写真 こんにちは。これまで3000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。髪もボサボサで化粧もしない“完全なる非モテ”から脱出した経験を活かし、多くの方々の「もったいない」をご指摘してきました。誰も言ってくれない「恋愛に役立つリアルな情報」をお伝えします。
最近、結婚相談所で婚活相談中の美香さん(仮名・34歳)という女性からこんな相談を受けました。
「申し込み(会いたいという意思表示)をくれた男性がいるんですけど、その人のプロフィール写真の下に『Grok』って出てるんです。どう思いますか?」
Grokとは、X(旧Twitter)のアカウントで利用できる対話型AIです。ユーザーの質問にリアルタイムで回答したり、画像を生成したりしてくれます。
プロフィールによると男性の年収は700万円台で、ITエンジニアの方だそうです。写真を見せてもらうとそこには、爽やかそうなブルーのネクタイをしたスーツの男性が写っていました。そしてたしかに写真の下には「Grok」の文字が。
◆なぜ? どう見ても生成AIが作った写真で婚活する男性
トリミングして表示を消しておけばAIが生成した画像だとバレず、会うまでは進めたかもしれないのに、わきの甘いお相手だったようです。もちろん実物とのギャップが大きかったり別人だったりした場合、その時点で次のステップに進むことは難しくなりますが。
そもそも、担当者がいる結婚相談所でなぜそんな写真で登録できてしまったのかという疑問もあります。見落としてしまったのでしょうか。
美香さんは彼の申し込みを断ることにしました。多少、肌色を明るくするとか、シミを消す加工をする程度なら分かりますが、Grokの機能などを考えると加工どころか丸ごと変えてありそうで信頼ができないし、そんな写真を使う人がいることにがっかりしたと話していました。
今回は会う前に分かたのですが、おそらくこうした写真にAI技術を使うケースは、最近増えているのではないでしょうか。
◆AIで顔だけ入れ替えても、意外とバレにくい
以前、知人から聞いた話です。マッチングアプリのノウハウを発信するネットナンパ師の間で、昨年ごろから「AIで顔を入れ替える写真」のテクニックが流行ったことがあったそうです。その内容は、髪型や服装がキマっている写真を見つけてきて、自分の写真と顔を入れ替える、というもの。顔自体は本人なので、会った時に「別人」とは思われにくいとのことでした。
でも雰囲気や体型や髪型が大きく違えば加工しすぎと思われるだけじゃないの? と思った私は、試しに若い女性の写ったフリー素材写真を使って、自分の顔と入れ替えてみました。使用したのはAIEASEという無料のAI画像編集サービスです。
入れ替えた写真のモデルは年齢も髪型も私と全く違ったのですが、顔入れ替え後の写真だと、全くの別人というよりは「奇跡の一枚を載せたのかな」「若い時の写真なのかな」ぐらいの印象になるのかもしれないと思いました。
顔を交換する写真が本人と近い体型、髪型、年齢であれば、入れ替えてもそんなに違和感が出ない可能性もあります。
◆いらないスーツを買うぐらいなら、AI写真でコスパ良く
AI顔入れ替え機能を使ったことがある男性もいたので使った理由を聞いてみたところ、「一番の理由はコスパの良さ」とのことです。
仕事ではスーツやジャケットを着る機会がほぼなく、Tシャツやパーカーが多いというその男性。一応スーツは持っているけれど、かなり古いとのことでした。初デートはキレイめの服で行くようにしていますが、本人のキレイめの定義は「シャツを着ること」。写真撮影のためだけに、ジャケットまで買いたくはないのです。
そんなとき、AI合成写真はとてもコスパが良いのだとか。ジャケット着用をしたフリー素材などの写真と自分の顔を入れ替えるだけで、プロフィールを登録できてしまうのですから。
でも、ユニクロやGUなどでもスーツやジャケットはありますよね。それを買おうとは思わないのか聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。
「飲食店の値段が上がってきて、正直、デート代だって節約したい。ランチ代を奢るのも大変。都内のターミナル駅付近でランチしようとすると、一人当たり2000円台ぐらいすることもあるんですよ。2人分で5000円払って、それでも(交際を)断られたことがあって、へこみました。彼女だったら分かりますが、付き合えるかどうか分からない状態でも、男はデート代を削れないんです。だから、ジャケットとかそんなに買いたくないのが正直なところです」
たしかに以前と比べると、仕事の服装はカジュアル化がかなり進んでいます。それに昨今の値上げで、女性に奢らなければならない男性は飲食代も大変です。
◆写真で生まれる“格差”も、AIが簡単に埋めてくれる
現在はマッチングアプリや結婚相談所など、写真で第一印象が決まる仕様の出会い方が主流です。
男性も女性も自分のことは棚に上げて、写真一枚で「優しそう」「誠実そう」「明るそう」と思い、その次に自己紹介文を読みます。写真で興味を持ってもらえなければ、次に進めないのです。
写真を撮り慣れている人や、友達と遊びに行くことが多く写真撮影の機会も多い人は、マッチングアプリに使えそうな写真をもともとたくさん持っています。“そうではない人”は、写真の時点でもう大きな差をつけられてしまうのです。
ですがそんな格差も、AIならば簡単に埋めてくれます。
◆婚活の専門家としてのアドバイスは
AIで加工した写真を使って会うことができたとしても、会ったときの印象が写真と大きく違えば、次はありません。だからヘアアレンジが下手ならばヘアアレンジを習うなどして本人のレベルを上げて、会った時と違いがないようにした方が絶対に良いでしょう。
──というのが、婚活の専門家としての筆者の意見です。とはいえ、ヘアアレンジなどを習うのだってお金がかかります。様々なモノの値段が上がる中で、そうした出費をためらってしまう気持ちも、分からなくはないのです。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt