人気配信者スタンミじゃぱん、病気で諦めた“俳優の道”へ再出発 2000万円かけてミュージカルに挑む理由とは?

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2025年06月14日 09:40  クランクイン!トレンド

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クランクイン!トレンド

スタンミじゃぱん  クランクイン! 写真:上野留加
 高校生の頃にゲーム実況を始め、今やSNS総フォロワー数300万人を超える人気配信者となったスタンミじゃぱん(以下、スタンミ)。モデル業やハイクオリティーなコスプレでも注目を集める華やかなルックスを持ち合わせながら、気取ったところがなく、リスナーやファンに寄り添う温かさと明るさが人気を博している。そんなスタンミだが、高校時代に本態性振戦という病気が発覚した過去を持つ。病気のせいで両手が細かく震えるようになったスタンミは、子どもの頃から夢見ていた“俳優になる”という夢にふたをし続けてきた。長い間、自分の夢から目をそらしてきたが、突如転機が訪れた。本態性振戦の新しい治療法が日本でも受けられるようになり、手術の結果、病気を克服したのだ。こうしてファンと一緒に夢に向かって再チャレンジする「スタンミプロジェクト」が始動。スタンミが主宰を務めるラブストーリーミュージカル『H12』が6月13日(金)から6月16日(月)まで、東京のすみだパークシアター倉で上演される。今回クランクイン!トレンドはスタンミにインタビューを実施。子どもの頃から夢見ていた“俳優”への思いや、ミュージカルにかける思いを聞いた。型破りな夢のかなえ方には、新海誠の影響もあるそうで…。(取材・文=阿部桜子 写真=上野留加)

【写真】スタンミじゃぱん、スラッとしたシルエットが美しい全身ショット

■「いろんなものを諦めた」挫折の過去

――2021年と今年の4月に2度手術をし、片手ずつ手の震えを改善したというスタンミさん。頭蓋骨に穴を開ける大手術だったそうですが、それを乗り越えてでも、再チャレンジしたかった俳優の夢を志すきっかけはなんだったのでしょうか?

スタンミじゃぱん(以下、スタンミ):子どもの頃から夢見ていたのですが、当時は「俳優になりたい」というよりかは「あの映画のあのキャラクターに僕がなったらどうなるんだろう」という感覚に近かったかもしれません。

小さい頃、母が『タイタニック』を見に映画館へ連れて行ってくれて、書道もピアノも落ち着きがなかったのに、『タイタニック』だけは3時間もあるにもかかわらず、イスに座り続けていたみたいです。

――お母さんのチョイスが割と大人向けですね。

スタンミ:母が見たかったんだと思います(笑)。母は『劇場版 ポケットモンスター』シリーズの1作目から10作目くらいまで、毎年映画館に見に連れて行ってくれていました。それから家の近くにレンタルビデオ屋さんがあったのですが、毎週休みの日には1本借りて映画を見ていました。それも『ボーン・アイデンティティー』とか完全に親が見たい作品で、小学生ながら「分からん」と思いながら見てました。僕、小学生で『ボーン』シリーズ制覇していましたもん(笑)。

あと『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズも大好きでした。でも周りの友だちには全然通じなくて、唯一話が通じたのが学校の先生で、「『デッドマンズ・チェスト』(シリーズ2作目)見た?」とか言って盛り上がってました(笑)。

『タイタニック』でジャック・ドーソン役のレオナルド・ディカプリオに憧れて、そこからずっとカッコいいと思う人物像は大きく変わっていません。今は韓流ブームだったりしますが、僕はワン・ダイレクションのハリー・スタイルズやティモシー・シャラメのようなビジュアルが好きです。

――だから『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のウィリー・ウォンカのコスプレをしていたんですね。お部屋に『アベンジャーズ/エンドゲーム』のポスターを飾っていた時もありましたが、相当映画がお好きなようで。

スタンミ:高校生の頃から「TSUTAYA」の100円レンタルでめっちゃ借りてて、そこでスタンミの名前の由来にもなった『スタンド・バイ・ミー』にも出会いました。でもオシャレに映画を“たしなんでいる”とかではなく、根本がオタクなので、映画もアニメもマンガも海外ドラマも韓国ドラマも全コンテンツ見たいタイプで。

――それって「見ていないと気持ち悪い」みたいな感覚ですか?

スタンミ:なんでだろう? 僕、18歳で高校を卒業してから3年間ニートだったんですよね。なので21歳までエンタメが自分の暇を持て余す娯楽だったというか。

――それだけ映画との思い出を重ねてきたのに、病気で俳優を諦めなければいけなかったなんて。

スタンミ:小さい頃からジャニーズJr.として活動していたり、オーディションを受けたりと表舞台に立つような経験もあったのですが、やっぱり手が震えちゃって物理的に俳優を志すのは無理でした。諦めるんじゃなくて“諦めざるを得なかった”みたいな感じです。そんなどうしようもない中で見つけたのが、手元が映らない“配信”でした。

――配信を始めてからも心のどこかに俳優への夢は残っていましたか?

