限定公開( 27 )
2025年に日本上陸10周年を迎えた、台湾発のグローバルティーカフェ「ゴンチャ」。世界30カ国で2300店以上、国内では全国195店舗(2025年5月末時点)を展開する。
ゴンチャといえば、「タピオカミルクティー」を連想する人が多いかもしれない。まさに、タピオカブームの波に乗って認知度や客数を伸ばしてきたブランドだ。その後、ブームの終焉とコロナ禍が重なり売り上げがガクンと落ち込んだものの、出店を重ねて再び成長している。
上陸10周年を機に2025年を“新章ゴンチャ”のスタートと位置付け、新戦略「Gong cha 2.0」を進めている。ブランドへの熱意を高めることを目的とし、「顧客体験」と「従業員体験」を向上させる取り組みに注力するという。
5月30日にオープンした「秋葉原中央通り店」のメディア内覧会に登壇した角田淳社長は、「今と同じことを続けていても、ワクワクするようなお茶ブランドの立ち位置はつくれない。次の10年に向けてしっかり成長するために、『Gong cha 2.0』と銘打って取り組みを進めていく」と意気込みを語った。
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なぜ、タピオカブームが終わってもゴンチャは成長を続けられるのか。角田社長とGong cha 2.0推進部 部長 栗田栄一氏に取材した。
●Z世代に刺さる“遊び心”のある商品展開
「お客さまの日常にHappiness(幸せ)をお届けする」をミッションに掲げ、2015年に原宿に日本1号店をオープンしたゴンチャ。その後、関東を中心に全国195店舗まで拡大している。顧客の大半は10〜20代前半のZ世代女性で、学割制度を活用する人も多いという。
「ゴンチャはお茶専門店であり、主役は『お茶』です。私は、そば屋でラーメンは提供してほしくない。同じように、お茶専門店のゴンチャではコーヒーは売りません。お茶をいろんなバリエーションで楽しんでいただくことに集中しています」(角田氏)
角田氏は、国内のタピオカブームが去り、ゴンチャの売り上げが低迷した2021年に社長に就任。さまざまな改革の一環で、以前は販売していたコーヒーを廃止した。
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「ゴンチャの一番の強みは、お茶をベースにした遊び心のある商品開発です。定番のストレートやミルクだけでなく、フルーツティーやフローズンティーがあったり、甘さやトッピングなどを自由にカスタマイズできたり、お茶を幅広く楽しめます」
カスタマイズの組み合わせは、1万通り以上にのぼる。お茶は5〜6種類から飲み方を選んだ後、さらに茶葉の種類やフルーツの種類を選ぶ。これだけで数十種類ある。次に甘さと氷の量を4段階から選び、最後にパール(タピオカ)、アロエ、ナタデココ、ミルクフォームのトッピングから最大3種類を追加する。期間限定商品も毎回数種類を投入するため、メニューがお茶だけでも飽きづらい。
これだけの種類があるが、人気メニューは長年変わらない。1位は「ブラックミルクティー」、2位は「烏龍 ミルクティー」だ。ブームが去った今でもタピオカ人気は健在で、顧客の約7割が注文する。ちなみに、ブーム時は約9割が注文していたそうだ。
●未来の姿を体現した「コンセプトストア」
ゴンチャといえば、テークアウトで飲むイメージもある。店舗の内訳でいうと、座席のあるカフェ型が約6割、スタンド型が約4割とカフェ型が多いのだが、ほとんどの注文がテークアウトだという。
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そんななか、Gong cha 2.0では店舗外観やインテリアを刷新した座席のある「コンセプトストア」の展開を掲げている。ゴンチャが目指す未来の姿を体現したテスト店舗の位置付けで、同店限定のドリンクメニュー、充実したフードメニュー、オリジナルグッズも取りそろえている。
外観やインテリアはゴンチャを象徴する“赤”を基調としており、家具は柔軟に組み合わせを変更できるモジュールタイプを採用した。
2025年3月に1号店の「原宿神宮前店」、4月に「アルシェ大宮店」、そして5月30日に「秋葉原中央通り店」をオープンした。大宮は既存店のリニューアルとなる。1号店では、限定メニューやグッズを求めて初日に200人以上が行列をつくったという。
3号店となる秋葉原中央通り店は、Gong cha 2.0における店舗デザインの5つの要素(外観、内装のバー、床デザイン、家具、サイネージ)を全て盛り込んだ。あえて座席の横幅を狭くした”1.5人席”もあり、少し近い距離感でおしゃべりを楽しんでほしい狙いがあるという。
