「『竜馬におまかせ!』の放送から約30年ですか。当時はトレンディドラマが多かったので、日本テレビのプロデューサーから『時代劇なんだけど、三谷幸喜さんの作品なんだ』と聞いたときは、新しい挑戦ができると思って『ぜひ!』って答えました」
こう振り返るのは別所哲也さん(59)。演じたのは、若き日の坂本龍馬が入門する、一刀流の千葉道場主の長男・千葉重太郎だ。
「前知識が全くなかったし、殺陣をやる必要があるのか、ボクは左利きなので刀の扱いとか大丈夫なのかと不安もあり、プロデューサーには事前に相談していました。三谷さんは役者のキャラに合わせて脚本を作る“あてがき”をする方。あとから聞いた話ですが、日テレの喫茶室でプロデューサーと打ち合わせをしていたとき、こっそり三谷さんがボクを観察していたみたいです(笑)」
主役を務めるダウンタウンの浜田雅功とも、初共演だった。
「ボクはカツラでしたが、浜田さんはパーマをかけた地毛を後ろに束ねていました。新しい龍馬像を作るため、入念にヘアメークをされていたのが印象的です」
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第1話は、別所さん演じる重太郎が中心となる展開だった。
「浜田さんは『こんなん、別所が主役やないか!』と言って、場を和ませてくれました。浜田さんはコントもされているので、アドリブを入れてくると思っていたのですが、意外にも脚本に忠実に作り上げていくタイプでした」
撮影現場は、勝海舟役の内藤剛志、父・千葉貞吉役の伊東四朗などとともに、西村雅彦や阿南健治、梶原善など三谷作品の常連も。
「作品は、ロケがほとんどなく、千葉道場が舞台のワンシチュエーションドラマ。朝から晩まで、撮影待ちの時間は楽屋に帰らず、みんなが前室といわれる役者のたまり場で一緒の時間を過ごしたから、自然と“三谷ワールド”が熟成されていったんでしょうね」
ドラマの後半となれば、三谷の脚本が仕上がるのは撮影の前夜や、撮影当日になることも。
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「脚本が遅れ、一回着た衣装を脱いで、食堂でみんなと次の展開を予想したりしていました」
こうしてドラマの世界観を作っていったからこそ、最後は“重太郎”になりきることができた。
「竜馬との別れのシーンで、ボクは感情が抑えられず、が止まらなくなってしまって……。迷惑かけてしまったと思ったんですが、伊東さんは『すごくいいものを見せてもらった』と言ってくださり、浜田さんは何も言わずポンポンと肩をたたいてねぎらってくださったのが、いちばんの思い出です」
『竜馬におまかせ!』(日本テレビ系・1996年)
実在の坂本龍馬と仲間たちを題材にしているものの、竜馬が関西弁を使うなど史実とはかけ離れた三谷幸喜脚本のコメディドラマ。時代劇ファンから抗議が殺到したが、青春ドラマとしては秀逸! サプライズで町娘役で登場する“松ちゃん探し”も楽しみだった。
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【PROFILE】
べっしょ・てつや
1965年生まれ、静岡県出身。1987年、慶應義塾大学在学中にミュージカルで俳優デビュー。また、1990年にはハリウッドデビューも果たす。映画やドラマ、舞台だけでなくラジオDJとしても活躍。
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