【MLB】鈴木誠也がメジャー4年目で覚醒 カブス打撃コーチは「高打率よりOPS重視」の変化を挙げる

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2025年06月14日 07:20  webスポルティーバ

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前編:鈴木誠也、メジャー4年目の開眼

 シカゴ・カブスの鈴木誠也がメジャーでも開花の時を迎えている。好調のチームの中軸として、ハイペースで本塁打、打点を量産。得点圏打率は.333(成績は現地時間6月12日時点、以下同)と高く、仲のいい同僚の"PCA"ことピート・クロウ・アームストロングとともに57打点ではナ・リーグ2位タイと勝負強さを発揮している。同1位のピート・アロンソ(ニューヨーク・メッツ)に6差と、打点王も射程圏内に入っている。

 メジャー4年目を迎えた鈴木に何が起こっているのか。カブス打撃コーチのダスティン・ケリー、スポーツメディア『The Athletic』の番記者であるサハデフ・シャーマ氏に意見を求めた。

 まず前半ではケリー打撃コーチに鈴木の打席でのアプローチの変化、シーズンを通じて目標とすべき数字などについて尋ねた。

【「過去3年の経験が打席の安定感に影響」】

 今季の誠也は得点圏にランナーがいる状況では非常に強く、多くの打点を稼いでくれている。その要因として、大きな特徴はストライクゾーンの中の球をより積極的に打ちにいっていることだ。

 誠也は常に選球眼がよく、ストライクかボールかのボーダーラインの球を見極め、(ボールになる球を)見逃してきた。そんな彼が今年は自身のゾーンを少し広げ、打ちにいくようになった。

 彼のスイング自体は非常にすばらしく、スイングするかどうかの判断も優れているので、「ゾーン内でもう少し仕掛け、1球目から安打を狙ってほしい」というのがもともと私たちの希望だった。それを実践して、功を奏していることはシーズン前半の成績にも表われていると思う。

 より積極的に打つようになった背景として、メジャーでも4年目を迎えて精神的に落ち着いていることが大きいだろう。このリーグに慣れ、打線のなかでの自身の役割は得点を叩き出すことだと理解している。必ずしも典型的な"パワーヒッター"である必要はなく、中軸打者として相手にダメージを与える選手でなければならないと気づいている。

 メジャーで実績あるカイル・タッカーがオフにトレードで加入し、誠也の前後の2、3番を打っていることも助けになっている。タッカーも誠也と同じように辛抱強いが、失投は見逃さない打者でもある。今季の誠也を見ていると、タッカーと似たアプローチをしているように見える。

 先ほど述べたように、過去3年メジャーで経験を積んだことは、打席での安定感という点でも好影響を及ぼしている。どんな強打者でも、数週間にわたって苦しむ時期は必ずある。誠也もまたメジャーで何度かそういう期間に直面し、今ではそういった際の対処法がわかってきたのだろう。

 ヒットが出なくても今の誠也は以前ほどパニックにならない。「何かメカニカルの面で修正できるのではないか、それとも不運が続いているのか」と冷静に自問自答している姿を目にしてきた。打球速度を見ても、誠也は強烈な打球を飛ばすようになっているが、それでもヒットにならないことはある。そういう時、「とにかく今やっていることを続けよう。ボールを強く打ち続ければ、ヒットは出るんだから」と信じられているのだろう。

【「PCAとの間には楽しい競争意識が生まれている」】

 ケリー打撃コーチの指摘どおり、2025年の鈴木はファーストストライクを打った際は打率.438、4本塁打、OPS(出塁率+長打率)1.293と強さを発揮している。また、平均打球速度、打球角度、バレル率(*バットのバレルゾーンで打つ確率)なども軒並みメジャーでの自己最高の数字。四球率(8.7)、出塁率(.325)こそ自己最低であっても、よりアグレッシブにスイングした結果、生産的な打者であり続けているのは明白だ。

*バレルとは選手の全打球のなかで、長打になる確率が高いとされている打球の速度と角度の組み合わせを示す指標。

 当然のことながら、私たちはカブスの選手たちがボールを力強く打つことを望んでいる。なかでも誠也の真骨頂は、フィールドを広角に使い、左中間、右中間に強烈な打球を飛ばせることだ。引っ張ってのホームランも常に打てる。いずれにしても、彼の本領は飛球を打った時にこそ発揮される。

 ご存じのとおり、これは誠也に限らずどの選手でも同じだが、ゴロを打つ回数が多すぎると打者の生産性は限定されてしまう。だから誠也にも飛球を打ってほしい。彼が最高の状態にあるのは、外野手の間に打球を打つ時なのだから。

 日本でプレーしていた頃の誠也が高打率を残していたのは知っているが、彼は私たちが望んでいる長打中心のアプローチに慣れてきていると思う。相手にダメージを与えることを重視するのがアメリカでの考え方。私たちは打率よりもOPSのほうが重要だと考えている。

 カブスには高打率を狙い、その面で優秀な数字が残せる選手もいるが、誠也は長打率、打点、本塁打、二塁打でなどで優れた成績が残せる打者だ。だとすれば、高打率をマークするのはほかの選手たちに任せ、得意とすることを上手に研ぎ澄ませてやっていってほしい。

 OPSが.800台か、今後も.800台後半をキープしてくれるのならばすばらしい(現在は.864)。それをクリアしているとき、誠也は十分に四球を選び、本塁打や二塁打が打てているということだ。

 最後になるが、誠也とPCA(ピート・クロウ・アームストロング)の間に楽しい競争意識が生まれていることは私も知っている。ふたりはまるで兄弟のようにベースボールの話をしていて、フレンドリーなライバル意識があると思う。どちらもベースボールが大好きで、プレーすること、競い合うことを好んでいる。チームメイトとの間でちょっとした競争を楽しんでいることは容易に想像できる。だから誠也とPCAが互いに刺激し合い、相乗効果でチームを引っ張っていってくれることを私も楽しみにしているよ。

つづく

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