「オタクの聖地として知られる秋葉原は、多様なサブカルチャーや最先端のクリエイティブが集結する街に進化を遂げています。国内外から人が訪れる人気のエリアです。非常に良いロケーションで出店できることになり、ゴンチャが培ってきたティーカフェ文化を秋葉原から発信していきたいと考えています」(栗田氏)
栗田氏によれば、来年度以降に開業する新店舗は、新戦略に沿ったデザインになる見込みだ。店舗面積やロケーション、来客層によって、5つの要素からピックアップして設計するという。
●会員55万人、ファンプログラムも好調
Gong cha 2.0における顧客戦略として、栗田氏は「顧客の体験価値向上」「毎月1回以上の来店」「長期的な関係構築」の3点を挙げた。
「月1回以上来店いただくお客さまが当社の事業をを支えてくれています。体験価値の向上に努めることでリピート来店を増やし、長くつながり続けていきたい考えです。まだ幅広い年代の女性を狙いにいく段階ではなく、いま10代の方が30代、40代になっても変わらず支持いただけるブランドを目指します」(栗田氏)
具体的な施策の一つが、オペレーションDXだ。まず、2022年に並ばずに注文できるモバイルオーダーを導入した。タピオカブームだった2018〜19年に、お客が集中して行列が絶えない店になり、「混んでいて入りにくい」といった不満が多く聞かれたことから導入を決めたという。
2023年には、国内では珍しい5カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語)対応のセルフレジも導入。2025年5月時点で半数以上の店舗に導入済みだ。一方で、顧客との接点が重要であるとの考えから全店に有人レジを残している。
「お客さまにハピネスを届けるには、高品質な接客が欠かせません。先日は、接客レベル向上を目的に全国のクルーが参加する『サービスコンテスト』を開催しました。決勝参加者にディズニーランドのチケットを贈り、園内で過ごしながらゴンチャ以上にすばらしいサービスを見つけて、発表してもらいました」(角田氏)
この5月には、従来の紙とモバイルオーダーのポイントカードを統合したスマホの新サービス「My Gong cha(マイゴンチャ)」も開始。購入金額に応じたポイント付与のほか、4つの会員ステージも用意した。
長期的な関係構築の狙いから、「一度上がった会員ステージが下がらない」運用としている。顧客のライフステージが変わって頻繁に来れなくなっても、過去からの累計で会員ステージを評価する。「他ブランドとの差別化にもなり、こだわって設計した」(栗田氏)。
マイゴンチャは初日に20万人が登録、約2週間で55万人到達と目標よりハイペースで推移。100万人以上いる既存のモバイルオーダー会員のうち、エンゲージメントの高いマスターとアンバサダー会員は、すでに約8割が移行したという。
7月10日からは学割をリニューアルする。「ENJOY U22割」として、以前は“学生のみ”だった対象を“6歳以上22歳以下のすべての若者”とする。
●2028年までに400店舗、6000万人を目指す
ここまでの話は「顧客体験向上」に集中していたが、ゴンチャでは同時に「従業員体験向上」にも取り組んでいる。勤務時の髪色を自由にしたり、店舗のBGMを従業員の好きな曲にしたり、楽しく働ける職場づくりに注力。各々がプロとして自由にやりたいことにチャレンジできる環境を目指しているそうだ。
「従業員にもお客さまにも『ゴンチャを友達や家族に勧めますか?』と聞いて、その数値を高めるための施策を実行しています。どれだけ広告を打つより、家族や友だちから『ゴンチャすごいよかったよ』って言われるほうが『行ってみよう』と思いますよね。推奨度の向上は成長に直結すると考えます」(角田氏)
将来的には、2024年に3012万人だった年間来客数を2028年までに2倍の6000万人へ、店舗数を現在の195から400へ拡大したいという。
「われわれはブームをつくりたいのではなく、ティーカフェの文化を広めたい。当社の調査では、『お茶しよ?』と言われると、『コーヒー』をイメージする方が約7割だと分かりました。一方で、若年層ほど『紅茶』をイメージする割合が高く、家庭で飲む飲料も含めるとコーヒーよりお茶のほうが市場が若干大きいんです。お茶はたくさん飲まれているけれど『お茶専門店』がない。ゴンチャは、この空白を取りにいきます」(角田氏)
ティーカフェといえば、スターバックスの「スターバックス ティー & カフェ」(全国19店舗)、タリーズコーヒーの「タリーズコーヒー&TEA」(全国39件、ともに2025年6月初旬時点)も出店数を伸ばしている。若年層を中心に、じわじわとティーカフェ文化が定着しているのかもしれない。
(小林香織、フリーランスライター)
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