『エレクトリック・ステイト』ロボットの見た目は、なぜヘンテコ? ルッソ兄弟が語る

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2025年03月25日 20:41  クランクイン!

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(左から)監督を務めたアンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ  Netflix映画『エレクトリック・ステイト』Netflixで独占配信中
 『アベンジャーズ/エンドゲーム』のアンソニー&ジョー・ルッソがメガホンを取り、ミリー・ボビー・ブラウン&クリス・プラットが主演を務めた映画『エレクトリック・ステイト』がNetflixで独占配信中だ。本作は、ヘンテコな見た目のロボットがそこかしこで暮らしているという、“現実とは異なるもうひとつの1990年代”を描いた“S(すこし)F(不思議な)”ロードムービー。グラフィック・ノベルを原作としており、2017年にルッソ兄弟が映画化権を獲得した。今回クランクイン!は、そんなルッソ兄弟にインタビューを実施。映画化権を獲得した経緯や、ダイナミックなアクションシーンへのこだわりなどを聞いた。

【写真】ルッソ兄弟が選ぶ、お気に入りのロボット

■「心をつかんで離さなかった」原作を映画化

――お二人が本作の映画化権を獲得したのは2017年ごろだそうですね。本作にひかれた理由はなんですか?

アンソニー・ルッソ(以下、アンソニー):当時、クリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーは、わたしたちが手掛けたマーベル映画の脚本チームとして一緒に働いていました。そんな中で、クリストファーが、クラウドファンディング「Kickstarter」で原作のグラフィック・ノベルを見つけたんです。衝撃を受けた彼は、僕とジョー、スティーヴンにも紹介しました。その時に見たイラストは、わたしたちの心をつかんで離しませんでした。

とても素晴らしく、神秘的で広大な世界観や、こだわり尽くされたディティールの中心に、姉弟の奇妙な絆が描かれていて、多くのインスピレーションをもらったんです。長い時間がかかりましたが、わたしたちの想像がどんどん膨らんでいき、今回の映画化に至りました。

――本作の舞台は1990年代です。この時代にどんな魅力を感じ、作品に落とし込んでいったのでしょうか?

ジョー・ルッソ(以下、ジョー):1990年代といえばテクノロジーの転換期でした。また、原作のグラフィック・ノベルが素晴らしいのは、“わたしたちの生活をテクノロジーが本格的に支配し始めた1990年代”を舞台にしていることと考えます。この2つの時代を並行して考えることに、とても面白みを感じたんです。というのも、複雑で現代的なテーマを語る時、現在から少し距離を置いた物語の方が描きやすいことがあるんです。それが、わたしたちがこの時代設定を魅力的に感じた理由でした。なので、この時代に観客を没入させ、同時に映画のエンターテイメント性を維持することも重要だと思いました。また、90年代の技術的な制約を受けたロボットたちが、本作の魅力を格上げする要因にもなっていると思います。

――原作から追加したロボットはどれくらいいるのでしょうか?

ジョー:ほとんどのロボットはグラフィック・ノベルに基づいていますが、2時間の映画を作るためによりディティールが必要になりました。原作は素晴らしいのですが、イラストの数が限られているんです。なので、この世界でテクノロジーがどのように存在しているのか、どんな見た目をしているのかを探求する必要がありました。

そして、わたしたちは<ウォルト・ディズニーがロボットを活用し始めた>というアイデアを思いつきました。なので、ロボットたちはカートゥーン的な魅力があり、脅威を感じない見た目をしています。この世界にとって、ロボットを買ったり使ったりする人たちにとって、怖さを感じさせないデザインであることが、理にかなっているように思ったんです。

ミリー・ボビー・ブラウンとクリス・プラットが、ショッピングモールに到着してロボットたちと出会うシーンでは、フレームの中に数十体のロボットが登場しますが、そのすべてが今回のための新しいロボットなんです。

アンソニー:ちなみにクリストファー(ウディ・ノーマン)が操作しているコスモは、グラフィック・ノベルからです。

――その中から、お二人がお気に入りのロボットを選ぶとすれば?

アンソニー:そうですね。どれもそれぞれ異なる理由で好きなのですが、強いて言うならペニーパルです。郵便配達のロボットである彼女は、すごくユニークで個性的なんです。ペニーの声を担当したジェニー・スレイトは、コメディー俳優で、彼女はキャラクターに素晴らしい命を吹き込んでくれました。

ロボットたちの多くは、次第に人間に与えられた目的以外の興味を持ち、役割以外のことも行ってきたというバックグラウンドを持っています。でも、ペニーは郵便配達をするのが大好きで、それが彼女のやりたいことのすべてだというところが気に入っています。ペニーはとても面白くて魅力的です。ジョーは?

ジョー:僕は野球ボールを投げるポップフライです。彼は本当に面白いですね。

――劇中、90年代の音楽が流れる中で、ダンジグやザ・クラッシュが流れてきたのも印象的でした。

ジョー:クリスが演じたキーツは、90年代ではなく、70年代と80年代に子ども時代を過ごしたキャラクターだったので、彼のシーンでは、同年代の音楽を使いました。彼は多くの点で過去にしばられたキャラクターで、世界で何が起きているかにうといように感じさせたかった。なので、彼の場面では、いくつかの古い音楽や楽曲を持ち込みました。

――『アベンジャーズ/エンドゲーム』と同様、本作のクライマックスでは大規模な戦闘シーンが描かれますが、演出上のこだわりはありますか?

アンソニー:わたしたちは、やっぱり、登場人物が大きな出来事のために動き、その出来事が時に世界の生存に関わるような結果をもたらすといった、壮大なストーリーテリングをしたいんです。キャラクターの個人的な運命が人類のより大きな運命とつながっている物語を作る方法を見つけようと試みます。

例えば、この映画のクライマックスでは、ミシェル(ミリー)が、長い間囚われて苦しんでいる弟のクリストファーを必死に助け出そうとするシーンがあります。また、キーツとロボットのハーマンが、ミシェルを助けるために協力し、自分たちも生き延びるために戦いながら、お互いを失う可能性に直面しなければいけない瞬間もあります。こういったパーソナルな物語が、世界を救うための大きな戦いの下で進行していくのです。

ロボットたちがミスター・ピーナッツの指導により、戦争でロボットたちを打ち負かしたイーサン・スケイト(スタンリー・トゥッチ)に復讐を試みますが、この腐敗したイーサンは、クリストファーに対しても不当な扱いをしています。要するに、個々が抱える課題同士が、戦いによって結びついているんです。

まずはセンターを制圧し、次にクリストファーをセンターから救い出し、最後にセンターの計画を永遠に止めるという目標がありますが、これがわたしたちが求めるものなのです。個人的な物語と世界の運命が壮大なストーリーテリングの中でリンクするのが大好きなんです。

(取材・文:阿部桜子)

 映画『エレクトリック・ステイト』はNetflixで独占配信中。
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