「余命は今年いっぱい」土屋アンナの母、ステージ4の膵臓がんと診断されて始めた“終活”をやめた理由

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2025年06月14日 08:00  週刊女性PRIME

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髪が生えてきたことを機に、人生初の金髪にチャレンジした眞弓さん。「アンナが金髪にしたときは怒ったんですけどね(笑)」 撮影/下村一喜

 「まさか自分が」。余命を宣告されたら誰もがそう思うだろう。しかし「ラッキーしかなかった」と話す女性がいる。女優・土屋アンナの母・眞弓さんだ。波瀾万丈の半生を経て膵臓がんに侵されても前を向いて生きられるワケを聞いた。

こんなものに負けてたまるか!

 モデル・俳優・歌手・タレントの土屋アンナの母で、所属事務所の代表を務める土屋眞弓さん。昨年6月、ステージIVの膵臓がんと診断され、余命1年〜1年半と宣告された。

その前から胃が重くて、お腹の中で何かが動くような、妊娠して赤ちゃんが動くとグニュンとなるような感じがあったんです。それで『これは変だぞ』と思って

 毎年胃の検査を担当していた医師に診てもらうと「胃ではなく、膵臓かもしれない」と言われ、改めて別の医療機関で検査を受けた。するととても暗い顔をした医師から「膵臓がん」と告知されたという。

それで私が『ステージは?』と聞くと『ステージIV』、『余命は?』『1年から1年半』というやりとりがありました。それを聞いて私は『了解です。私、そんなので死なないから!』と言って、そこから生きるための闘いが始まったんです。『こんなものに負けてたまるか!』って思って

 お腹の中のグニュンの正体は、胃の出口から十二指腸へ続く道の裏側にある膵臓にできた腫瘍。十二指腸閉塞となり、食べたものの一部が胃の中にたまって水風船のように膨らんでしまったことが原因だった。

 この中身を取り出すため入院し、胃から小腸にステントという管を入れ、広げる手術を受けたという。

 そこから半年間、抗がん剤を投与して年末に腫瘍を切除する手術を行う予定で治療をしていたが、結果は「腫瘍は小さくなったが、手術で切れないので、このまま抗がん剤治療を続ける」というものだった。

「幸い私は抗がん剤で体調が悪くなることがなかったんですが、血管がもともと細い上に硬くなってしまったことで、薬を入れたり、血液検査のための採血をする針が入りづらくなって大変だったんです。それから髪の毛が抜けてしまうと聞いたので、長かった髪をショートにして、抜け始めたときに床屋さんで剃髪してもらいました。

 でも半年間、抗がん剤治療をした上でがんを切ることを目標にやっていたのに、治療方針が変わってしまって、疑問に思ったんです。それでこの治療をいったんやめて、もっと自分に合った治療法を探すため、別の医療機関を受診することにしたんです

 年明けからセカンドオピニオン、サードオピニオンを受け、現在は超音波でがん細胞を焼灼する「強力集束超音波治療法HIFU(ハイフ)」による治療を始めたところだという。

とにかく自分が納得して、選択をすること

「娘のアンナと一緒に病院まで話を聞きに行ったんですが、先生が『ハイフ治療を始める前に抗がん剤を使う』と言うんです。もし私ひとりだったら『ノー』と言っていたんでしょうけど、アンナからの『ママ、やって』という言葉で抗がん剤を再開することにしました。

 詳しく先生に聞いてみると、抗がん剤はこれ以上腫瘍を大きくしないのとハイフの治療の効果を高めるためであり、毛も抜けないというんです。さらに胸のところにステントを入れる手術をして、そこから薬を入れたり採血もできるようになって、針を入れるストレスがなくなったんです。これはもう救いだなと思いました

 眞弓さんは寄り添って考えてくれるアンナと、納得できるように説明してくれた医師に感謝しているという。

「お医者さんは病気のことや治療のプロフェッショナルなわけで。そのプロが確信を持って『大丈夫』と言ってくれると、聞いている側は『大丈夫なんだ』という気持ちになれる。病気になった人って、お医者さんから言われたとおりにやるのが一番いいと思うのが普通ですよね? それ以上悪くなったり、死んだりしたくないわけですから。

