<『おむすび』最終週>大胆さと繊細さが共存する仲里依紗は「無敵」【宇佐川隆史統括インタビュー】

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2025年03月26日 08:10  クランクイン!

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連続テレビ小説『おむすび』第123回より (C)NHK
 半年にわたり放送された連続テレビ小説『おむすび』が、まもなくフィナーレを迎える。先週の放送では、結(橋本環奈)が勤務する病院に、歩(仲里依紗)の中学時代の親友で阪神・淡路大震災で亡くなった真紀ちゃん(大島美優)にそっくりな詩(同)が入院。詩の存在が、歩と結の人生に新たな局面をもたらしている。姉妹や親子の確執を乗り越えた米田家の前に、なぜ詩が現れたのか。そして、ドラマのテーマであるギャル魂を体現してきた姉・歩を演じきった仲の熱演について、宇佐川隆史統括に話を聞いた。

【写真】真紀ちゃんにそっくりな詩

■詩は“今”を象徴する存在

Q:真紀ちゃんにそっくりの詩ちゃんの登場に驚きました。

宇佐川統括: 歩にとっても、結にとっても、このドラマにとっても、詩ちゃんは“今の世界”を象徴する存在だと思うんです。つまり、現在や未来に対する不安を体現しているキャラクターですね。今の日本の状況と重ねながら、米田家や管理栄養士としての結がどのように向き合っていくのかを描きたかった。それが詩が登場した理由です。最終週ですが、結たちの日常はこれからも続いていく。私たちの日常が決して終わらないように。ドラマの都合に無理に合わせず登場してもらいました。

詩というキャラクターが生まれた後に、詩が真紀と似ているというアイデアは出てきました。大島さん演じる真紀ちゃんの存在が、このドラマにとって非常に大きかったんです。私たちは、できる限りリアルなドラマを作ってきましたが、一方で、ドラマだからこそできる表現もあると考えました。真紀ちゃんに似た子と歩が、震災の先の未来を生きていくという世界線を提示できるのは、ドラマならではの力ではないかと。

■仲里依紗の無敵の存在感

Q:歩を演じた仲里依紗さんも、ドラマにおいて大きな存在でした。

宇佐川統括: 仲さんの演技は本当に素晴らしかったですね。彼女は、麻生さん演じる母親・愛子とは実年齢が11歳しか離れていませんが、それでもお芝居の力で、親子として成立すると信じていました。

今回のドラマのテーマや背景は、決して簡単なものではありません。物語自体は分かりやすくしていますが、その裏にある心情や背景は非常に難しいものがあります。だからこそ、米田家を演じるキャストは相応の方にお願いしたいと考えていました。その中で、仲さんと麻生さんの組み合わせは、実年齢を超えたものとして必要なキャスティングだったんです。

オファーの際には、年齢差はそこまでないかもしれませんが、ぜひお願いしたいですと率直にお伝えして。こちらが想像する以上に、相当な覚悟を持って受けてくださったと思いますし、その壁を現場では楽しみながら乗り越えてくださいました。仲さんは、大胆さと繊細さが共存している女優さんです。そのバランスが絶妙で、まさに「無敵」だなと感じました(笑)。

Q:確かに、画面からも無敵感が伝わってきました(笑)。

宇佐川統括: 今回のドラマは、パワフルな俳優さんがたくさん出演してくださったんですよね(笑)。ヒロインの結を演じた橋本さんも、座長として本当に頼もしかった。豪快な笑いとともに、まるで人生を何周もしているかのような安定感がありました。だからどんな時も変わらずみんなはついていったし、一緒に歩めたんですよね。

そして、仲さんをはじめ、松平健さん、宮崎美子さん、麻生久美子さん、北村有起哉さんといった存在感のあるキャストが、見事に米田家として調和していました。そこに、天然な翔也(佐野勇斗)、また花が加わることで、より魅力的な家族になったんです。このキャストで米田家を描けて、本当に良かったと感じています。

■最初から「いい家族」を目指したわけではない

Q:家族の描かれ方が、現代的でユニークだと感じました。

宇佐川統括: 理想の家族を描くのではなく、結果的に理想になればいいと思っていました。ベースは現代の価値観に寄り添いながらも、従来のドラマの「当たり前」にとらわれず、今の時代に合った家族像を大事にしました。

もちろん、家族の形は様々です。決して“幻想の家族”を描きたかったわけではなく、「今を生きる家族」をリアルに表現したかった。それは、米田家の呪いのエピソード(永吉が貸したお金が戻らず、息子を傷つけた)にも表れています。誰もが完璧な人間ではなく、正しさだけで語れるものではない。でも、一生懸命生きてきたことは確かです。

Q:最初はギスギスしていた家族が、最後はとても仲良くなりました。

宇佐川統括: 物語を通じて家族がどう変化するのかは、視聴者にとって見どころのひとつだと思います。ただし、最初からいい家族を作ろうとしたわけではなく、現代の家族の在り方や、平成を生き抜いた家族の中にどんな希望があるのかを、作りながら見つめていきました。結果的に、俳優陣の力も加わり、「いい家族」になったのではないかと思います。そこには、単なる理想や作り物の幸せではなく、今に対してのリアルな希望が込められていると思います。聖人君主ではないけれども、人が困っていたら助ける。できるようでできない、この矜持と共に、これからも米田家はたくましく生きていくと思います。

■大人と子供が会話できるドラマにしたかった

Q:改めてドラマを振り返ると、結がむすんだ縁や絆は、派手なものではありませんでしたが、エピソードのひとつひとつの中で登場人物たちの個性が立っているのが印象的でした。ある意味全員がヒロインのようにも見えました。

宇佐川統括: そうですね。大前提として、今回はすべての登場人物が「自分の人生の主人公」であると考えました。だからこそ、主人公のために動くということは極力せず、それぞれが自分の人生を生きているように描きたかったんです。

結の行動は、バタフライエフェクトに近いかもしれません。彼女がむすぶ縁が、巡り巡って別の形で作用する。これは「情けは人の為ならず」という言葉にも通じます。結だけの物語ではなく、登場人物全員が輝くことで、物語全体が輝き、その結果、結も中心で輝くのだと思います。

Q:脚本の根本ノンジさんとは、どのようなディスカッションをされましたか?

宇佐川統括: 根本さんは、子供から大人まで楽しめる朝ドラの原体験を持っている方です。今はSNSで多くの意見が飛び交い、朝ドラも正解のような形が求められていますが、「いろいろな朝ドラがあっていい」と思っています。

「大人と子供が一緒に楽しめて、世代をこえて会話ができるようなドラマ」を目指してやってきましたが、ハイブローなテーマをエンターテインメントとして昇華するのは、根本さんならではの力です。米田家の人生をここまで深く描いてくれたことに、心から感謝しています。

(取材・文:川辺想子)

 連続テレビ小説『おむすび』はNHK総合にて毎週月曜〜土曜8時ほか放送。

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  • 気は確かか・・・? こんなドラマを生み出しておいて、何も反省しない制作陣に、狂気を感じるんですけど・・・
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