実写『リロ&スティッチ』プロデューサーが制作裏を語る! アニメからの変更点&スティッチの可愛さの秘密などを大解剖

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2025年06月13日 10:10  クランクイン!

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映画『リロ&スティッチ』のプロデューサー、ジョナサン・アイリック  (C)2025 Disney Enterprises
 全世界でオープニング初週末に3億6130万ドルを売り上げ、同日公開の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニ』に大差をつけて堂々ナンバー1ヒットとなったディズニー実写映画『リロ&スティッチ』。その勢いは留まることを知らず2週連続No.1を達成! 実写版『リロ&スティッチ』のプロデューサーで、製作会社ライドバックの共同CEOであるジョナサン・アイリックは、『アラジン』(2019)や『ホーンテッドマンション』(2023)といったディズニーの大作の他、2020年のアカデミー賞で3部門にノミネートされた『2人のローマ教皇』などを手がける今ハリウッドで最も勢いのあるプロデューサーの一人だ。そんなアイリックに、新作『リロ&スティッチ』の製作裏話や、ディズニーのエコシステムのキャラクターや作品作りへの影響について聞いた。

【写真】おめめキラッキラ!! 実写版のスティッチがかわいすぎる

■現実世界ではリロ&ナニがどうなるのかじっくり考えた

――アニメーション映画をベースに実写のストーリーラインを構築するにあたり、クリエイティブ的に最も注意を払ったことは何ですか?

ジョナサン・アイリック(以下、アイリック): アニメーションから実写に切り替えた瞬間、人間の俳優にこそ体現させるべき感情や物語は何かということに目を向ける必要がありました。まず最初にナニとリロという二人の姉妹の関係について、そして彼女たちの経験が実際、現実世界ではどのようになるかについてじっくり考えました。両親を亡くすということ、ハワイの社会福祉サービスでの経験、彼らが一緒に居続けることができるかといったことを。そして、それがある種実写化するにあたり変化につながったと思います。

例えば、ケコア夫人は実写版の新しいキャラクターです。素晴らしいことに、オリジナルのナニの声を担当したティア・カレラを呼び戻してこの役を演じてもらうことができました。ケコア夫人は、この2人にとって一番良いことを心から願うハワイのソーシャルワーカーの良い例といえるでしょう。だから彼女はリロやナニが置かれた状況に共感し、できる限り手助けしようとしているのです。しかし同時に、彼女にはやるべき仕事があり、その現実を本作できちんと描くことが重要でした。

そして、トゥトゥのキャラクターもそこから生まれた新しいキャラクターです。ハワイ人の脚本家が脚本開発の初期段階で私たちに言ったことが発端となりました。ハワイで育った彼によると、もし両親が亡くなったら、ハワイはとても家族志向でコミュニティ志向な場所なので「彼らを助けようと手を差し伸べる人がいるだろう。彼らは一人にはならないだろう」と。彼はこの新たな隣人キャラクターのトゥトゥを提案し、実際、ナニのキャラクターをも少し変えることになったのです。

つまり、彼女(ナニ)を助けてくれる人が現実に誰もいないというわけではなく、彼女が実は助けを受け入れるつもりがないということなのです。彼女は、自分一人で何でもできるということを証明しなければいけないと思っている、頑固なキャラクターだと思います。家の管理ができて、仕事を持って、リロの世話ができて、それを自分一人でできるということを証明したいと思っているのです。そして彼女は、ハワイのこのコミュニティの隣人や友人の助けを受け入れることを通して広い意味でのオハナ(家族)を受け入れることを学びます。

「人間のリアリティとは何だろう?」と自身に問いながら実写化にあたりました。そして、この映画に何か新しいものを持ち込めるとすれば何か、と考えました。私たち制作陣は常に原作のファンとして、例えば「ハワイアン・ローラーコースター・ライドの楽曲が映画に含まれていなかったら納得できないだろう」などと想像力を膨らませる必要がありました。そして、実写化にあたり人間の心の機微を丁寧に描く方法も模索しました。

――スティッチの声優はオリジナルと同じですよね?

アイリック:そうです。クリス・サンダースです。

――なぜそう決めたのか教えていただけますか?

