第78回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された『ルノワール』チーム(左から)リリー・フランキー、鈴木唯、早川千絵監督、石田ひかり フランスで開催中の「第78回カンヌ国際映画祭」(5月13日〜24日)で、コンペティション部門に選出された唯一の日本映画『ルノワール(英題:RENOIR)』が、現地時間17日、パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ内のリュミエール劇場で世界初上映された。
【画像】カンヌで撮影された『ルノワール』チームのそのほかの写真 本作は、『PLAN 75』で注目を集めた早川千絵監督が脚本も手がけた新作。上映には早川監督に加え、主人公フキ役の12歳・鈴木唯、フキの両親役の石田ひかりとリリー・フランキー、そしてプロデューサー陣が出席した。
なかでも鈴木は、主演女優賞を受賞すれば14歳で主演男優賞に輝いた柳楽優弥を上回る、史上最年少での快挙となる可能性もあり、現地メディアから大きな注目を集めている。パルム・ドールなどの受賞発表と授賞式は、現地時間524日に行われる。
快晴のレッドカーペットでは、LEMAIRE(ルメール)黒のワンピース姿の早川監督に続いて、鈴木はコム・デ・ギャルソン ガールの白色のジャケットに、コム・デ・ギャルソンの赤色が映えるチュール&コットンのスカートで登場。石田は金とピンクの桜模様があしらわれた着物で華を添え、リリーはベルルッティのミッドナイトブルー色のタキシードにサングラスを掛けて登場し、カンヌ常連の貫録を見せた。
レッドカーペットに登場する直前、鈴木は高揚感をおさえきれず飛び跳ねる、無邪気な様子を見せ、現地カメラマンから歓声が上がる一幕も。その後、堂々とした笑顔でメディアの呼びかけに応じながら歩き、リリーにエスコートされながら階段をのぼる姿も印象的だった。
公式上映会場のリュミエール劇場は満席に。本編終盤のエンドロールに差しかかると拍手と歓声が起こり、上映後には約6分間にわたるスタンディングオベーションが沸き起こった。
上映後の囲み取材で早川監督は、「映画祭の会場で一番大きいリュミエールでの上映は初めてで、場内の熱気に胸がいっぱいになりました」と語った。
初の国際映画祭参加となった鈴木は、「俳優を始めてたった2年でカンヌに来られて驚いています。自分が想像していた以上に、観客の皆さんがワァーと反応してくれたり、“ユイ”って声を掛けてくれたり、(今までに自分が)見たことがないぐらいの数の人に映画を観てもらえてすごくうれしかったです」と喜びをにじませ、「経験したことがないことばかりでびっくりしたけれど、本当にうれしくて、身体の底から感動しました」と笑顔を見せた。
石田は、「35年の俳優人生で初の海外映画祭参加でしたが、観客の熱量やクレジットにまで拍手が起きる様子に、映画に対する真摯(しんし)さと温かさを感じました」と感慨深げ。
リリーも「この映画のすばらしさが前評判として観客に伝わっていたと思うが、真剣に映画を観ていることがひしひしと感じられました」と上映中の様子を述べ、「スタンディングオベーションをいただけるのはうれしいのですが、いつも座持ちがしないなと思っていたんです。でも、唯ちゃんが居ると何分でもできるなって、楽しかったです」と茶目っ気たっぷりに振り返った。
鈴木の演技について石田は、「ただそこに“存在する”力がある子。とても素敵だと思います」と評価。リリーも「撮影当時11歳で、何かになりかけている、その一瞬の夏を監督が切り取ったからこその生々しさと彼女の演技力がすごくマッチしている。演技だけではなかなか成立しない魔法の一瞬を早川監督が収めた、稀な映画だと思います」と絶賛した。
早川監督の印象についての質問に、石田は「“言葉にできない想いを映画にしているんです”と仰っていて、それが早川監督の作品を一番表しているなと、撮影を通して感じました」と答え、鈴木は「優しくて、ほわんとしてて、あたたかい太陽みたいな人」とにっこり。
早川監督は、「子どもに演出をするのは難しいだろうなと覚悟を持って挑んだのですが、唯ちゃん何も言わなくても演技をしてくれて、どうやったらこんな風にできるんだろうなって思うことばかりでした」と、鈴木の才能に感謝。タイトル『ルノワール』については、「『PLAN 75』が割と作品の説明になるタイトルだったので、今回は作品の意味をタイトルに込めたくなかった」とし、海外の観客から「印象派の絵のようだ」と評されたことを「面白い視点だった」と話していた。
同映画は6月20日より劇場公開予定。