「ゆであがりました!」公園のシンボル・タコ形遊具ができるまで “エイリアン”から記者が追った5カ月の軌跡「こうやってできてたのか」

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2025年05月14日 12:00  まいどなニュース

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半世紀の間親しまれた初代タコ形遊具=2024年9月(大久保体器提供)

 真っ赤なタコ、“ゆで上がり”ました―。住民らから「タコ公園」の愛称で親しまれている岡山市北区蕃山町の西中山下公園で、昨秋から更新工事が進められていたタコ形の大型遊具が完成した。昨年11月、公園にタコの骨組みが出現し「ビル街に巨大エイリアン!?」とSNSなどで話題に。3月末に完成するまで、記者がたびたび現場に足を運び、出来上がっていく様子を記録した。

【写真】これは希少!タコの形に組み上げられた鉄骨

 「岡山市内の公園に変な構造物がある。あれは何?」

 そんな情報が寄せられたのは昨年11月中旬。記者が現場を訪れてみると、むき出しの鉄筋の巨大な物体が。よく見ると以前そこにあったタコ形滑り台のよう。公園を管理する岡山市に問い合わせたところ、老朽化した先代の更新工事をしているという。

 先代のタコは半世紀ほど前に造られ、地域の子どもたちに親しまれてきた。老朽化のためどうするかと市から相談された地元町内会は「次も同じようなタコ形遊具を」と要望したという。

 更新工事は昨秋始まり、鉄筋が組み上がったのが11月末。エイリアンのような外観に立ち止まって眺めたり、写真を撮ったりと、地域住民らは興味津々で工事を見守った。

 12月16日に様子を見に行くと、すでにモルタルでタコの姿が出来上がっていて頭は赤く塗られていた。その後、何度も丁寧に色を塗り重ねる作業が続き、1月下旬にはほぼ完成形となった。

 完成したタコは高さ4・5メートル、幅10・9メートル、奥行き5・6メートル。先代とほぼ同じサイズで、吸盤の付いた長い足がそれぞれ滑り台になっている。

 同級生らと遊びに来た岡山中央小1年児童(6)は「とっても楽しい。階段ができて上り下りしやすい」。母親(37)は「滑り台が緩やかになって安心です」と話した。

 タコは公園北側の岡山中央中の生徒の格好の遊び場に。1年生生徒4人は「形が複雑で、鬼ごっこに最適。きれいになってうれしい」と喜んでいた。

 住民や関係者の熱い思いを背負って生まれ変わった「タコ」。公園の中心で子どもたちの笑顔を見守り続けることだろう。

タコ形遊具 全国で根強い人気 職人が仕上げる“芸術作品”

 全国でタコ形遊具のデザインや施工を手がける「アンス」(東京)によると、タコ形遊具は1965年、東京都内の公園に初めて設置され、その後各地に広まったとされる。現在、全国に200〜300基あり、その多くが更新時期を迎えている。

 タコ形遊具の更新には、既存遊具の解体を含めると1基数千万円かかる。硬いモルタルに頭や体をぶつけると危険といったイメージもあり、更新時には複合遊具が選ばれることが少なくない。

 それでも根強い人気がある。公園のシンボルになり公園自体が「タコ公園」と呼ばれ、西中山下公園のように、住民が同じタコ形で更新を希望するケースもみられる。東京都や山形県では更新工事の前に「お別れ会」が開かれたという話もある。

 アンスの中丸善夫営業部長は「単純そうで複雑な形状で、回遊性もあり子どもは迷路のように楽しめる」といい「職人が一つ一つ現場で仕上げる“芸術作品”。表情の違いも楽しめます」と教えてくれた。

 西中山下公園のタコは岡山市が大久保体器(同市東区鉄)に依頼。アンスが施工を任された。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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