アイリック:彼は素晴らしいクリエイターです。クリスはまさにスティッチの生みの親で、彼がもともとスティッチを描きました。そして彼がオリジナルの映画の脚本を書き、監督した経緯があります。その後彼が制作陣として関わっていない作品でも、クリスは常にスティッチの声優としてキャラクターに関わり続けていました。つまり、彼こそが「スティッチ」なんです。とにかく、ファンのためにも新作に彼を連れ戻さなければならないと感じていました。彼は制作陣に多くの助言を提供してくれました。たとえば、3Dのスティッチが、実写でどのように見えるかというバージョンがようやく完成した時、最初にクリスにコンセプトをみせました。スティッチ生みの親であるクリスの納得のいく仕上がりになったときの安堵感は忘れられません。

――オリジナルのスティッチは日本でも大人気です。なぜこんなに愛されるキャラクターになったと思いますか?

アイリック:誰もがトラブルメーカーが大好きなんです。ディズニーの世界では、多くのキャラクターが心優しく善良です。スティッチはまさに正反対で、トラブルに巻き込まれて大混乱を引き起こすので、観客の共感をよび、愛されるのだと思います。なぜなら、誰しもが欠点だらけなのですから。

また、キャラクターデザインも魅力的です。さらに日本はアニメやアニメーションの歴史、宮崎駿やあらゆる種類のキャラクターデザインが生まれた場所である背景から、アニメーションにとても親しみがあるカルチャーではないでしょうか。日本の観客は、違う文化圏で生まれたスティッチのようなキャラクターであっても、まるで自分たちのものとして受け入れられるのではないでしょうか。私は過去18ヵ月の間に日本に2回渡航しましたが、いたるところでスティッチを見かけました。最近の旅行では、はじめて日本へ渡航したときの旅行よりはるかにスティッチを見かける機会が多く、日本の観客の関心が高まっているのを感じて嬉しく思います。

――先ほどお話したように、スティッチはディズニーのキャラクターの中で最も愛されているキャラクターのひとつです。ディズニーがもつお客様とのさまざまなタッチポイントは、日本市場においてどのような影響を与えているのでしょうか?

■アトラクション登場で「一気に火が着いたように思います」

アイリック:前提として、アニメーション映画『リロ&スティッチ』は時代を先取りしていたと思います。当時、私たちがどう話せばいいのかさえ知らなかった問題を扱っていました。いまでこそ子どもが感じる不安や孤独について向き合うようになりましたが、20年前には誰もこれらのことについて語りませんでした。映画が時代を先取りして正しく捉えていたものが突然大きな形で戻ってきたという感覚です。ディズニーのタッチポイントを通して、徐々にファンの間で時代の移り変わりとともに愛情が芽生え続けたのではないでしょうか。

僕らは7、8年前からこの映画の開発を始めましたが、ちょうどその頃から子どもたちのバックパックをはじめ、いたるところでスティッチの商品を見かけるようになりました。

その後パークのアトラクションとして登場するようになり一気に火が付いたように思います。ディズニーランドを訪れて感じた違いは、おそらく2018年と、コロナ直後の2021年か22年に行ったときです。2018年はスティッチをたくさん見ました。2022年までには、パークでミッキーについで2番目に多く見たキャラクターになったかもしれません。明らかにこのキャラクターを復活させようというディズニーの大きな取り組みの一環として計画されたものだと思います。ディズニーは私たちがこの映画を制作していることを受けて、スティッチをより多くの観客に届けようとしているのです。ディズニーは、観客を育てて、ファンが必要とすることに応える素晴らしい仕事をしています。

――実写版を作るときは、もっと現実的なものにする必要がありました。そうするには、適切なキャスティングを行う必要があります。リロとナニの姉妹の関係性を描く上で、あなたたちはマイアとシドニーの両方で素晴らしいキャスティングをしたと思います。そのキャスティングのプロセスについてお話しいただけますか?

