【東京都品川区 森澤恭子区長】第1回 給食、学用品、中学制服も!無償化が広がる子育て支援

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2025年06月16日 11:00  ママスタセレクト

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ママスタセレクトの、都道府県、市区町村のトップにインタビューするこのシリーズ。今回は東京都品川区の森澤恭子区長にインタビューを行いました。品川区で最近話題になったのが、2026年度から始まる品川区立中学校の制服無償化です。給食費や学用品の無償化に続くこの取り組みの裏には、何があるのでしょうか。実施に至るまでの経緯や、区民の声、そして見えてきた新たな課題について、森澤恭子区長にお話を伺いました。

「制服の無償化」「給食の無償化」教育にかかる費用の負担を何とかしたい


— 品川区での「制服の無償化」が話題になっています。どのような経緯があったのでしょうか?

森澤恭子区長(以下、森澤区長):制服の無償化は2026年度に中学校へ入学する新1年生から始める予定で、現在、準備を進めています。制服の無償化だけでなく、品川区では、これまでもさまざまな子育て支援の取り組みを進めてきました。

たとえば、2023年4月からは23区で初めて区立学校の給食費を無償化したほか、第2子の保育料、高校生の医療費についても無償化に取り組み、2024年度はさらに取り組みを拡充して、学習ドリルなど必ず授業で使う学用品についても、無償化しました。
2025年は、中学校の修学旅行無償化や、給付型大学奨学金制度の創設、また、10月からはSDGsの観点から有機農産物等を活用した給食を提供する予定です。

さらに、朝の時間帯にも支援を広げています。共働き世帯の増加に伴い、子どもが小学校に進学すると、保育園よりも登校時間が遅くなり、親の出勤時間にも影響して仕事が続けにくくなったり、親が出勤した後にひとりで過ごしたりする「朝の小1の壁」が社会課題となっていますが、品川区では5月から朝の時間帯に児童が安全に過ごせる「朝の児童の居場所」を設け、希望する子どもにはパンなどの朝食を無償提供する取り組みも秋から始める予定です。

— 無償化にあたって、所得制限は設けていないのですね。
IMG_9621 (1)森澤区長:はい。所得制限は設けず、すべての子どもを対象にしています。教育は、将来にかけて人が自分らしく暮らしていくうえで基礎となる不可欠な行政サービスです。それを区民の税金で、言い換えれば社会全体で負担していくことは大切なことであると考えています。私自身も子ども2人を育てていますが、今の時代、教育にかかる費用の負担は本当に大きいと実感しています。だからこそ、少しでも保護者の負担を減らしたい。教育は本来、国の責任において全国一律に無償で行われるべきものですが、国に先んじた先駆的な施策を打ち出していくことで、他自治体、ひいては国の制度を変える一石を投じることになればとの思いをもっています。

— たしかに、入学準備の時期はお金がかかりますよね。うちも子どもがちょうど中学に入学するタイミングで、上の子が高校入学だったんです。中高同時に費用が重なると結構大変で……。制服だけで4〜5万円、さらにカバンや部活用品も含めると、1人あたり10万円ほどかかりました。

森澤区長:きょうだいの進学が重なると、より大変ですよね。実際、さまざまな民間調査でも「制服代が大きな負担になっている」という結果が示されています。

また、昨年「しながわ子ども食堂フォーラム」に参加したときに、ある中学生が発表した作文を聞いて、胸が熱くなりました。「制服を自分で用意するのが難しくて、本当に困っていた」と。そのときは子ども食堂の方がサポートしてくれたそうですが、生まれた環境やご家庭の経済的事情にかかわらず、選択を阻まれることなくすべての子どもが安心して学べる環境を整えることが大切だと強く感じました。
この制度が、子どもたちの笑顔や親御さんたちの安心につながるよう、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

「制服無償化」発表後は議論が巻き起こる


— 制服無償化が発表されたあと、保護者からの反応はいかがでしたか?

森澤区長:以前より、「制服の負担が大きい」といった区民の声をいただくことが多くあり、制服無償化の発表に対しては「よかった」「助かる」といった声をたくさんいただいています。

— 一方で、SNSでは「制服は必要なのか?」という議論もありましたね。

森澤区長:ニュースサイトにも取り上げられ、SNS上では「制服があると楽」「もっと自由を認めるべきだ」など、さまざまな意見が出ていました。それが実際の子育て世代のリアルな声をどこまで反映しているかどうかは、正直なところ把握が難しい面もあります。ただ、今回、品川区が学校制服の無償化に取り組むことについて多く取り上げられたことで、学校制服の必要性の議論を惹起したことに、この取組の意義があると考えています。区でも、制服の必要性についてはしっかりと議論していかなければなりませんが、一方で、議論には一定の時間が必要で、直ちに制服がなくなるものではありません。それまでの間、保護者の負担軽減が図られるように、まずは無償化に取り組むことにしました。

— 森澤区長ご自身もお子さんがいらっしゃいますが、制服についてどう思われますか?

森澤区長:うちは小学生と中学生の子どもがいます。中学生の子どもは制服ですが、やっぱり制服があると「毎日何を着ていくか」に悩まなくて済むので、楽かなと思います。もちろん、家庭によって考え方は違います。でも、「できるだけ子育ての負担を減らしたい」という思いは、ずっと変わりません。この制度が、子育てをする家庭の不安を解消し、少しでも安心につながってくれたら嬉しいです。

※取材は2025年5月に行いました。

取材、文・長瀬由利子 撮影、編集・編集部

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