モバイルバッテリー安全ガイド ―知っておきたい「火災リスク」と「次世代技術」

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2025年06月16日 17:00  BCN+R

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モバイルバッテリーの火災リスクを知っておきましょう
 スマートフォン(スマホ)やタブレット端末の大容量化に伴い、外出先での充電に欠かせない存在となったモバイルバッテリー。便利な一方で、航空機内で年間90件近い「発火事故」という数字が示すように、安全面でのリスクも潜んでいます。本稿では、リチウムイオン電池の発火メカニズムや正しい取り扱いと廃棄ルール、さらには飛躍的に安全性を高めた次世代電池技術まで、知っておきたいポイントを織り交ぜながら解説します。

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●知っておきたい火災リスクの仕組み

 私たちが日常的に使用しているモバイルバッテリーの多くは、リチウムイオン電池を採用しています。スマホやノートPCにも使われているこの技術は、小型で大容量という利点がある一方で、取り扱いを誤ると発火する可能性があるのです。

 電池内部をのぞくと、プラス極とマイナス極、そして両者をつなぐ可燃性の液体電解質が並んでいます。この構造が小型・大容量を実現する一方、内部で異常発熱が起きると「熱暴走」を引き起こし、発火に至る危険性があります。

 特に注意したいのは(1)落下や衝撃で内部の電極が変形して起きる短絡、(2)直射日光の当たる環境や高温下で進む劣化、(3)非純正充電器による過充電や満充電放置による過度なストレスという3点。いずれも熱暴走へのトリガーになります。

 実際、2025年4月には大手メーカーのモバイルバッテリーでリコールが発生し、発火による火傷の危険性が指摘されました。また航空機での発火事故も増加傾向にあり、24年には旅客機・貨物機あわせて89件のバッテリー事故が報告され、うち多くが座席付近での発煙や過熱を起点としたものだったといいます。

●安全に使うための取り扱いポイント

 モバイルバッテリーを安全に使い続けるためには、適切な使用方法と廃棄方法を知っておくことが重要です。

 まず大前提として、購入時には「PSEマーク」付きの製品を選ぶこと。非認証品は内部保護回路が省かれている場合が多く、事故リスクが跳ね上がります(19年2月1日から、モバイルバッテリーはPSEマークの規制対象となっています)。

 充電する際は、付属またはメーカー推奨の充電器を用い、就寝時の充電は避けてください。本体が異常に熱くなったり、膨張や異臭が感じられたりしたら、すぐに充電を中止し、電池残量を使い切ってから処分しましょう。

 航空機へ持ち込む際は、容量100Wh以下(約2万7000mAh:3.7V換算)であれば客室への持ち込みが認められていますが、預け入れは禁止です。近年はアジア路線を中心にさらに規制が強化され、使用中の充電行為まで制限されるケースがあります。搭乗前には利用航空会社の最新ルールを必ずチェックしてください。

 使用済み電池は一般ゴミとして捨てられません。リサイクル法の対象品となっているため、電器店や家電量販店、自治体の回収ボックスで廃棄しましょう。不安がある場合は端子部分をテープで絶縁した上で持ち込むと安心です。

●注目される次世代安全技術

 モバイルバッテリーの安全性を飛躍的に高める次世代技術として、「準固体電池」が注目を集めています。

 従来のリチウムイオン電池では液体の電解質を使用していましたが、準固体電池では、その一部をゲル状の物質に置き換えることで、発火リスクを大幅に低減しています。

 さらに安全性を高めた「全固体電池」については自動車業界が先行して実用化を進めており、中には27年に全固体電池搭載のEVの発売を予定しているメーカーもあります。モバイルバッテリーへの応用も時間の問題でしょう。

 モバイルバッテリーの利便性を享受するには、製品選びと正しい取り扱いが肝心です。「PSEマークの有無」「航空機の最新規定」「リサイクル手順」を押さえて、安全に活用してください。次世代技術の普及まではまだ時間がありますが、その日を待つ間も、基礎知識をアップデートし続けましょう。(マイカ・秋葉けんた)



秋葉けんた

編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。

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