2024年に誕生した韓国初の日本人チアが、話題を呼んでいます。
同年には台湾で活躍する3人の日本人チアなど、海外で活躍する日本人チアが注目を集める中、元NPBチアの野澤彩華さんは、韓国を新天地としてチア活動をスタートしました。
●読売ジャイアンツの公式チア→韓国プロバスケットボールチアへ
韓国に渡る前はプロ野球・読売ジャイアンツの公式チアリーダーチーム「VENUS」で活躍した野澤さんは、はじける笑顔でチアとしてファンを魅了するだけでなく、中高生時代に培ったソフトボールの技術を披露するなど、“笑顔の豪腕チア”としても知られた存在でした。
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野澤さんは2024年11月から、韓国プロバスケットボール(KBL)の「原州DBプロミ」のチアチームに加入。バスケのチアとして韓国での活動をスタートさせましたが、野球の2025年シーズン中には、ハンファイーグルスのチアとしても活動予定であることが本人の口から語られています。
●驚きの投球が120万回再生超
韓国での活動を開始して約半年。韓国の野球YouTuberの動画に出演した際も、チアらしからぬ野球の腕前を披露し、一所懸命な姿からかもし出される健康的な美しさが120万回以上再生されるなど、韓国で活動する初の日本人チアとして野球ファンを中心に注目度を増しています。異色の経歴を持つ元NPBチアに話を聞きました。
●豪腕チアと呼ばれて――NPBチア時代
―― 野澤さんのチアのキャリアは、読売ジャイアンツのチアチーム「VENUS」に加入した2022年から始まりました。チアリーダーを目指したきっかけについて教えてください。
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野澤 幼いころから父の影響で野球が好きで、また、小学校のときからダンス教室に通っていたので踊ることも昔から好きでした。この両方を仕事にできたら良いなと思い、プロ野球のチアを目指すようになりました。
―― 野澤さんといえば、YouTubeなどでソフトボールや野球をやられている姿をよく拝見します。
野澤 ソフトボールは中学校から高校卒業までの6年間やっていました。
小学校のころから、毎週草野球をしていた父に着いていってキャッチボールしたり、一緒にバッティングセンターに行ったりしていたこともあって、中学校でソフトボールに自然と興味を持ったのかなと思います。中学のころは選抜に選ばれ、高校では関東大会や東日本大会という大きな大会も経験できました。
―― VENUS時代のお話を聞かせてください。まずは、楽しかったこと、苦労したことを。
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野澤 VENUS時代は、毎日が本当に楽しい日々でした。特に、7回表が終わった後に、巨人軍の応援歌“闘魂こめて”を踊るのですが、客席の皆さんと一体となって応援するのが毎回すごく楽しかったです。
VENUS時代の印象的なお仕事は、テレビの撮影を経験したこと。野球のチャンネルに出演したのですが、たくさんのカメラ、スタッフさんもいらっしゃって、すごく緊張したのを覚えています。緊張したわりに、モノマネを披露したりとか(笑)。
一番心残りなのは、(VENUS時代の)2022年は新型コロナの時期で、ファンの皆さんとなかなか関わることができなかったことです。
―― 誰もが経験できることではないですが、満員の東京ドームをグラウンドから見るのはどんな感じですか?
野澤 すごいです。特に、「闘魂の日」という、選手もお客さんもオレンジ色のユニフォームを着て、オレンジ色のタオルを持って応援する日があるのですが、ドーム全体がきれいなオレンジ色に染まっているのをグラウンドから見たときは本当に感動しました。
―― VENUSの1年間を通して得られたことは?
野澤 たくさんあります。VENUSを始める前までは少し控えめでしたが、加入後はいろいろな方と出会い、人と話すようになりました。また、先ほどお話ししたように、テレビや雑誌の撮影などのお仕事をさせていただいたことは、自分自身の成長につながったと感じています。
●VENUS卒業から韓国を新天地に選んだ理由
―― そこから韓国のチアを目指されたのはどういう流れで?
野澤 日本でチアを始める前から、Instagramで韓国チアの動画をよく見ていました。その時は、野球のチアになりたいと考えていて、韓国に行こうとまでは思っていませんでしたが。
ただ近年、台湾など海外で活躍されるチアリーダーも増え、私も海外で挑戦してみたいと思うようになりました。日本でチアになるきっかけの1つとなった、憧れのチアリーダーがいる韓国でチャレンジしようと。あとK-POPも好きなので、K-POPの曲を踊りたいという気持ちもありました。
―― 憧れのチアリーダーの方のお名前を教えてください。
野澤 キムジナ(Kim Jin A)さんです。かなり前から好きで、ずっとインスタを見て、DMも送ったりして(笑)。まだお会いしたことはないのですが、いつか会いたいです。
―― 加入された「原州DBプロミ」のチアチームはどんな感じですか?
野澤 チームに入って一番感じたことは、みんな本当に面白い方ばかり。韓国の方ってギャグセンスが高いのかなと感じるくらいみんなユニークで。頭の回転も速いし、笑いのセンスが抜群です。そんな楽しいチームですね。
―― チームで特にお世話になっている方は?
