マーベリック・ビニャーレス(レッドブルKTMテック3)/2025MotoGPアラゴン公式テスト 6月9日、MotoGP第8戦アラゴンGPが開催されたスペインのモーターランド・アラゴンにて、アラゴン公式テストが続けて実施され、マーベリック・ビニャーレス(レッドブルKTMテック3)が非公式ながらもレコードを更新する1分45秒694をマークして総合トップで終えた。
マルク・マルケス(ドゥカティ・レノボ・チーム)が全セッショントップで終える速さを見せた第8戦アラゴンGPから一夜明け、同地モーターランド・アラゴンではアラゴン公式テストが実施された。現地時間10時から13時にセッション1、13時20分から18時までセッション2と長時間に渡って2度のセッションが行われた。
今回のテストでは、第8戦アラゴンGP同様にホルヘ・マルティン(アプリリア・レーシング)の代役としてロレンツォ・サバドーリ(アプリリア・レーシング)が引き続きエントリー。前戦イギリスGPで転倒し負傷した小椋藍(トラックハウスMotoGPチーム)の代役として、Moto2クラスのLIQUI MOLY Dynavolt Intact GPより参戦しているマニュエル・ゴンザレスがMotoGP初走行となった。
また、鈴鹿8耐に向けたテストでクラッシュを喫したルカ・マリーニ(ホンダHRCカストロール)は引き続き欠場に。テストライダーとしては、ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)の姿があり、総勢22名がテストに参加していた。
この日は終日好天に恵まれ午後には気温が33度、路面温度は56度まで上昇した厳しいコンディションとなった。午前のセッション1では好調なマルク・マルケスが1分45秒749でトップタイムで終えたが、午後のセッション2では終盤にビニャーレスがタイムを更新し総合首位で終えている。このタイムは第8戦アラゴンGPの予選Q2で樹立されたオールタイムラップレコード(1分45秒704)を非公式ながら0.010秒更新するものだった。
少しずつ右肩上がりな調子を示しているKTM勢は、ビニャーレスが午前も一時トップにつける速さを見せていた。日中を通して様々なパーツをテストしていたようで、午後には2台のマシンにマスダンパーと思われるパーツも装着されていたという。対して総合16番手で終えたエネア・バスティアニーニ(レッドブルKTMテック3)は、リヤエアロを装着していないバイクが1台用意され比較を行っていたようだ。
レッドブルKTMファクトリー・レーシングは、ペドロ・アコスタが午前に19ラップ目の7コーナーで転倒を喫したが計59ラップを周回し、トップタイムから0.335秒差の総合5番手となった。総合13番手のブラッド・ビンダーは、午前のセッションでわずかにアップデートされたサイドフェアリングを装着しているのが目撃されていた。
また、ふたりは新型のステゴサウルスの形状をしたリヤのエアロを使用していた。テストライダーのポル・エスパルガロはフルブラックのカーボン基調のマシンを走らせパーツのテストと比較を遂行し、総合19番手で終えている。
総合2番手はマルコ・ベゼッチ(アプリリア・レーシング)だった。午後に第8戦アラゴンGPでポールポジションを獲得したマルク・マルケスのタイムより0.004秒速い1分45秒700をマークした。今回のテストはサバドーリとともに課題のタイムアタックとコーナー出口での安定性を追求したテストを実行し、わずかに改良されたウイングを備えた新しいフロントフェアリングや電子制御、エンジンマネジメント、シャシーのセッティングなどテストプログラムに取り組んでいたという。
同じくアプリリア勢のトラックハウスMotoGPチームは、ラウル・フェルナンデスがパーツの比較を実施し総合12番手につけた。MotoGP初走行となったゴンザレスは午前のセッションで転倒があったものの、午後は最多の58周をこなして1分47秒台に突入させた。着実にタイムを自己ベストを更新し、最終的に総合21番手でテストを終えた。