スタンミ:多分捨てていたと思うんです。役者になりたいとはもう思わないようにしていた。でも映画を見たり、「あのキャラクターに僕がなったら…」と考えたりするルーティーンみたいなものからは完全に抜け出せていなくて。僕の心の深いところには「俳優になりたい」という思いがあり続けていたのかもしれません。

――そんな心の隅に残していた夢を再び実現させるきっかけになったのは?

スタンミ:間違いなく手術です。手術ができるなら俳優をもう一度できるのではないかと思いました。ずっと右手が尋常じゃないくらい震えていて、友だちからは「アルコール依存症?」なんていじられて。なので、いろんなものを諦めていました。例えば芝居をしたとしたとしても、敏腕刑事の役で手が震えていたら成り立たないじゃないですか。そういう余計な要素が物語を面白くなくしてしまうと思うんです。

前の僕だったら、水を飲むだけでも手が震えちゃうので、対面で女の子とデートをするのも怖かった。25歳くらいまでデートをほぼしたことがなくて、1対1でごはんを食べることすらできませんでした。なので手術後は真っ先にマッチングアプリを入れました(笑)。いろんな女の子とお話させていただきました。

――(笑)。行動が早い!

スタンミ:それでも今も怖いんです。25年間付き合ってきた病気なので、やっぱり人前に出ると「震えるんじゃないか」って思う時が一瞬あって。緊張で人って多少震えると思うんですけど、「普通の人の震えの度を越しているんじゃないか?」と心配がよぎります。

――そんな心配を抱えながらも、俳優のお仕事を本格的に始めたのはいつ頃から?

スタンミ:ここ1年くらいですね。ワークショップに本格的に通い出してからを僕の俳優歴とすると、今11ヵ月目なので超新米俳優です。

――『H12』の稽古の様子はいかがですか?

スタンミ:稽古が始まって僕的にはうまくいっている感覚があるんですけど、他のキャストはプロですから、みんなのスピードが早すぎて、日々、置いて行かれる感覚が増していきます。僕、譜面すら読めなくて。僕が演じる神谷哲人の恋人・松本多江役の栗原沙也加さんはミュージカル『アニー』でアニー役をやられた方だったりと、経験豊富であまりにもレベルが違うキャストさんぞろいなんです。

――4月には自作のショートムービー『夏は君がいたから色づいて。』をYouTubeで公開されていましたよね? ミュージカルも映画もほぼ同時進行だったんですか?

■目指しているのは「新海誠」

スタンミ:そうなんです。オーディションを受けたり、企画を提案する時に、「映像資料はありますか?」って言われちゃうんですけど、俳優の卵すぎてそんなものなくて(笑)。だったら映像作っちゃおうということで制作しました。

――映画もミュージカルも総合芸術なので、たくさんの方たちが賛同して集まっているのを拝見するとスタンミさんの人望を感じさせます。でも映像とミュージカルって、同じ芝居でも使う神経も筋肉も違いますよね。

スタンミ:まさに。映像って生っぽさがうまいとされているんですけど、舞台の芝居って生っぽさが絶対ではないんです。リアリティーラインをどこに置くかが分からなくて、舞台だと少しオーバーに魅せなきゃいけないんですけど、その感覚をつかむのに苦労しました。ただオーバーに表現するのではなく、元の感情の延長線上で表現しなきゃならないんです。

――ミュージカルを選んだことでさらに難易度が上がりそうです。なぜミュージカルに?

スタンミ:純粋にミュージカルが好きなんですよね。有名な作品はほとんど見ていて、映画で見て気に入ったものがあれば観劇することもありました。

実は今回演出を担当する永野拓也さんが演劇業界からゲーム業界に来た経歴の持ち主で、たまたま僕の配信を見てくださっていたんです。配信中に『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」をふざけて歌った時があったんですけど、そこでミュージカルが好きなことを知ってくださって、仲良くなりました。ワークショップも永野さんに紹介してもらったんです。僕も手術をしてゲームからはみ出そうって思っていたので良いタイミングでした。

そこから一緒に舞台をやらないかというお話を永野さんにいただいたのですが、最初から『H12』とは決まっていなかったんです。2.5次元や時代劇など6作品くらいの候補があったのですが、僕が選んだ『H12』がたまたま永野さんが手掛けた作品でした。

