インターホンに貼られた警視庁の防犯ステッカー(資料) 「お宅の家、大変危険な状態です。今回修理すれば一生ものです」―。うそのリフォームを持ち掛け、代金をだまし取る手口が各地で相次いでいる。背景には「小規模工事への規制がない」という法の抜け穴が指摘されているが、規制を強化すれば、個人で工事を請け負う「一人親方」の負担が増えると懸念する声もある。
警視庁は今月、建設業法違反容疑で、「スーパーサラリーマン」を名乗る清水謙行容疑者(49)らを逮捕した。捜査関係者によると、同容疑者は国土交通相や都道府県知事の許可を得ずに済むよう、契約額が500万円を超えないように工事を分割して契約するなどし、摘発を逃れていたとされる。
国民生活センターによると、訪問販売によるリフォームを巡って2024年4月〜25年2月に寄せられた相談の9割以上は、契約額500万円未満の工事に関するものだった。捜査幹部は「無許可で工事できるため、悪質業者が入り込みやすい。排除策を考えないと業界自体の印象が悪くなる」と指摘。規制対象となる契約額の基準を引き下げるなどの法改正が必要だと強調する。
一方、建設業法を所管する国交省は、何らかの対策は必要だとしつつ、引き下げには慎重な姿勢だ。同法の許可を得るには経営状況を示す財務諸表や、実務経験が分かる書類を国に提出する必要がある。手続きが煩雑で、準備に平均140時間かかるため、推計で建設業者の約15%を占める一人親方には「負担が大きい」(担当者)という。
業界団体の反応はさまざまだ。日本住宅リフォーム産業協会の相馬康男事務局長は「建設業の許可は信頼の証しで、事業拡大にもつながる」と規制強化に前向きな姿勢を示す。一方、小規模事業者が加入する全建総連の高橋健二住宅対策部長は、対策の必要性は認めつつ、「厳しい要件を課すと業者が廃業してしまう可能性がある」と話す。
不動産トラブルに詳しい明海大の中村喜久夫教授は、規制強化に賛否がある中、消費者には自衛策が求められると指摘。「悪質なリフォーム業者がもうからないよう複数業者から見積もりを取るなどの対策が必要だ」と語った。