第78回カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに登場した映画『遠い山なみの光』キャスト・スタッフ一同 (C)Kazuko Wakayama 「第78回カンヌ国際映画祭」の「ある視点」部門に正式出品された、石川慶監督による映画『遠い山なみの光』(9月5日公開)のワールドプレミア(世界初上映)となる公式上映がフランス現地時間15日、THEATRE DEBUSSY(ドビュッシー劇場)で行われた。
【画像】映画『遠い山なみの光』カンヌで撮影されたそのほかの写真 今回、石川監督、原作者でありエグゼクティブ・プロデューサーのカズオ・イシグロ氏、キャストの広瀬すず、吉田羊、カミラ・アイコ、松下洸平、三浦友和の7人がカンヌ入り。広瀬にとっては、是枝裕和監督の『海街diary』(2015)以来10年ぶり2度目のカンヌ。吉田、松下、三浦にとっては初のカンヌ参加となる。イシグロ氏も、1994年に審査員として参加して以来、出品者としては初のカンヌ。石川監督にとっても、今回が初のカンヌとなった。
公式上映前の舞台あいさつでは、石川監督が感無量の面持ちで登壇。「今日は、ずっとこの映画を支えてくれたイシグロさん、スタッフ・キャストの皆さん、そして朝から来てくれた観客の皆さんとこの時間を共有できて、とても嬉しく思います。僕自身も一観客として楽しみたいです」と感謝を伝えた。
そして、カンヌ映画祭総代表のティエリー・フレモー氏の突然のマイクパスに、イシグロ氏も笑顔で応じた。「これは台本になかったんだけど(笑)」と笑わせつつも、「この映画は、私が25歳のときに書いた“ひどい本”が原作です(笑)。でも、ひどい本が素晴らしい映画になる──映画にはそういう奇跡があります。石川監督の企画を聞いたとき、直感で“これは美しい映画になる”と確信しました。そして、それは正しかった。だから、次のひどい本を書こうと思っています」と、ユーモアと知性あふれるスピーチで会場を沸かせた。
本編上映が終わると同時に、場内は大きな拍手に包まれ、スタンディングオベーションが5分間続いた。エンドロールが流れ始めるや否や拍手が起こり、明かりがつくと観客は一斉に立ち上がって石川監督たちを祝福。キャストと石川監督、イシグロ氏も熱く抱き合い、堅い握手を交わしながら、世界最高峰の舞台の熱気を存分に味わっている様子だった。
■フォトコール&レッドカーペットの衣装をチェック
公式上映に先立ち、青空が広がるカンヌの海辺で行われたフォトコール時には、キャスト陣のファッションが、世界中のカメラマンから視線を集めた。広瀬はルイ・ヴィトンの白いノースリーブドレスで登場。「ヒロセ!」「スズー!」といった呼びかけに手を振って笑顔を見せていた。
吉田は、赤と白の“寿ぎ”着物スタイルで登場し、日本らしさを象徴する装いで注目を浴びた。松下はアルマーニ、三浦はHUGO BOSSのタキシードをそれぞれスタイリッシュに着こなし、撮影の最後には大きな拍手が起こるなど、終始にぎやかな雰囲気に包まれた。
石川監督はプラダのフォーマルスーツで登場し、ノーベル文学賞作家であり原作者でもあるカズオ・イシグロとともに、リラックスしたムードで2ショット撮影に応じていた。
同日夕方には、13日に実施されたオープニングイベントで、今年のカンヌ映画祭の審査員長を務めるジュリエット・ビノシュや名誉パルムドールを授与されたロバート・デ・ニーロ、レオナルド・ディカプリオにクエンティン・タランティーノなど、世界を代表する映画人たちが歩いたばかりのカンヌの象徴たるレッドカーペットを歩いた一同。
昼間のフォトコールから装いを新たに、ゴールドの大きなタフタが片袖についた黒のルイ・ヴィトンのドレスを身にまとった広瀬。新人俳優として16歳で初めてカンヌの地を踏んでから10年。着実にキャリアを重ね、今度は主演俳優として2度目のレッドカーペットに舞い降りた広瀬も、満面の笑顔で中心に立ち、圧巻の存在感を見せていた。
吉田は、映画が世界に羽ばたいていくようにとの願いを込めて選んだという鶴が大きく羽を広げた姿が印象的なアンティークの着物を凛と着こなし、カミラ・アイコはすらりとした高身長を活かしたタキシード風パンツスーツで登場した。