 でも『この先生しか頼る人がいない』となると、視野が狭くなってしまう。だからやっぱり精神的に安心できるって、大きいんですよ。そのためには治療方針に納得できるよう、何か所かで話を聞いたほうがいいと思うし、医療機関もセカンド、サードオピニオンをもっとすすめたり、話だけなら無料で聞いてもらえるようになるといいなと思います。

 とにかく自分が納得して、選択をすること。もしダメだったら、また違うことを考えればいい。『そんな時間ないよ』と思う人もいるかもしれないけど、やってみなきゃわからないでしょ? とにかくやるだけやってみる。もしもそれでダメなら、それも“良し”とすればいいんです

 がんになってから、これまで何かと衝突していたアンナが優しくなったと笑う。

先日はシンディ・ローパーとエリック・クラプトンのコンサートに誘ってもらって、一緒に行ってきたんです。親は健康でいるよりも病で弱ってるくらいのほうが子どもは優しくなるのかなと……まあ、これまで私が強すぎたのかもしれませんけどね(笑)

 ハイフ治療と前後して、眞弓さんはこれまでの人生を綴った『人生、あれかこれか』(小学館)を出版した。

 渋谷で育ち、22歳でアメリカ人と結婚、そして妊娠、出産を経て渡米、アメリカで子育ての後、家族で日本へ帰国後に離婚、娘がモデルとなったことがきっかけとなり44歳で事務所を設立、まったくの門外漢であった芸能界での仕事を始め、66歳で病を得て考えたことなど、自身の人生を振り返ったことで「生きること」について考えたという。

もし最初に『膵臓かもしれない』と先生に言ってもらえなかったら、がんに気づかずに、今頃もう死んでいたかもしれない。友人が紹介してくれた病院で知ったハイフ治療も、制度が数年前に変わって受けられるようになったものです。

 私はそうやって、いろんな方から情報を得て、選択することができた。病気のことだからラッキーという言葉を使っちゃいけないのかもしれないけど、これは本当にラッキーしかなかったなと思っているんです」

慌てずパニックにならないこと

 診断から1年たち、当初宣告された余命は今年いっぱいだが、眞弓さんは「死ぬつもりは全然ありません」と言い、仕事も続けている。もしがんなど命に関わる病気になったとき、どうしたら強くいられるものだろう?

とにかく落ち込まないこと、そして慌てず、パニックにならないことでしょうね。病気=死というネガティブな気持ちは払拭したほうがいいし、病気になってしまったことはどんなに考えたところで変わらない。

 だったら現実に向き合って、やっていくしかないですからね。それは病気だけじゃなくて、生きていく上でも大事なこと。例えば結婚して子どもを産んでね、ふとしたときに『こんなはずじゃなかった』なんて思うことって、誰にでもあるものですよ。

 私もそうでした。でもずっと下を向いていたら、そのまま人生終わっちゃいますよ。人はいつか死ぬものです。違うのは、それが早いか遅いかだけ。だから自分らしく生きることを大事にしてください

 しかしそんな眞弓さんでも、一度は死を覚悟して終活を考えたという。

あれもこれも捨てないといけないなとか、事務所や家のことをどうしようと考えたんですけど、いらない服をちょっと処分したくらいで、今はやっていません。そうやって終活を完全にやってしまうと、本当に自分が死に向かっていて、もう命が短いんだなと思ってしまうなと感じて、やめたんです

 どんなときでも前向きな眞弓さんに「落ち込んで下を向いてしまうとき、どうしたらいいでしょう?」と聞いてみると……。

「一回バンザイしてみたら? 丸くなった背中を伸ばして上を向いたら、ちょっと気持ちが変わるかもしれませんよ。下を向いて悲劇のヒロインになって、同情してもらってがんが治るならいいけど……それじゃ治らないんだし(笑)。

 それから、がん保険は入っておいたほうがいいですよ。日本人の死因の1位はがんですし、治療にはお金がかかります。そうそう、『昔、がん保険に加入した』という方はプランの見直しを。治療法はどんどん新しくなっていますから

取材・文/成田 全

このニュースに関するつぶやき

  • ”治療法が選べる時代”に生きている幸運に、感謝ですね。諦めたら、そこで試合終了ですから。^^
    • イイネ!2
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