ミニ肝臓の長期培養成功=3カ月以上、ヒトiPSから作製―東京科学大
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2025年05月14日 00:31 時事通信社

東京科学大などの研究チームは、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、肝臓が持つ主な機能を備えたミニ臓器(オルガノイド)を作製することに成功したと発表した。胎児の肝細胞に近い性質を維持したまま、3カ月間以上の培養に成功した。論文は13日付の米科学誌「セル・リポーツ」に掲載された。
肝臓は栄養素の貯蔵や有害物質を解毒する働きを持つ。iPS細胞から精巧なオルガノイドを作製した例はすでに報告されているが、研究チームによると、肝細胞の性質を保ちつつ長期間培養することは困難という。
東京科学大大学院の柿沼晴教授と朝比奈靖浩教授らは、主に脂肪の消化や吸収を助け、正常な肝細胞を増やすシグナルとして働く胆汁酸に注目。iPS細胞を含む培地に合成胆汁酸を投与したところ、毛細胆管構造などを備えたオルガノイドが形成され、肝細胞で作られるたんぱく質「アルブミン」を含む遺伝子の働きが活発化した。
このオルガノイドはブドウの房に似た形態で、胎児の肝細胞に類似した性質を持つ。肝炎ウイルス感染後に一定期間を経て発症する肝臓病の病態解明などが期待されるという。柿沼教授は「培養条件をさらに磨き、他の細胞と組み合わせた新しい肝臓オルガノイドを開発することも検討したい」と話している。
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