警視庁と、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯キャリア4社が5月23日、「特殊詐欺」を撲滅するための取り組み「ストップ!詐欺」共同宣言を行った。
●2024年の特殊詐欺件数と被害額は「過去最悪」
固定電話や携帯電話をターゲットにして金品をだまし取る特殊詐欺は、年々、増加している。警視庁の統計では、2024年の東京都内で発生した特殊詐欺の認知件数は3494件(前年比+576件)、被害総額は約153億円1000万円(前年比+71億7000万円)に上る。この数字は過去最悪だという。
●警察官を装った詐欺も急増 高齢者以外の年代にも被害が拡大
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近年は警察官を装ったオレオレ詐欺が増加しており、2023年は3件だった被害が、2024年は806件にまで急増し、被害額は約69億6000万円に及ぶ。2025年も警察官を装った詐欺は4月までに706件、被害額が約69億9000万円に上り、既に2024年の被害額を超えている。
警察官を装った詐欺では、警察官や捜査員を名乗る偽物から「あなたの口座が犯罪に利用されている」といった内容で電話がかかってくる。その後、トークアプリに誘導して、「潔白を証明するためにお金を振り込んでほしい」などと指示し、不正に金銭を搾取するというものだ。警察官がこのような電話をかけてくることはないので、もちろん応じてはならず、すぐに切るのが鉄則だ。
警視庁 副総監の鎌田徹郎氏は、「都内の特殊詐欺被害は、大変厳しい状況にある」と危機感を募らせる。「これまでの最高被害額であった平成30年(2018年)の約88億7000万円から、昨年(2024年)は約153億円へと、急激に増加している。この被害額は今年(2025年)に入っても加速しており、4月末時点でいうと、被害額は100億円を超えており、極めて憂慮すべき状況にある」
警察官を装った詐欺は、固定電話への着信だけでなく、携帯電話への着信によるものが多く、発信先は国際電話番号や非通知設定などが大半を占めているという。また鎌田氏によると、オレオレ詐欺の被害者は、これまで高齢者に偏っていたが、昨年夏以降の警察官を装った詐欺によって、あらゆる世代に被害が広がっているという。特に国際電話番号から掛かってくる詐欺への対策が重要との認識を示した。
警視庁特殊詐欺対策本部 抑止対策・支援担当管理官の佐藤孝重氏は「(被害に遭った人の)年代や職業を検証したが、目立った特徴がなく、偏っていない。あらゆる年代の方に気を付けていただきたい」と呼びかける一方で、18歳〜20代の若年層への被害も広がっているという。
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被害者の年代が拡大した背景について佐藤氏は、「2年前まで、特殊詐欺は高齢者がほとんどのターゲットで、固定電話あてがほとんどだった。しかし、昨年の夏以降、携帯電話に詐欺電話がかかってくることが増えている」と説明する。若者にも特殊詐欺を認知してもらえるよう、警視庁は2024年夏以降、XなどSNSを使った啓発活動を行っている。Xでは警視庁特殊詐欺対策本部の公式アカウントで、特殊詐欺に関する注意喚起を行っているので、フォローしておくといいだろう。
●スマートフォンを使って特殊詐欺を防止するには?
このように急増する特殊詐欺を撲滅するには、官民で連携して詐欺の手口や被害防止対策を周知することが重要と考え、警視庁と携帯4キャリアが共同宣言を行った。
5月23日に警視庁で会見を開き、4キャリアの代表者が、スマートフォンを用いて詐欺被害を防止する方法について説明した。
迷惑電話や迷惑メールについて、4キャリアはフィッシング詐欺などに使われる迷惑メール/SMSを自動検知し、受信拒否をするサービスを無償で提供している。迷惑電話が疑われる発信者番号からの着信時には警告を表示する、着信拒否設定を行うなどのサービスも提供している。
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また、スマートフォン側の機能を用い、非通知や未登録の番号からの着信を消音にすることで詐欺電話の対策ができる。Androidの一部機種では、未登録番号からの着信に対して相手をけん制するようなガイダンスを流した上で、自動録音をする、詐欺に関連するワードが出てきたら警告の画面を出すといったこともできる。iPhoneでも、留守番電話に残されたメッセージをリアルタイムでテキスト化する「ライブ留守番電話」を利用することで、詐欺電話だったかどうかの判別ができる。
NTTドコモ 代表取締役副社長の小林啓太氏は、「われわれが提供しているサービスが犯罪に利用されるというのは、本当に忸怩(じくじ)たる思い」と述べた上で、犯罪対策について3点を述べる。1つは本人確認の徹底。マイナンバーカードの公的認証の(スマートフォンへの)導入も決まっているので、われわれ一同もしっかり対応したい」(小林氏)。
2つ目に回線数の制限を挙げる。携帯電話の回線が犯罪に使われる際、1度に大量に申し込むケースがあるため、そうした不自然な契約に目を光らせていく。3つ目が情報共有。「ちょっとおかしいなという契約」(小林氏)のユーザーがいた場合、そうした情報は警察機関やキャリア間で共有し、不正利用を未然に防いでいく。
ユーザーが詐欺被害に遭わないようにするための啓発活動も行っていく。特殊詐欺から身を守るためには、ユーザー一人一人が詐欺電話の手口を知る必要がある。そこで、詐欺の手口や被害を防ぐ具体的な方法を、スマホ教室や動画配信などで周知していく。KDDI シニアディレクター コーポレート統括本部総務本部長の中里靖夫氏は、「詐欺被害に遭わないための機能やサービスは、実際に設定しなければ効果を発揮しない。利用者の皆さんの具体的なアクションの積み重ねが、特殊詐欺を未然に防ぐ防波堤になる」と呼びかけた。
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