カルガリー国際空港に到着した石破茂首相(中央)=15日、カナダ・カルガリー 【バンフ時事】石破茂首相は就任後初めての先進7カ国首脳会議(G7サミット)出席のため、カナダ西部カナナスキスに入った。16日にG7首脳との討議をスタートさせ、日米首脳会談に臨む。参院選の公示日と想定される7月3日まで3週間を切る中、首相は一連の日程を通じて外交成果を勝ち取り、政権浮揚につなげたい考えだ。
「G7がとにかく連携することが何よりも大切だ」。首相は15日の日本出発前、首相公邸で記者団にこう力説。米関税措置の扱いを話し合う日米首脳会談に向け「双方の利益になる合意が実現するよう最大限努力する」と語った。
東京都議選に突入し、参院選を目前に控える中、石破内閣の支持率は低迷を脱していない。小泉進次郎農林水産相の起用で米価高騰対策に期待が高まりつつあるが、参院選の目玉公約として打ち出した2万円給付には批判も上がる。外交は首相が政権浮揚を狙える数少ないカードの一枚だ。
G7サミットで問われるのは、G7が結束を維持し、中東の危機克服などに向けて力強いメッセージを発信できるかだ。トランプ米大統領の再登板で欧米に亀裂が入る中、首相には「橋渡し役」としての役回りが求められる。政府関係者は「とにかく米国をつなぎ留めることだ」と語った。
G7サミットと並んで注目を集めるのが日米首脳会談だ。トランプ氏が相互関税や自動車への追加関税を矢継ぎ早に発動したことを受け、日本政府は4月、一連の関税措置の撤回を求めて対米交渉を本格化。G7サミットに合わせた日米首脳会談での合意も視野に6回の閣僚交渉を重ねた。
相互関税の上乗せ分(日本は14%)停止の期限は7月9日に迫る。延期の可能性が取り沙汰されるとはいえ、今回の会談で合意できなければ、経済界などから失望の声が出るのは避けられない。仮に合意できても、国民に大幅譲歩と映れば、政権批判が強まりかねないリスクをはらむ。
通常国会の会期末は22日。立憲民主党の野田佳彦代表は日米関税交渉などの行方を見極めるため、内閣不信任決議案提出の可能性を排除していない。首相は帰国後、与野党党首を19日にも集めて日米首脳会談の結果を報告する方向で調整しており、「石破外交」は正念場を迎える。

カルガリー国際空港に到着した石破茂首相(中央)=15日、カナダ・カルガリー