メルカリが5月21日、不正利用を撲滅するための施策を発表した。
メルカリは2300万人が利用し、年間の流通総額は1兆円に達するほど巨大なプラットフォームに成長しているが、その一方で、不正行為が増加しつつある。具体的には、不正ログインによるなりすまし、不正な商品の出品、商品を搾取する詐欺行為など。
2024年11月には、商品すり替え詐欺がSNSで話題を集めた。この詐欺の手口は、メルカリで商品を売却後、購入者から破損しているので返品してほしいという要求があり、返品したところ、全く別の商品が送られてくるというもの。代金は返金済みなので、出品者は商品をだまし取られたことになる。
当初、メルカリはこうしたトラブルに対し、購入者と出品者間で解決してほしいというスタンスを取ることが多かった。被害者の救済措置が不十分で、メルカリ事務局に対する不満が噴出していた。そこでメルカリは、ユーザー間での解決が難しい問題に対処すべく、サポート体制の強化と補償方針の見直しを2024年11月に発表。2025年3月には、高額商品の出品には本人確認(eKYC)を必須化した。
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また、国内の詐欺犯罪の認知件数は3年連続で増加しており、2024年の詐欺被害総額は約3075億円に上り、認知件数は2020年の3万468件から約2倍の5万7324件に増加している。メルカリで起きた詐欺の件数は非開示だが、詐欺の手口は多様化しているという。
こうした状況を踏まえ、メルカリは詐欺対策をより強化する。
●AIを活用して不正利用者を排除、「メルカリ鑑定センター」設立も
新たな方針として掲げるのが、不正利用者の「徹底的な排除」とユーザーの「徹底的な救済」だ。
不正利用者を排除すべく、AIを活用して不正利用の監視を強化する。AIに疑わしい行為を学習させて不正のリスクをスコア化し、不正利用者を特定。不正利用者に対しては、アカウントの利用制限、刑事事件化、民事訴訟、損害賠償請求などの対応を行う。なお、ここでのスコアはメルカリ内部で共有し、一般ユーザーには見えない。一般ユーザーはこれまで通り、評価やレビュー数などで判断する形になる。
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さらに、メルカリ内で偽ブランド品を撲滅するために「メルカリ鑑定センター」を2025年9月めどに設立する。鑑定可能な商品を増やし、対象商品の鑑定義務化も検討する。鑑定された商品は購入者が分かるように開示し、万が一鑑定に不備があった場合はメルカリが全額を補償する。
鑑定を義務化する商品やジャンルなどの詳細は、今後開示していく。メルカリは現在も「あんしん鑑定サービス」という有料のオプションサービスを提供しているが、あんしん鑑定サービスの対象商品だけでなく、メルカリ鑑定センターでは要望があれば、より幅広い商品の鑑定義務化も検討化していく。
●7月以降「全額補償サポートプログラム」を提供
ここまでは、メルカリの詐欺被害を未然に防ぐための対策だ。しかし、上記の対策をもってしても、詐欺に遭う可能性はある。そこで、万が一詐欺の被害に遭った場合、購入代金や販売利益の全額を補償する「全額補償サポートプログラム」を提供する。提供時期は2025年7月を予定している。これをユーザーの徹底的な救済に掲げている。
全額補償を受けるためのガイドラインも公開予定で、本人確認が済んでいるか、他の取引で問題が生じていないか、といった条件を定めていく。補償金額の上限は設けておらず、メルカリ側が負担する。
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今後は、メルカリで発生している不正利用の状況や、各種取り組みの効果を可視化した「透明性レポート」を定期的に開示し、外部機関との連携も強化していく。
●トラブルが発生したら「積極的に関与する」スタンスに変える
いくらメルカリが詐欺対策を強化したといっても、「トラブルに遭った際、本当に迅速に対応してくれるのだろうか」と不安に思う人もいるだろう。メルカリは2024年11月に発表した「体制強化と補償方針」の中で、「お客さま間で解決が難しい問題に、より関与し早期解決」することを明言しているが、それでも、メルカリ事務局が迅速に対応しているとはいいがたい。
ナカヤマユウショウ氏の記事でも触れているが、2025年時点でも、ナカヤマ氏が詐欺に遭ったにもかかわらず、メルカリは出品者とのやりとりを求め、ナカヤマ氏の事案がSNSやテレビで話題になってから返金をするという対応があった。
このように、救済措置が後手に回っている点はメルカリ側も認識しているようで、「これまで、トラブルが発生した際、お客さま同士でのトラブル解決を基本としきたが、今後は積極的に関与する」と、メルカリ 執行役員 CEO Marketplace迫俊亮氏は述べる。これは取引終了後に限らず、「取引の途中でも、速やかに踏み込んで対応する」とのこと。
「今まではかなりの回数、お客さま同士でやりとりをする必要があったが、もっと早いタイミングでメルカリが介入して、トラブルを早期に解決する」(迫氏)
迫氏は今回の「積極的に関与すること」=「スタンスを変えること」との認識を示す。「SNSの事案に限らず、多くの人から意見を頂戴している。根本にあるのが、不正利用の脅威や手口が拡大していること。われわれ自身が2300万人を超えるお客さまを抱えるサービス規模に拡大していく中で、(メルカリが)犯罪が多様化する場所にもなっている。これまでよりもスタンスを変える必要があると考えている」(迫氏)
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