6月ボーナス「もらって転職」「もらう前転職」議論が不毛なワケ…見落としてはいけない“大切なこと”

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2025年06月19日 21:40  All About

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6月のボーナス支給が近づいてきた。毎年この時期になると、転職活動の決断に気をもむ人が増えてくる。ボーナスを「もらって転職」するか「もらう前に転職」に踏み切るか。この問題をどのように判断していくべきか解説する。※画像:PIXTA
ボーナスを「もらって転職」するか、それとも「もらう前に転職」するか。この時期に転職活動をする人が決断しなければならないことの1つである。世間では「もらって転職してもいい」「もらう前に転職すべきだ」といった感情的な議論がメディアをにぎわすが、まずはこの不毛な議論に終止符を打つことから始めよう。

まるで“ボーナスの持ち逃げ”?

一般的にボーナス(賞与)は年2回、夏(6月)と冬(12月)に支給する会社が多いが、支給の回数、金額、時期などは会社によって異なる。もちろんボーナスを支給しない会社もある。同じ会社でも正社員にはボーナスを支給するが、有期雇用の社員には支給しないというケースもある。

多くの場合は、基本給に応じて「〇カ月分を支給」という形をとっているが、会社の業績に応じて増減したり自らの会社への貢献度(営業成績など)に応じて決まったりする場合もある。決算の前後に、特別にボーナスを支給する会社もある。

このように、ボーナスというと臨時に支払われている印象があるがゆえに「ボーナスをもらって転職」するか、「もらう前に転職」をするかという感情的な議論になりやすい。ボーナスをもらった直後に辞める人は、まるで“ボーナスの持ち逃げ”をしたかのような議論になりがちだ。

ボーナスは給与の一部

ただ、この発想は会社に有利なように印象操作されているのではないか。例えば1〜6月に在籍した社員には夏のボーナスを全額支給する、4月に入社した社員には4〜6月在籍したので夏のボーナスは半額支給するというような計算式でボーナスの金額を計算している会社は多い。

つまり在籍していただけで基本給に応じたボーナスを支払うという意味であり、ボーナスは最初から支給が予定されていた報酬であって、当該社員の“給与の一部”だとみなすのが自然である。

世界に目を転じてみれば、会社が儲かれば業績ボーナスや決算ボーナスを臨時で払うことが多い。会社の業績がいいときは、まるで株主の配当金が増えるように、社員に対しては臨時報酬を支払う。実に分かりやすい制度である。

一方、世界の多くの企業の給与体系は、社員の収入は年間収入(年俸制度に基づく)で決まっていることが多く、それを12等分して月給として支払うのが一般的である。日本では年俸制度を導入していない会社が多いがゆえに、月給とボーナスは異なるものだと考えられがちであり、ボーナスは臨時収入であるという認識を持つ人がいるのだろう。

正当な報酬は堂々ともらい、辞めたいときに辞める

会社から臨時ボーナスをもらったら、そこからモチベーションを上げて会社にさらに貢献すべきであるという考えに立てば、ボーナスをもらってすぐに退職する人は、まるで自分勝手なずるい行動をしているように見えるのかもしれない。

ただ、これが大多数の考え方とは言えない。ゆえに無言の圧力を感じたり、この時期の転職を遠慮したりする必要はない。

今の時代、退職を表明した社員が「ボーナスをもらって転職」することに不満を表明する会社や上司がいたら、むしろその会社はブラック企業であるとの批判を受ける可能性が高いのではないだろうか。

いつの時代も社員というものは誠意を持って熱心に職務に励むことが求められているが、正当な報酬は堂々ともらい、自分の意思で辞めたいときは辞めることは当然のことである。 

これだけ「ボーナスをもらって転職」することの正当性を強調しても、もしかしたらまだ躊躇(ちゅうしょ)する人がいるかもしれないので、次に「ボーナスをもらう前に転職」することが合理的なケースについて考えてみよう。

「ボーナスをもらう前の転職」が総合的に得な場合もある

これまで「ボーナスをもらって転職」することを躊躇するべきではないと繰り返し述べてきたが、一方、「ボーナスをもらう前に転職」したほうが総合的に得だと判断できるケースもある。そうならば、あなたは「ボーナスをもらう前に転職」することを検討してみる気にはならないだろうか。

転職はタイミングが大事である。転職が成功するかしないかはタイミングも大きく影響する。なぜ転職の成功はタイミング次第なのかと言えば、それはポストが空くタイミングで会社は代わりの人材が必要だからだ。つまり会社からすれば、このタイミングで入社してほしいという絶妙なタイミングがある。

例えば前任者が辞めるタイミング、もしくは異動になるタイミングである。仮に前任者から後任者に直接引き継ぎをさせたい場合、前任者の退職日よりも一定日数前に後任者が入社していなければならない。特に社員に退職者が出た場合、それは予期せぬタイミングで突然訪れるビッグニュースである。ゆえに中途採用の現場では採用を急いでいることが多い。

このようなタイミングで、もし仮に入社予定の人が見つかったにもかかわらず、もし本人が辞める予定の会社からのボーナス支給があるタイミングまで退社を控えたとしたらどうだろうか。

その当該社員を新しく採用する会社にとって、退職(または異動)予定者と後任者の間でスムーズな引き継ぎができないことになり、それは現場業務の停滞に直結し、場合によっては大きな損害を招くこともある。

特に空席となるポストが重要ポストだとしたら、タイミング悪くポストの空席が長引くと、損害をもたらすだけではなく顧客などへの信頼問題に発展してしまうかもしれない。どちらにしても、ビジネスにとってタイミングは何よりも大事であり、物事には常に理想的なタイミングがあるものだ。

このような場合、転職予定者に対してボーナス相当分を会社が負担して支払い、早期の入社を促すことがある。それをしてでも、早期に入社してもらうことが会社にとって合理的な判断であるし、さまざまなリスクを軽減させることになるからだ。

自分が転職する際、どのようなシチュエーションで転職するのか、それをしっかりと理解しておくことがいかに大切か、この事例から分かるに違いない。

すべての人に対して、新しい雇用主が本人の失うボーナスを補填(ほてん)するわけではないかもしれないが、本来、中途採用とは即戦力採用であり、このくらいのインパクトをもたらす人材として認知されたうえで新しい会社に転職することを目指したいものだ。

「やりがいのあるキャリア」を得ることはお金に代えがたい

ボーナスをもらうかもらわないか、それは究極的にはお金の問題である。いらなければそれまでである。

ただ、転職する大きな理由にキャリアアップややりたい仕事への挑戦、つまりやりがいのあるキャリアの獲得がある場合、「ボーナスをもらって転職」できればそれに越したことはないが、もしそれが難しい場合はキャリアの獲得を優先するという判断もあるだろう。

長い目で見れば失ったボーナスの金額を十分取り戻すことができるような、そんな転職を実現させたいものだ。転職はタイミングがすべて。もちろんビジネスでも同じ原則が働くはずだ。このことを肝に銘じておけば、大事な判断を誤ることはないだろう。
(文:小松 俊明(転職のノウハウ・外資転職ガイド))

このニュースに関するつぶやき

  • 今月の給与支給証明眺めながら、「次はボーナス支給証明」と同僚。もともとの賃金なら年度末の差額支給だけでもいいかなと思うも、チビッツのお年玉支出考えると年末の賃金外支給有難し。
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