野澤 チーム長でもあるセインちゃんです。初めてDBプロミのチアチームの練習に参加した日、緊張して練習室に入っていったのですが、そのときも気を遣って助けてくれました。韓国語だと分からない言葉もまだ多く、通じないことがあったりしますが、セインちゃんは分かりやすく英語なども織り交ぜて練習を進めてくれたりして、すごく助けてもらっています。
●日本と韓国の違い
―― 韓国でチアとして活動してみて感じた、日本のチアとの違いを教えてください。
野澤 私は韓国でまだバスケットチームのチアしか経験していないので、単純に日本の野球のチアと比較するのは難しいですが、踊る曲を決めたり、振りつけを考えたり、韓国の方が自分たちで決めて進めていくという自由なところが韓国は強い気がしました。
毎試合、3曲くらい新しいダンスを踊るので、振り付けを覚えなければならない量が多く、それを短期間で習得しければならないところは大変です。
日本の場合は、振り付けさんがいて、かっこいい振り付けを考えてくださるので、それをしっかり時間をかけて練習していく感じでした。一部自分たちで振り付けを考えたりしていましたが、量が圧倒的に韓国の方が多いので、そこは苦労しています。
―― 日本と韓国でファンとの距離感に違いは感じますか?
野澤 私が日本で活動していた2022年はコロナの時期とかぶっていたので、ファンの方と接する機会が残念ながらほとんどありませんでした。
ただ、今、チアの子たちの活動などを見ていると、ウエルカムと言って、試合前にファンの方たちをお出迎えする活動だったり、東京ドームをチアの子が案内するドームツアーをやっていたりとか、結構ファンの方との距離も近いと思います。
韓国もファンの方との距離は近く、チアリーダーのファンの方も日本よりかなりいる印象です。会場でファンの方と普通に会話をしたり、プレゼントをいただいたりするのは日本の時代にはなかったことですね。
―― 韓国チアは序列が結構はっきりしているように感じます。
野澤 感じます。韓国の場合、在籍している年数や年齢、人気などで、試合に出られる日数、ダンスのフォーメーションの位置、仕事の分量など全然違います。誰がエースなのかはっきりしています。
―― チアリーダーは選手のため、お客さんのためにという印象が強いですが。
野澤 私はそれを日本ですごく感じました。日本の時代は、髪の毛を留めるピンやちょっとかわいい飾りとかですら一切使用禁止でした。万が一グラウンドに落としたら選手に迷惑を掛けますからね。そういったことは日本の方が厳格だと思います。
―― 憧れや目標にしている人はいますか?
野澤 やっぱり憧れている方は、先ほどもお話した韓国の水原KT withの野球のチームのチアリーダー、キムジナさん。顔やスタイル、踊り方、声、全てが私のタイプで、こういったチアリーダーになりたいなって、憧れはすごく強いです。
●韓国での暮らし
―― 韓国の暮らしを始めて数カ月たちますが、暮らしてみての感想はありますか?
野澤 今回、初めて海外で住んだのですが、いろいろと日本と違いを感じます。
例えば、韓国は、“パリパリ文化”という何事も早く早くという文化があって、バスやタクシーの運転手さんとか、めちゃくちゃスピード出したりとか(笑)。ただ、そういった日常的な文化の違いを大変だとは感じておらず、今は楽しくすら感じています。
―― 食事についてはいかがですか?
野澤 日本で食べたことのない赤い食べ物がたくさん韓国にあって、基本的に韓国の食べ物は辛いですね。『辛くしないで』と店員さんに言っても辛かったりします(笑)。もともと辛い物が苦手でしたが、韓国に来て辛いものを頑張って食べるようにしていたら、辛いものにすごく強くなりました。今は逆に辛い物が好きだったりします(笑)。
―― 韓国で生活する上で一番障壁になるのは言葉だと思いますが、韓国語はいかがですか?
野澤 言語の壁を今一番痛感しています。毎日勉強していますが、まだ自分の意志を韓国語で伝えるのが難しいです。でも、言葉は私自身が頑張れば解決する部分なので、頑張って習得したいです。
―― 韓国で生活する中で、ご自身に変化は起きていますか?
野澤 そうですね。日本人よりも韓国人の方が、自分の思ったことをはっきりと相手に伝える方が多い印象です。私も日本にいたときより、自分の気持ちをはっきり伝えられるようになった気がしています。
●「チアリーダーが私にとって一番やりたい仕事」
―― 今後の夢を教えてください。
野澤 チアリーダーが私にとって一番やりたい仕事なので、チアを卒業して何かまたステップアップ、というのは今は考えていません。ただ、もしチアをやめることがあれば、もともとやっていたピラティスのインストラクターの資格を韓国でも取ってみたいですね。
―― では、チアを続けていく上での思いがあれば教えてください
野澤 私は、韓国で初めての日本人チアですが、最近は、私のように海外でチアをされている方を見て、海外チアに興味を持たれている方が多い気がします。ただ、迷っていたり怖さがある方もいると思うので、そういった方の後押しができるような存在になれたらと思います。
―― 最後に、この記事をご覧になっている方にメッセージをお願いします。
野澤 今のチアの仕事も全力で頑張るんですけど、野球・スポーツに関するお仕事も頑張っていきたいので、応援していただけたらとてもうれしいです。機会があったらぜひ韓国に見に来てくださいね。待っています。
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