写真はイメージです―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。村野氏は「誰しも1日は24時間しかない。けれど、効率を高めて48時間にも72時間にもできる方法がある」と言います。効率的に物事を進めていくための思考術について迫ります。
◆年齢の差を埋めるために無茶をした過去
私はずっと偉そうな年長者が嫌いでした。ただ長生きしているからと偉そうにいろいろと指図してくる存在が、どうしても許せません。「自分のほうが体力も計算能力も上のはず……。なのになぜ年長者は自分に対して上から目線で振る舞えるのか? 彼らにあって自分にないものはなんだろう?」と少し真面目に考えてみたところ、学生の頃の私がたどり着いた考えは、長く生きている「経験値の差」だと思いました。
ただ、絶対に年齢の差はひっくり返せません。そこで「睡眠時間を削って過ごせば、1日をフル回転できて、経験値の差を埋められるのでは?」と思い、一切の睡眠時間を削って過ごしてみました。もちろん、当然ながら3日と持たず倒れてしまいます(笑)。「この方法では駄目だ」と思い知ったところ、友人の話を思い出しました。
それは「外国人に梅干しを食べさせる」というエピソードです。初めて梅干しを見て食べる外国人に、何も教えず「梅干しだよ」と食べさせると、酸味と塩気が想定できずビックリして吐き出してしまうそう。でも、「ソルティーでレモンのような酸っぱさがある食べ物だよ」と伝えていると食べられる、というお話です。
この違いは何か? それは「梅干しを食べたことのある人」の経験値を事前にもらったから。だから、未経験でも想定ができたのです。
時間は有限です。誰しも平等に1日24時間しかありません。では、その24時間を倍の48時間、3倍の72時間にするにはどうしたらいいか?
それは他人の時間を共有してもらうこと。「これが一番効率的では?」と考えた私は、とにかく色々なことを、さまざまな人に聞き始めました。「百聞は一見にしかず」ということわざがありますが、それでも一聞は無よりは価値があります。その人の経験値を少しでも譲ってもらい、貯めていけば大きな経験値になっていきます。
◆分からないことは「知っている人」に聞けばいい
特に若い頃は体力も気力も充実していますが、この「経験」だけが足りません。この先に「こんな事が起こる」と分かっていれば対処の方法も先んじて打てるようになります。ですから、自分が分からないこと、知らないことは積極的に聞きに行くと良いでしょう。
この方法は私が不動産投資を始めたときも有効でした。最初に物件を購入した2003年頃は今ほど不動産投資の情報はありませんでした。ですので、インターネットで片っ端から不動産に関する会社を検索して問い合わせしたのです。ときには間違えて建設会社に連絡しご迷惑をおかけしたこともあるのですが、それでも多くの不動産企業と出会えました。
その際にはもちろん、相手の言う事を全て鵜呑みにしないことが鉄則です。とはいえ、相手の話の正誤は知識のない私には判断する術がありません。ですから、A社に話を聞いたらB社に「A社はこう話してましたが合ってますか?」と尋ねていました。すると「それは違います」と別の話が出てきます。それを持ってC社に「〇の話と△の話はどっちが正しいですか?」と質問をしていました。これを繰り返すと、自ずと知識は深まります。例えるなら「知識のわらしべ長者」のようなものです。
いくつもの会社に根掘り葉掘り聞いていくなかで……。多くの不動産会社の営業さんは「この物件は値上がりして儲かります」「この物件は値下がりしませんので、投資しても安心です」とキャピタルゲインに絡めて物件を勧めていました。
◆不動産投資は最初はマイナス。時間をかければ回収できる
そのなかで、ある1社のTさんは「うちは管理戸数が利益の源泉です。物件が売れればその分管理戸数が増えて儲かっていくビジネスモデルなんです」と話していました。
話を聞くなかで、気がついたのは「不動産投資は『高く売りたい人』から買うので最初はマイナスになる。でも、そのマイナスを時間をかけて取り返し、利益を出していくモデル」と理解しました。もちろん物件を安く買う手法もあるのですが……。値段の目利きは売買のプロの領域で、平凡な自分では太刀打ちできないと思いました。
それよりも「お金を産み出す輪転機を買う」というイメージで、「初期投資はあるけど徐々に回収する」と考えれば、時間さえかければ回収しプラスにすることができると気が付きました。そして同時に「家賃収入をしっかり得られること」「付き合う不動産会社は長く続かないと困る」という事実にもたどり着きました。不動産業は大別して「売買、仲介、管理」に分けられます。売買と仲介がメインの会社では物件が売れなければ経営が厳しくなる。一方で管理がメインの場合、管理ができさえいれば収入は入ってくるので経営は続いていきます。
◆“経験値泥棒”になるという弊害も
その意味では私が物件を購入したTさんの会社の話は最も説得力がありました。このTさんは「お客さん第一」で考える方です。無理に物件を薦めるようなことは絶対ありませんし、自社物件についても「これは買わない方が良いですよ」と平気で言う方でした。実はTさんは社内外で一目置かれていて、ずっと月10件以上、年間150件約20億円以上の不動産売買をほぼ毎年成り立たせている凄腕の営業さんでもあったのです。今でもTさんとはお付き合いがあり、やり取りをさせてもらっています。
知らないことは、知っている人を見つけて根掘り葉掘り聞く。それこそが、誰しも1日24時間しかない時間にレバレッジをかけて、48時間にも、72時間にもする方法だと私は思っています。
ただし……。このためには「話をしてくれる人」の存在が不可欠です。「自分の為に時間を使って話をしてくれる人」のために自分は何がお返しできるのか? という視点は大切です。単なる経験値を奪っていくだけの人になると、そのうち相手をしてくれる人がいなくなるのでその点はご注意を。
構成/上野 智(まてい社)
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【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)