「iPhoneのマイナンバーカード機能搭載」で何が変わる? Androidとの違いやメリットを解説

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2025年05月22日 11:31  ITmedia Mobile

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スマートフォンにマイナンバーカードが搭載されれば、物理カードの持ち歩きも不要になる

 マイナンバーカードは、物理的なカードを使った本人確認書類としての機能と、電子証明書を使ったオンラインの本人確認機能を備えている、日本で唯一の公的な身分証明書だ。今後、銀行口座の開設や携帯電話の契約などで本人確認が厳格化される見込みだが、そうした状況でもマイナンバーカードであれば対応できるというメリットがある。


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 さらに、現在進められているのがマイナンバーカードの機能をスマホに搭載しようという動きだ。5月にも、iPhoneにマイナンバーカードが搭載される見込みで、さらなる利便性の向上が期待されている。


●2段階で進むiPhoneへのマイナンバーカード機能搭載 対応サービスの拡大にも期待


 マイナンバーカードのスマートフォン搭載は、2段階で進められている。第1弾として登場したのが「スマホ用電子証明書」で、Androidスマートフォンにマイナンバーカードの電子証明書を搭載し、スマートフォン単体でオンラインの本人確認を実現した。


 そして第2弾として進められているのが、「マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載」だ。これは現時点でiPhoneが対応する予定で、今春の終わり頃の提供開始とされている。少なくとも現時点でデジタル庁はスケジュールに変更はないとしており、恐らくは5月中に提供開始される見込みだ(6月を初夏と考えた場合)。


 Android向けのスマホ用電子証明書は前回の記事で説明した通りだが、デジタル庁の公式見解では、このスマホ用電子証明書はマイナンバーカード機能の一部であることから、「スマホ用電子証明書搭載サービス」も「マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載」である、ということになっている。


 「マイナンバーカード機能(の一部)のスマートフォン搭載」は、既にAndroid向けに実現しており、今後、iPhone向けに「マイナンバーカード機能(の全て)のスマートフォン搭載」が実現する、というわけだ。


 逆にいえば、今後はiPhoneにも「スマホ用電子証明書」が搭載されるということになる。iPhoneでもスマホ用電子証明書を発行し、マイナポータルのログインでスマホ用電子証明書を使ってログインする、といった使い方が可能になるということだ。


 スマホ用電子証明書では、e-Taxでの確定申告の送信、携帯電話やクレジットカード契約、銀行口座開設時の本人確認などで署名用電子証明書も使われている。これらの機能も、これまでは物理カードかAndroid向けのスマホ用電子証明書しか利用できなかったが、今後はiPhoneでも使えるようになる。


 これは重要な変化で、現在、スマホ用電子証明書に対応しているサービスは決して多くはない。昨今の本人確認厳格化の流れからJPKIの対応は進んできており、本人確認に署名用電子証明書を使う例は増えている。


 ただ、マイナンバーカードを使うJPKIがほとんどで、スマホ用電子証明書に対応した例は少ない。そうした中、日本ではiPhoneのシェアが半数を超え、iPhoneに合わせて事業者側が自社対応を進めるパターンが多い(まずはiPhoneに対応してAndroidが後回しになるパターンも多い)。


 そのため、iPhoneがスマホ用電子証明書に対応することで、これまでスマホ用電子証明書に対応していなかったサービスや、そもそもJPKIに対応していなかったサービスでも、本人確認にJPKI(スマホ用電子証明書を含む)に対応する例が増える可能性がある。従来の本人確認書類の撮影と自撮りで行うオンラインにおける本人確認(eKYC)に比べて、偽造の可能性が低く安全性は高まるため、普及が進むことが期待される。


 マイナンバーカードのiPhone対応は、そうしたメリットがあるといえる。


●マイナ保険証もiPhone対応へ スマホ1台で病院にも行ける?


 さらに、iPhone対応に合わせて、マイナ保険証のiPhone対応も進められる予定だ。マイナ保険証は、マイナンバーカードを使って本人確認した上で、電子証明書によってオンライン資格確認などのシステムにアクセスして、利用者の保険情報を取得するという仕組みを用いている。


 この本人確認では、マイナンバーカードを専用リーダーに置くと、その券面にある複数の数字を組み合わせた照合番号BがリーダーのOCR機能で読み取られる。照合番号Bを使ってリーダーがカードのICチップにアクセスし、保管された顔写真を取得する。その顔写真と本人の顔を照合する顔認証を行って本人確認をして、それによってICチップ内から電子証明書を読み出せるので、安全にオンライン資格確認が行える。


 スマホ用電子証明書の場合、この照合番号Bと顔認証の部分が省略される。その代わり、本人確認はスマートフォンの機能を使う。Androidの場合はあらかじめスマホ用電子証明書に設定した4桁の暗証番号、iPhoneの場合は端末に設定された生体認証(Face IDなど)を使うことで本人確認とする。後はスマホ用電子証明書を使ってオンライン資格確認にアクセスする。


