
6月12日(木)の放送では、株式会社SPACE PRODUCEの代表取締役・小林佐理(こばやし・さり)さんをゲストにお迎えして、「オフィスのお悩み解決ラボ」のコーナーを実施。「先進性」と「レガシー(伝統)」とが共存したオフィスデザイン事例を紹介しました。
(左から)DJ Nobby、株式会社SPACE PRODUCEの小林佐理さん
◆先進性とレガシーの共存は可能か?
今回のテーマは、オフィスデザインにおける「先進性」と「レガシー」の共存についてです。新しくオフィスを設計・改装する際、多くの企業が目指すのは、社員や訪問客にとって居心地のよい洗練された空間をつくることです。未来を感じさせる先進的な空間は、企業イメージの向上にもつながります。
小林さんによれば、近年のオフィスデザインでは、先進性や未来感が求められる傾向が強まっているそうです。たとえば、駅構内に広がる一面のデジタルサイネージのように、オフィスにも常に新しいものを取り入れ、「ここで働きたい」「すごいオフィスだ」と感じてもらえる空間づくりが重要視されています。「未来に向けて弊社はどんどん伸びる!と伝えたいために、そういったものを取り入れる企業は多いです」と話します。
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それでも、小林さんは「伝統という言葉でレガシーを考えると、会社の創業理念など守らなければいけないものがあると思います。大手の企業様は創業理念を大切にされていますし、社訓を作ったりビジョンをお話しされたりしますよね。今回は、それらが現代的なデザインと合致できるのかについてお話ししたいと思います」と説明しました。
◆先進性とレガシーが融合したオブジェを制作
小林さんが手がけた事例のひとつに、医療用の手術針で国内トップクラスのシェアを持つ企業のオフィスデザインがあります。その会社では、創業者の理念や会社の歴史を大切にする一方で、若い世代には「社訓なんて時代遅れ」と捉えられる懸念もありました。
「歴史があり、昔があったから今があるということを表現したいというご依頼でした。壁に創業理念を飾ったり動画にして見せたりするのではなく、先進性プラスレガシーで見せるデザインを考えたんです」と、小林さんは振り返ります。
レガシーを表現するために、オフィスデザインで使用したのは、古い住宅に使われていた“古木”でした。古木の側面をくり抜き、なかにLEDライトを仕込むことで「古木が光る」オブジェを制作し、エントランスに数本設置したといいます。
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このように、象徴的なシンボルを通じて企業のレガシーを表現することで、先進性と伝統が違和感なく共存する空間が生まれます。「古木に灯る未来感のある光」という一見ミスマッチな融合が、かえって強い印象を残す結果となりました。
◆会社のこれまでの歩みを柱に
続いて小林さんが紹介したのは、老舗印刷会社の内装工事に関わったエピソードです。紙媒体の需要が減少し、印刷業界が大きな変革期にあるなかで、電子漫画やアプリなど新しい事業へ積極的に挑戦する企業だったといいます。しかし、その一方で、「これまで積み重ねてきた歴史をしっかり伝えたい」という強い思いも持っていたそうです。
その会社では、10年誌や20年誌など、節目ごとに自らの歩みを記録した書籍を制作しており、それらは社内の本棚に保管されていました。小林さんは、書籍を象徴的な形で空間に組み込むアイデアを提案します。完成したのは、約5メートルの高さまで伸びるガラスの柱。その内部には、歴代の年史がランダムな向きで配置され、書籍としての質感を残しながらもアートのように見える演出が施されていました。
印象的な柱の先に続くのは、カラーガラスを用いたシンプルなエントランスです。「ガラスに色が入っているんですけども、そこに企業名の一文字だけを象徴したロゴが入っています。ガラスの柱と合わせて、レガシーと先進性を表現しました」と小林さん。一連の説明を受けて、DJ Nobbyは「分散、点在させることで、歴史と先進性両方の要素がこの企業にはあるんだと気付いてもらえるわけですね」とコメントしました。
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<番組概要>
番組名:週刊Nobbyタイムズ
放送日時:毎週木曜日 19:00-20:55
出演者:DJ Nobby(パーソナリティ)、宮田リコ(アシスタント)、高橋里実(アシスタント)
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