2025年F1第6戦マイアミGPスプリントのトップ3会見 ランド・ノリス(マクラーレン)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ルイス・ハミルトン(フェラーリ) FIAは、F1をはじめとするトップカテゴリーのドライバーが罵り言葉を発するなどの不適切な行為をした場合に科す処罰を大幅に軽減、罰金額を半分に引き下げることなどを決めた。一方で、オフィシャルへの侮辱に対しては、グリッドペナルティかタイムペナルティを科す選択肢を導入した。
2024年F1シンガポールGPの前に行われた公式記者会見において、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はFワードを使用した後、社会貢献活動を命じられ、その制裁が物議を醸した。しかしその後、FIAは暴言禁止を国際モータースポーツ競技規則(ISC)の附則Bに追加した。この規則変更により、不適切な言葉を使用した者には多額の罰金や出場停止、一部ポイント剥奪が科される可能性があることが定められた。
これに対して大きな反発が寄せられたことを受け、FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、4月、この規定を変更する可能性を示した。
そして5月14日、FIAは、国際モータースポーツ競技規則附則Bの大幅な改定を発表した。ビン・スライエムFIA会長が、包括的な見直しを主導したということで、「この見直しは、FIAドライバー委員会およびその委員長であるローナン・モーガン、ならびにFIA F1スチュワードの代表ギャリー・コネリーとの協力のもとで実施された。さらに、FIAメンバークラブやFIAが管轄する7つの世界選手権に属する他のモータースポーツ組織からも意見が寄せられた」とFIAは述べている。
スチュワード向けの新たなガイドラインは、『管理されていない』環境と『管理された』環境で発言されたコメントの違いを認識する内容となっており、ドライバーに科されるペナルティは大幅に軽減される。
具体的には、主な変更点として以下が挙げられた。
●基本となる最大ペナルティは、概ね1万ユーロ(約160万円)から5000ユーロ(約80万円)へと引き下げられた。これは50パーセントの削減である。ただし、乗数が適用されているFIA世界選手権においては、さらに大幅な削減が行われることになる。
●スチュワードは、違反がドライバーまたはチームにとって初回である場合に限り、特定の種類の違反に対するペナルティを全面的に猶予する選択肢を持つ。
●世界モータースポーツ評議会(WMSC)による電子投票での承認後に、改訂された附則Bは、スチュワードが『管理された』環境と『管理されていない』環境を区別できるようにし、両者で使用された言語の違いを事実上認識するものとなる。『管理された』環境には記者会見などが含まれ、『管理されていない』環境にはコース走行中やラリーステージ中など、ドライバーまたはチームが衝動的に発言する場面が含まれる。
●附則Bの適用においては、引き続き情状酌量の事情が考慮されることとなり、すべての関係者に対する一貫性および公正性を促進するための追加的なガイダンスも用意される。
●オフィシャルに対する侮辱は、罰金ではなくスポーツ上のペナルティによって処分されることとなり、これによってモータースポーツは他の主要な国際スポーツ組織と足並みをそろえる形となる。
●人種差別的および差別的な発言については、今後も厳正に対処される。
なお、ISC違反があった場合、どのペナルティを科すかについての最終的な判断権限は、スチュワードが引き続き保持することも確認された。
FIAドライバー委員会委員長のモーガンは、今回の変更について、次のようにコメントした。
「ドライバーは若いファンからロールモデルとして見られており、モータースポーツ全体のアンバサダーとして正当に評価されている。彼らの行動は本当に重要だ。しかし、レース中の発言と記者会見での発言との間には違いがあることを認識することもまた重要である。本日の変更は、競技中のプレッシャーを理解することで、ドライバーを支援しつつ、FIA国際モータースポーツ競技規則をさらに強化するものである」
F1スチュワードの代表であり、世界モータースポーツ評議会委員を務めるコネリーは、「改訂された附則Bは、スチュワードがオン・トラックとオフ・トラックの問題を区別するための効果的な指針を得られることを確実にするものである」と述べた。
「私は、スチュワードが今後も情状酌量の事情を考慮する全権を保持し、特定の状況に対して公正にペナルティを適用することができるようになる点を非常にうれしく思っている。特に、そのドライバーの状況を考慮に入れることが可能となる。これらの変更は、すべての年齢層のファンがモータースポーツを楽しめるようにし、また我々全員の努力によってこのスポーツを世界中でさらに発展させることを可能にするだろう」
ビン・スライエムFIA会長は、自身がこの変更を主導したことを強調した。
「私は元ラリードライバーとして、競技中に直面するさまざまな感情を身をもって知っている。私は、7つのFIA世界選手権、FIAメンバークラブ、そして他のモータースポーツ組織からの意見を広く取り入れ、徹底的かつ協力的な見直しを主導した」
「本日FIAが発表した附則Bの改訂は、モータースポーツにおけるスポーツマンシップの精神を引き続き推進することを確実にし、同時に、競技に対して不名誉をもたらす可能性のある個人に対して、スチュワードが効果的に対処できるためのガイドラインを提供するものとなる」
「FIAは常に、モータースポーツが我々のスポーツのファミリーすべてにとってアクセス可能であることを確実にすることに尽力していく」
[オートスポーツweb 2025年05月15日]