 現在、病院などの受付に設置されているマイナ保険証リーダーは、スマートフォンを想定した設計にはなっていないため、当面は別途市販のカードリーダーを増設することで対応する。6月頃から、10程度の医療機関で実証を行い、9月頃から全国の医療機関での対応を開始する予定となっている。


 これによって、「保険証(資格確認書)もマイナンバーカード(マイナ保険証)も持たずに、スマートフォン1つで病院に行くことができる」という状況が実現できる(ただし診察券は必要だろう)。


 ちなみに、コンビニエンスストアのキオスク端末(マルチコピー機)で住民票の写しや印鑑証明書などの証明書を取得できるコンビニ交付サービスにおいて、Android向けのスマホ用電子証明書が使えるが、iPhoneのマイナンバーカード機能搭載でも同じことができるようになるはずだ。これもマイナ保険証と同じで、Androidは現時点で4桁の暗証番号を入力するが、iPhoneでは生体認証で取得できるようになる見込み。


●スマホから「必要な情報だけ」を選んで安全に送信できる


 今回のiPhone対応の話は、スマホ用電子証明書だけでなく、「マイナンバーカード機能」をスマートフォンに搭載するというものだ。つまり、電子証明書以外の機能も搭載されることになる。


 マイナンバーカードが備えているのは、氏名/住所/生年月日/性別という基本4情報と顔写真、電子証明書だ。つまり、iPhoneでは基本4情報と顔写真も搭載しており、対面の本人確認として使える、ということが特徴となる。


 iPhoneの場合、クレジットカードなどを登録するAppleウォレットにマイナンバーカードを保管する。米国では一部州の運転免許証が保管できるようになっているが、これと同じ仕組みを使っており、mdocと呼ばれる国際標準の形式でデータが保管される。


 Appleウォレット上でどのような表示になるかは現時点で明らかになっていないが、いずれにしても基本的には「カード券面の画像を表示して目視で確認する」という使い方にはならないだろう。画面を見せるだけだと偽造が容易なためで、通常はデータを送信する形で処理することになるはずだ。


 例えばデジタル庁は、コンビニエンスストアにおいてスマートフォンに搭載したマイナンバーカードを使って年齢確認をするというデモを行っている。このデモでは、スマートフォンのマイナンバーカードの生年月日のデータから「20歳以上」「20歳未満」の情報を取得して、たばこ購入時などの年齢確認をデジタルで行うというものだった。


 これはiPhoneを使ったものではないが、技術的にはmdocやBluetoothを使っており、iPhoneでも同じことができる見込み。このように、スマートフォンに搭載したマイナンバーカードから必要な情報だけを選んで安全に送信するというのがこの機能の特徴になる。


 他にも、住民向けにサービスを提供する場合、住所のデータから「その市区町村の住民かどうか」の情報だけを送信することもできるだろうし、顔データの送信で顔認証を行って本人確認をしてゲートを入場するといった使い方もできるだろう。こうした活用は民間事業者も導入でき、さまざまなシーンでの活用が期待できる。


●iPhoneをかざすだけで本人確認ができる


 例えば店頭での本人確認でも、現状は「マイナンバーカードのICチップを使った偽造チェック」もでき、「JPKI(電子証明書)を使った本人確認」といった使い方もできる。iPhoneをかざすだけで基本4情報と顔写真が送信できるため、その情報で契約書類を作成して、偽造ができない顔データと本人を見比べて確認した上で安全に本人確認する、という使い方も想定できる。タブレットを併用して、顔データを使った顔認証を機械的に行うこともできるだろう。


 マイナンバーカードのICチップ内にAPとして免許証情報を保管する「マイナ免許証」についても、ウォレットに搭載するモバイル免許証が計画されている。これが実現すれば、身分証明書、保険証、免許証が全てスマートフォンに内蔵できることになる。


 欧州ではEUデジタルIDウォレットの導入が進められており、例えばパスポートをスマートフォンのウォレットに内蔵することで、入出国審査でスマートフォンをかざすだけで通過できる、といった将来像が検討されている。こうした取り組みは世界中で進められている最中だ。


●Google ウォレットへのマイナンバーカード機能搭載は?


 ちなみに、Androidにも「Google ウォレット」があり、Appleウォレットと同様にmdocに対応しているため、マイナンバーカード機能を搭載することは可能だ。デジタル庁でも対応は検討しているが、現時点で対応時期は明らかにされていない。


 今後、すぐに対面でスマートフォンに搭載したマイナンバーカード機能を使う例がいくつも登場するとは考えにくく、現状のコンビニ交付サービスやマイナ保険証のように、電子証明書を使ったサービスはAndroidでも変わらず利用できるため、当初は大きな問題にはならないだろう。


 ただ、早期にGoogle ウォレットにも搭載され、早期にスマートフォンのマイナンバーカードを使えるサービスが登場することを期待したい。



このニュースに関するつぶやき

  • コレね思うのが、もしiOSのサポートが切れたらどうなるわけ?(笑)まだiPhone5S使ってるやつがいたらしいし(笑)
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