終盤にヘンドリック・モータースポーツ(HMS)の僚友アレックス・ボウマン(シボレー・カマロ)がウォールにヒットした間隙を突き、カイル・ラーソンが今季初優勝 ホームステッド・マイアミ・スピードウェイで開催された2025年NASCARカップシリーズ第6戦『Straight Talk Wireless 400』は、レース終盤にヘンドリック・モータースポーツ(HMS)の僚友アレックス・ボウマン(シボレー・カマロ)がウォールにヒットした間隙を突き、カイル・ラーソンが今季初優勝を飾り、同地での2度目の勝利でキャリア通算30勝を奪取。この週末は金曜のNASCARクラフツマン・トラック・シリーズでも勝利を挙げ、同エクスフィニティ・シリーズでもレースを支配したラーソンは、このカップシリーズこそ「完璧とは程遠かった」としながらも、あわや“トリプル達成”の勢いを披露した。
開幕戦『Daytona 500』で発動した“オープン暫定免除”の新ルールを見直す動きに始まり、フェニックスでデビューを飾ったキャサリン・レッグ(ライブ・ファスト・モータースポーツ/シボレー・カマロ)に対するNASCAR運営団体側への選考プロセスを巡る議論や、前回のラスベガスでクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が演じた『他車のピットボックスでの作業』に関する違反認定の再定義など、今季のカップシリーズもシーズン序盤で数多くの課題を孕みながら進んできた。
そんななか、迎えたホームステッド・マイアミの予選では、前戦で待望のカップ初勝利を飾ったジョシュ・ベリー(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)や、ノア・グラグソン(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)らのフォード陣営を退け、盟主HMS艦隊の一角を担うボウマンが同地初のポールポジションを獲得した。
すると午後の決勝は2回のステージブレイクを除き、都合2回のコーションのみという静かな展開となり、その初回はベルがスピンを喫した70周目。そしてこの日最多の124周をリードし、ステージ1を制覇していたライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)のエンジンが、派手な白煙とともに息絶えた最後の機会に、いよいよレースが動く。
グリップのないなか、残り51周から壁際ギリギリのハイラインでスピードを稼ごうとする各車のうち、序盤から「壁に何度もぶつかりトップランを失い、リスタートも良くなくて、ショートランが得意ではないこともわかっていた」というラーソンが粘りのドライブを続けていく。
「自分が知っていること、自分にとって良いことをやり続けるしかなかった。ピットロードでのダメージ、予選の失敗、リスタートの失敗など、今日は粘り強く懸命に働いたよ」
残り7周で48号車のボウマンがラップリーダーに立つと、ターン4でカマロZL1はウォールに急接近。「とにかく全力を尽くしたんだ。5号車(ラーソン)が来るのは見えていたし、その前に右フロントからかなり強くぶつかって、何かが曲がって右フロントの感覚がかなり失われた。壁に張り付いてしまったことで間違いなく、この勝利を逃したと思う……皆に申し訳ない」
そう語ったボウマンのボトム側をすり抜けたラーソンが、そのまま1.2秒のギャップでトップチェッカーを受け、ここまで幾度も勝利に近づきながら取りこぼしてきたマイアミ・ホームステッドでの待望の勝利を確定させた。
「カップ戦のキャリアのなかでも、もっともクールな勝利のひとつだと思う。ここでの心痛、昨日の心痛があったからこそ、頭を下げて頑張り続けることができた。本当に良かったし、今は興奮している」と安堵の心境を明かした勝者ラーソン。
「正直に言うと、今日はグリーンフラッグを奪って皆を蹴散らしたかったんだ。早めにリードして、昨日のように支配したかった」と金曜終盤の猛追撃で、劇的な逆転勝利を飾ったNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第4戦『Baptist Health 200』を念頭に、その胸の内を明かすラーソン。
「でもグリーンが振られたら、まるで正反対だった。後退し、ヘルメットのなかで腹を立て、ただイライラしていた。でも、今日はそんな風にはいかないだろうと思った。それから、そんなことは全部忘れたんだ」
一方、週末に2連勝を目指した土曜のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第6戦『Hard Rock Bet 300』では、首位で迎えた延長戦リスタートで背後のサム・メイヤー(ハース・ファクトリー・チーム/フォード・マスタング)に追突され宙に浮き、最終的にシリーズチャンピオンのジャスティン・オルゲイアー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が連勝。ラーソンはほぼレース全域を支配しながら4位に終わる屈辱を味わってもいた。
「でも日曜(のカップ戦)は10周くらい走った後、レース中に『ずっと皆を蹴散らしたい』という気持ちはすぐに忘れてしまおうと思った。『一生懸命、頑張って勝とう』という気持ちになり、レースはそういう展開になったんだ」と続けたラーソン。
「レース前の未熟な考え方を克服し、最後まで粘り強く頑張ったことを誇りに思う。僕にとって、いつも目前で勝利を逃す典型的なホームステッドではなかったからね(笑)。今日は集中力を維持できたことを誇りに思うし(カイル・ブッシュ以来の)週末“トリプル”を逃したことは、それほど深く考えていない。今夜横になったら、きっとそのことを考えるだろう。でもカップシリーズで勝ててうれしいよ。カップシリーズは本当に難しいんだ」
[オートスポーツweb 2025年03月25日]