ギリェルメ・サラス(カバレイロ・バルダ/シボレー・トラッカー)が素晴らしいパフォーマンスを見せ、GMシボレー陣営がSUV新時代において初めて表彰台のトップに立つなど反撃の狼煙を上げている カレンダー最難関とされるアウトドローモ・ヴェロパークで開催されたSUV新世紀のSCBストックカー・ブラジル“Pro Series”第3戦は、土曜スプリントこそ開幕から猛威を振るうミツビシ・エクリプスクロスを操るガエターノ・ディ・マウロ(ユーロファーマRC/)がウイナーズ・サークルに加わったものの、予選最速に続き日曜メインレースでもギリェルメ・サラス(カバレイロ・バルダ/シボレー・トラッカー)が素晴らしいパフォーマンスを見せ、GMシボレー陣営がSUV新時代において初めて表彰台のトップに立つなど反撃の狼煙を上げている。
ブラジルはリオグランデ・ド・スル州にて6月6〜8日の週末に争われたテクニカル・サーキットでの一戦は、やはりセダン時代から続く超接近戦グリッドの健在ぶりを見せつけるかのように、走り出しから26名ものドライバーが1秒差圏内にひしめき、FP2で記録されたディ・マウロの最速タイム53秒892は、セダン時代の2022年にリカルド・ゾンタ(トヨタ・カローラ)が記録した56秒070を2秒以上も上回るレコードタイムとなった。
ただし世界のモータースポーツの複数カテゴリーで使用されているBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)が、このヴェロパークの週末に初めて発動し、各ブランド間のポイント差が75以上になった場合に“トリガー”が機能。ミツビシ・エクリプスクロスの数値はそのままに、改めてシボレー・トラッカーとトヨタ・カローラクロスの最低地上高が70mmから65mmへと5mm低下し、さらにターボの過給圧は0.05bar(50mbar)引き上げられた。
すると早くもその効果か。明けた土曜は気温11℃と冷え込む朝となるなか、スターティンググリッドを決定づける予選セッションでシボレーが躍動。85号車に乗るサラスが全長2.278kmのトラックで通算5度目、このSUV時代初となる今季最初のポールポジションを獲得してみせた。
「今日は限界までラップを攻めた。とくにタイヤを温めるには難しいコースだからね。でも“正しい調子”でラップを走ることができて本当に良かったよ」と、ここで125ポイントを獲得し、開幕勝者で選手権首位のフェリペ・フラーガ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)までわずか2ポイント差に迫ったサラス。
その85号車シボレーとフロントロウを分け合ったのは、今季より名門ユーロファーマRCを離れた“シリーズ3連覇男”のダニエル・セラ(ブラウ・モータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)で、背後の2列目には今季最高の予選を戦ったフェリペ・マッサ(TMGレーシング/シボレー・トラッカー)が続き、その隣に元チームメイトのフリオ・カンポス(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラクロス)が並んだ。
迎えた土曜スプリントは、予選トップ12のリバースグリッドにて同じくユーロファーマRCを離脱したリカルド・マウリシオ(カヴァレイロ・ヴァルダ/シボレー・トラッカー)がポール、隣にジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(フルタイム・ガズー・レーシング・チーム/トヨタ・カローラクロス)の並びでスタートが切られると、ファンの“想像どおり”にレースは荒れた展開に。
後続による序盤のアクシデントを受けセーフティカー(SC)が導入されると、リスタートではマウリシオとの直接対決に挑んだオリベイラが縁石に乗り上げた後にトラブルに見舞われ、貴重なポジションを失ってしまう。さらに終盤にはブルーノ・バティスタ(RCMモータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)とも絡み、オリベイラ自身がSCの起因となる。
一方、優勝戦線の渦中でも最年少チャンピオン獲得記録を保持するフラーガと、同3連覇男セラによるチャンピオン同士のバトルが繰り広げられ、後者はタイヤバリアの餌食となり接触クラッシュを喫することに。
これで義務的ピットストップを前に予選ペースで数周を走行し、トップ奪還を狙う異なる戦略を採用したディ・マウロが抜け出し、セザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラクロス)と新鋭アーサー・レイスト(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラクロス)の2台のトヨタ・ガズー・レーシング・ブラジル陣営がポディウムの両脇を固める結果となった。
「マシンは非常に競争力があり、チームに心から感謝している」とBoPの足枷も跳ね返して緒戦を飾ったディ・マウロ。
「レース序盤は厳しい展開でリカルジーニョ(マウリシオの愛称)のディフェンスが厳しく、パスすることができなかった。でも良い戦略を立てることができ、明日のためにプッシュ(トゥ・パス)を温存できた。予選Q3でラップを完走できなかったのは残念だったが、このチームの一員であることを誇りに思うよ」
そして日曜メインレースを前に、チームとカテゴリー運営は「タービン制御における電子的な問題が確認されたため、義務的な手順(ピットストップ)を廃止し、レース時間を10分短縮して40分+1周とする」ことを決定。
この結果、レースはスタートからハイテンションで展開され、車両回収のSCを挟んだ後もポールシッターのサラスが独走。フリオ・カンポス(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラクロス)とラファエル・スズキ(TMGレーシング/シボレー・トラッカー)を従えて新時代におけるシボレー・トラッカーの初勝利を飾り、自身今季初、キャリア通算4勝目で週末最高得点者となり、開幕3戦を終えてチャンピオンシップのリーダーに躍り出た。
「金曜から自分のマシンが非常に速いことは分かっていたし、今朝グリッドに着いたときも、良いペースを出せると確信していた。実際、マシンは完璧だったね」と喜びを語ったサラス。
これで3メーカーのSUV勢力図が微妙な変動を見せる2025年のSCBシリーズ。続く第4戦は、サンパウロ州内陸部モジ・グアスに位置するアウトドローモ・ヴェロチッタにて6月27〜29日の週末に争われる。
[オートスポーツweb 2025年06月12日]