また、トラックハウスMotoGPチームのオーナーであるジャスティン・マークスはゴンザレスの起用について「もちろん藍がアラゴン公式テストに参加できれば良かったのだけれど、彼の健康と回復が最も重要だ。これは、才能ある若手ライダーにMotoGPバイクで貴重なラップを走らせる絶好の機会だ」とコメントしていた。
総合3番手につけたのは、今季ドゥカティ・レノボ・チームに移籍後はスプリントと決勝ともに強さを見せているマルク・マルケスだった。チームメイトのバニャイアも総合9番手とともにトップ10入りし、ふたりはアップデートされたもの、シーズン前のテストで初めて投入されたものと異なるエアロパッケージの比較を実施。改良されたものは従来のエアロパッケージと比較して、3つの主要コンポーネントすべてに変更が加えられているという。
また、ドゥカティ勢ではルーキーのフェルミン・アルデグエル(BK8グレシーニ・レーシングMotoGP)が総合4番手と好発進を決めた。走り始めが遅かったが、フロントのフィーリング向上を目指してテストを遂行し、午前は12周、午後はわずか3周で1分45秒958をマークし総合4番手で終えた。チームメイトのアレックス・マルケスは、新しいパーツは見受けられなかったためか午後は走行をキャンセル。午前のみの参加となったが総合8番手となった。
プルタミナ・エンデューロVR46レーシング・チームはモルビデリが総合6番手、ファビオ・ディ・ジャンアントニオが総合11番手で終えている。新パーツもいくつか見られ、アップデートされたエアロをテストしていたようだ。モルビデリはリヤグリップの向上に取り組んでいたようで、午後は終盤に転倒もあったが、無事にテストを完了させた。
今季久しぶりのポールポジション獲得で、復活の兆しが見え始めているヤマハ勢はファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)が総合7番手でトップ10入りを果たした。僚友のアレック・リンスは午後のセッション中に12コーナーでの転倒があった影響で総合18番手にとどまった。プリマ・プラマック・ヤマハMotoGPのジャック・ミラーも午後に転倒があり総合14番手、ミゲール・オリベイラ総合15番手となった。
今回ヤマハは4名が新しいエンジンの検証とスイングアーム、エアロパッケージのテストを中心としたプログラムに取り組んでいたという。リンスは両バイクとも旧型のエアロダイナミクスを採用し、比較のために2種類のスイングアームを用意していたようだ。
今回のテストを経てヤマハ勢は、6月11日から2日間バルセロナのカタロニア・サーキットでプライベートテストを実施する。テストライダーのアンドレア・ドヴィツィオーゾとアウグスト・フェルナンデェスを招集し、開発中のV型4気筒エンジンを検証する予定とのことで、こちらも注目が集まるところだ。
同じく日本勢のホンダ陣営は、ジョアン・ミル(ホンダHRCカストロール)がトップ10入りした。第8戦アラゴンGPでも速さを見せており、第6戦フランスGPではヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)が43戦ぶりとなる優勝をホンダにもたらし復調の兆しが垣間見えている。今回はマリーニが欠場し、テストライダーのエントリーもないため、ふたりが多数のアイテムを検証していたとのこと。
ミルは第5戦スペインGPにワイルドカード参戦したアレイシ・エスパルガロが初めて使用していたカーボン製のスイングアームをテストしていたようだ。午前にマークした1分46秒419は、予選Q2で自身が記録したタイムより0.354秒速いものだった。ザルコは67ラップを周回し総合17番手、ソムキャット・チャントラは午後に転倒したが、53ラップを周回して総合22番手で終えている。
今回のテストを経て一同は、6月20〜21日にムジェロ・サーキットにて開催される第9戦イタリアGPへと乗り込むこととなる。今回投入された新パーツが実戦投入されるのか、ヤマハとホンダの躍進が見られるのか、注目していきたい。
[オートスポーツweb 2025年06月10日]