アイリック:私たちは、居住地を問わず、世界中にハワイの俳優を広く募集しましたが、おそらくハワイやハワイ周辺で見つかるだろうという予感はしていました。リロの場合、8歳、9歳、10歳前後のとてつもなく多くの俳優がオーディションに参加してくれました。ハリウッドでは、通常、演じて欲しい年齢よりも少しだけ年上の子どもをキャストすることが多いんです。ですがディーン・フライシャー・キャンプ監督は、とても純粋ですこし早熟なリロを演じられる俳優を求めていました。ある日、まだ5歳のマイア・ケアロハがテープを送ってきました。ビッグアイランドにいた彼女をすぐにオアフ島へ呼び、直接会って本読み(オーディション)をしたところ、彼女の豊かな想像力と聡明さ、遊び心、そして何よりスタミナに感服しました。彼女は「次は何?何をするの?ああ、スティッチのぬいぐるみで遊べるの?やったー!」と。撮影中にストライキで撮影が中止になりましたが集中力を維持し、仕事熱心でした。彼女はこのキャラクターを作り上げるためにたくさんの努力をしてくれたことに感謝しかありません。

――スティッチをVFXで表現するにあたり、どのような過程を経ましたか。

アイリック:全編を通してVFXはILM(インダストリアル・ライト&マジック)が担当しました。クリス・サンダースのもとで『リロ&スティッチ』のオリジナル・リード・アニメーターを務めたアレックス・クーパーシュミットと連携してスティッチの腰の動き、歩くしぐさなど丁寧にVFXで表現することが求められました。一方、ディーン・フライシャー・キャンプ監督は早い段階で「かわいさは自然の中にあり、創造することは難しい」といったのです。つまりいろいろな動物を観察しながら、スティッチの目を表現するために最終的にアザラシの子どもの目にたどり着きました。ウサギの耳や、アルパカの毛皮もVFXの参考にしました。VFXでつくりあげるスティッチが自然界に存在していてもおかしくないように感じられるところまで、とても長い過程を経たのです。

実は本作は、4月末に完成しました。つまり、作り終えたばかりです。これだけ多くのアーティストと、大規模なVFXチームで、すべてのフレームを隅々までチェックし、すべてが観客にとって可能な限り良いものにするためには、本当にそれだけの時間がかかるんです。

――この映画は素晴らしい出来でした。しかし、今この長いプロセスを振り返ってみると、最もチャレンジングだった点は何でしたか?

アイリック:本作のレガシーを尊重し続けることだったと思います。オリジナルの映画が大好きで、それが観客にとってどれほど意味のあることなのかを知っています。昨年D23で初めてスティッチを披露した時から、インターネット上で大騒ぎになりました。嬉しく思う反面、人々を失望させる可能性あると思ったのです。ですから、クリス・サンダースにスティッチが正しいかを確認してもらったり、ハワイのコンサルタントに映画のハワイらしさが正しいかを確認してもらったり、スティッチのアニメーションが適切に感じられるように、より多くのアーティストやアニメーション担当者に来てもらったりと、あらゆる段階で、より多くのパートナーを招聘することを意識することで、作品のレガシーを尊重したいと思ったのです。

――あなたは、多くのスタジオと仕事をしていますが、ディズニーの最大の魅力は何だと思いますか?

アイリック:ディズニーは私たちが子どものころから親しみのあるブランドです。ウォルトが望んだのは、みんなが子どもになったような気分になれることだったと思います。だから、プロデューサーとして、世界中の多くの人々にとってとても大きな意味を持つブランドと仕事をする機会があれば、それはチャンスだと思います。特に今、人々の関心を引くものがたくさんある中で、プロデューサーであれば当然ながら自分の時間と心を注ぎ込んだ新しい作品は多く人々に見てもらいたいと願うものです。ディズニー作品であれば世界中のすべての人に見てもらえる機会があります。私たちはこれまでに、ディズニーと3本の長編映画を制作しましたが、それはまさに夢のようなものなのです。

――ジョナサン、日本の人々はスティッチが大好きです。彼らはこの映画をとても楽しみにしています。日本のスティッチファンへメッセージをお願いします。

アイリック:日本のスティッチファンの皆さん、こんにちは。アニメーション映画に敬意を表し、忠実に、そして同時に新しい世代に何か新しいものを届けるために、私たちが本作にどれだけの愛を注いだかを感じていただけると嬉しいです。そして、皆さんがこの映画を友達やご家族と一緒に観て、そういった愛や、”オハナ”を分かち合っていただけることを願います。
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