――すごい運命。

スタンミ:『H12』だけ、ついていけないくらい難易度が高いミュージカルだったんです。大体の人が「うまく歌えるようになりたい」って漠然と思っていると思うのですが、そんな感情を持ちながらも死んでいくじゃないですか。僕も歌はうまくない方なのですが、強引に目標を作らないとうまくなる前に終わっちゃうなと思ってミュージカルを選びました。僕は「始めてから目標に達する」んじゃなくて「目的を作ってから始める」派なんです。例えば英語を話せるようになりたいと思ったら、僕は多分、英語だけで1週間旅行する日程を先に立てちゃいます。そっちの方が行動する速度が速くなるんです。なんとなくで密度の低い1年を過ごすよりかは、無理しながらも密度の高い3ヵ月を過ごしたいですね。

――YouTubeのミュージカル挑戦に密着した動画では「負荷をかける」がキーワードになっていましたが、スタンミさんの人生を通しても「負荷をかける」が大事なテーマになっているのかもしれませんね。

スタンミ:そうですね。僕、25歳まで人の5倍くらいだらけてきたので、人より負荷をかけておかないと怖いんです。『H12』はダンスも歌もレベルが高くて、今の僕だと全部ができていない状態かもしれない。ダンスも人前でちゃんと披露するのが今回が初めてで、振り入れの時にビックリしました。10分で覚えられる人もいるんですよ。だから今は人の3倍以上頑張って追いつくしかないです。

――努力を続けている中で、今一番課題に感じていることはなんですか?

スタンミ:まんべんなく全部です。一番とかなくて。ダンスも歌も全部のレベルが他のキャストさんたちのレベルに達してないと思います。これから研ぎ澄ます期間なのですが、今は宿題を渡されている状態。みんなの課題の飲み込み方に圧倒されているので、かみ砕く部分はちょっと頑張りたいです。

――スタンミさんってメンタルケアがうまいなと以前から思っていたのですが、今みたいに自分の足りなさを実感しても気持ちが落ちないですよね。

スタンミ:僕の考え方の話をしてもいいですか? 僕らって生まれた瞬間から「よ〜いドン」で競争していると思うんです。僕は『H12』という箱に入って、この環境の中での速度は遅いけれども、世界レベルで見たらいろんな人をぶち抜いていっていると考えています。何かに挑戦する時は全部この考え方に当てはめていて、その団体でレベルが低かったとしても、全世界の中ではものすごい速度で進んでいる。そう考えると落ち込めないんです。誰よりもできない感覚はあるけど、課題を持ち帰って練習してる時に「うわ、これ今ぶち抜いてんな」って思うんです。自分がいるコミュニティーだけではなく、もっと広い範囲で自分の位置を見つめるのがメンタルを保つ秘けつかもしれません。でもこの考え方が強さなのかも分からない。よく言われるんです、「メンタルが強いですね」って。でも僕からすると逆に逃げているんじゃないかって。努力することで考えすぎることから逃げている気もしています。

――なるほど。お話を聞いていると、スタンミさんの行動力ってレベチだなと改めて感じました。俳優になろうと思ったら、オーディションやレッスンに行くのを思いつきますが、いきなり主宰しちゃうなんて。

スタンミ:僕が今目指している人って新海誠さんなんです。新海さんの商業デビュー作『ほしのこえ』は、監督・脚本・美術・編集など制作作業のほとんどを1人でやっていて、小規模から始まったのにもかかわらず、評判を呼び話題になりました。いい作品を作って良い興行成績を収めれば、出資する人が増えていく。それが続いて、『君の名は。』のような大きな作品が生まれました。これが僕が目指すやり方です。今はそれができる時代で、俳優になりたいからといって、オーディションを受けるだけが正解じゃないと思っています。

――そんな熱い思いとスタンミさんの2000万円を持ち出して生まれた『H12』の見どころは?

スタンミ:喫茶店を舞台に12人の男女が繰り広げるラブストーリーを描いた作品なのですが、恋愛をしたことがある人なら、当てはまる部分があるんじゃないかと思う共感できる物語になっています。ミュージカルなので多少の誇張はありますが、似たようなシチュエーションは誰もが体験していると思います。あと皆さんが想像するミュージカルとは異なる作品にもなっていて、カジュアルだけどレベルが高い作品です。僕が『タイタニック』に出会って人生が変わったように、『H12』で初めてミュージカルに触れる方もいると思うので、そんな方たちのエンターテインメントの入口になるような体験を提供できるとうれしいです。

僕が歌う姿を見たことがある視聴者の方もいると思うのですが、舞台上の僕の歌はあの頃とガチで全然違うと思います。新しいスタンミじゃぱんの姿を確実に見れます。ぜひ生でその目で楽しんでほしいです。

 ミュージカル『H12』は、6月13日(金)〜6月16日(月)まですみだパークシアター倉で上演。
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