<陸上:セイコー・ゴールデングランプリ(GGP)>◇18日◇東京・国立競技場◇男子100メートル決勝
昨年のパリ五輪男子400メートルリレー日本代表の柳田大輝(21=東洋大)が、10秒06(追い風1・1メートル)の好記録で優勝した。9月の世界選手権東京大会の参加標準記録(10秒00)は突破できなかったが、19年世界選手権金メダリストのクリスチャン・コールマン(米国)らを抑えて連覇を達成。日本のエース、サニブラン・ハキーム(26=東レ)が欠場したレースで“次代のエース”をアピールした。
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レース展開は頭になかった。コールマンやミラーの姿も見なかった。「60メートルで決着をつける」。柳田はそれだけを考えて左端の第1レーンから飛び出した。スタートのリアクションタイムは最速。何かに弾かれたような勢いで、ゴールまで駆け抜けた。
「スタートが自分の生命線。そこがうまくいけば最後まで転がるように走れる。その通りになった」。レース後は、してやったりの顔で声を弾ませた。
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スタート強化のためにオフに練習に芝生を走るメニューを取り入れた。「ふくらはぎや足首が固められていないと、スタート時に無駄な弾みができてしまうから」。そのために100メートル10本を毎日2セット。柔らかい芝生を踏みしめて走った。優勝は冬場の地道な鍛錬の成果でもあった。
今月9日の関東インカレを追い風4・5メートルの参考記録ながら9秒95で制した。その9秒台の体感も背中を押したという。「風に押されてスタートしたあのスピード感を思い浮かべながら走れた。体が勝手に反応してくれた感じがした」。
もっとも思い通りのレースにも本人の採点は「80点」。「20点足りないのは1・1メートルの追い風なのに標準記録を切れなかったから。100点なら10秒を切ることができる。(7月の)日本選手権(世界選手権選考会)で100点のレースをすればいい」。目標はあくまで10秒の壁。
昨年のパリ五輪は100メートル代表の有力候補に挙げられながら、最終選考会の日本選手権で3位に終わり、リレーメンバーとして出場した。そこで見た世界最高峰の戦いに刺激を受けた。「9秒台を出して、さらにもう一段階上げる実力がないとファイナルで走ることができない」。目標が五輪出場から「世界のファイナル」に変わった。
この日の決勝直前のウオーミングアップで、サニブラウンが足の違和感を訴えて欠場した。注目の第6レーンから“大会の顔”が消えたレースで、第1レーンの21歳が日本のエース候補に名乗りを上げた。「今度は真ん中のレーンを走って、ハイレベルなレースに勝ちたい」。柳田は9月の世界選手権で真の主役の座を狙っている。【首藤正徳】
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