビ局には匿名でメールが送れるホイッスル制度があり、現場で不満を持った、立場の弱いスタッフが番組の幹部社員を指すことが増えていますよ」
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と冒頭の番組制作スタッフ。次のように続ける。
現場スタッフはお払い箱
「ただその狙いは、気に入らない社員を移動してほしい、という思いです。今回のように番組まで終了するというのは、告発者側は考えていない。だってそうでしょう、自分の職場がなくなり、生活が脅かされるということですから」
テレビ朝日は社員を懲戒処分にすることと番組の打ち切りを発表した。
「局員はいいですよ。部署が変わろうが、年収1千万円以上を補償されるわけですから。薄給で働いている現場のスタッフは、番組がなくなればお払い箱です。そういう契約を交わしています。非常に弱い立場です。番組の放送枠には必ず後番組が入りますが、そこに自分が残れる、もしくは入れる保証はまったくないんです。
要するに、現場のスタッフがパワハラやセクハラを告発すると、社員の処分と同時に番組が終了することがあるということが、今回のテレビ朝日は示したわけです。番組がなくなってもいい、番組と心中していいと思うスタッフでない限り、今後、パワハラやセクハラを告発しにくいことになります」
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不祥事を起こした局員は守られて、パワハラを正直に告発した下請けスタッフは仕事を失う……。今回の“テレ朝”ショックは、テレビ業界で働く下請けスタッフをただただ委縮させるだけだ。